繊維商社(アパレル商社)は、アパレルサプライチェーンの各段階において売り手と買い手の仲介役、需要と供給の調整役を担い、物流ネットワークを構築してそれを円滑に回す流通業を主な事業とする業種です。

今回はそんな繊維商社(アパレル商社)について理解を深めていただけるよう、解説していきます。

繊維商社(アパレル商社)とは?

アパレル商社とは

繊維商社(アパレル商社)は、国内外からの衣料品の原材料やテキスタイル、アパレル商品の仕入れや販売など、貿易・流通を主たる事業としながら、海外ブランドの使用権を取得して商品をつくるライセンスビジネスなど幅広い事業を展開する業種です。国内の繊維商社(アパレル商社)は、戦前の貿易会社がルーツと言われています。

企業の事業規模にもよりますが、仕入れから商品の企画・生産、販売までを手掛け、繊維メーカーからアパレル小売までを取引先とするアパレルサプライチェーンの全般に関わります。そのため、繊維商社(アパレル商社)は一般に経営規模が大きい傾向にあります。

繊維商社(アパレル商社)の多くは、特定の専門分野に特化した専門商社に分類されます。一方で鉄鋼や機械など多様な分野に事業を展開している商社を総合商社と呼び、その大半が繊維部門を持っています。

繊維商社(アパレル商社)を細かく見ていくと、原材料のみを扱う専門商社やテキスタイルのみを扱う専門商社なども存在します。加えて、メーカーから独立してそのメーカーの商品を取り扱うメーカー系専門商社、総合商社の関連子会社として専門分野特化型企業として独立した総合商社系専門商社、それら以外の独立系専門商社などの分類が存在します。

繊維商社(アパレル商社)は企業間取引で発生する仲介手数料(コミッションマージン)を主な収入源としてきましたが、近年は繊維メーカーやアパレルメーカー、アパレル小売などが独自で物流ルートを開拓しているため、商社を介さない取引が業界全体として増えています。

そのため、培ってきた金融・情報力を駆使して、既存企業の買収、資本投入による企業育成、合弁会社の設立など事業投資も盛んに行っており、投資先企業の業績から投資比率に応じた利益を獲得することで大きな収入源を確保しています。場合によっては投資効果の向上のため、社員を派遣する(出向)することもあります。

繊維商社(アパレル商社)の代表的な企業

伊藤忠商事

世界約63ヶ国に120ほどの拠点を持つ大手総合商社です。
ブランド展開数は約150、数多の子会社を持っており、原料はもちろん、テキスタイルから製品のOEM、そしてブランドまで全てカバーしている点が特徴です。

丸紅

世界約68ヶ国、130ヶ所ほどの地域で事業を展開している大手総合商社です。
繊維の取り扱いから始まった企業で、現在でも原料から製品OEMに至るまで幅広い事業を展開しています。
大手SPA企業にも製品を供給しており、ラコステ ジャパンなどへ出資しています。

三菱商事

世界約90カ国に200を超える拠点をもち、関連会社も1200社ほど持つ最大手の財閥系の総合商社です。
ファッション・アパレル業界においては、グローバルに出店を拡大するSPA向けのOEMを数多く手掛けています。

繊維商社(アパレル商社)の業務内容とは

仕事内容

繊維商社(アパレル商社)は、その商社が扱うブランドが好きな方や、アパレル専門分野に興味がある方に向いている業種です。

アパレルメーカーと混同されることがありますが、アパレルメーカーは、商品の企画・製造をしてアパレル小売にその商品を卸す業種です。

一方、繊維商社(アパレル商社)はマーケティングや流通企画、イベント展開を行い、販売までのプロセスを築きます。他にも海外に出向いて生地や商品の買い付けをしたり、製造に携わったりする機会もあります。

繊維商社(アパレル商社)はもともとそのアパレルメーカーに対して、アパレル小売や商品の委託生産先、テキスタイルメーカーをつなげる仲介の役割を担っていました。繊維商社(アパレル商社)はイベントの手配やブランディングに長け、商品企画や製造を得意とするアパレルメーカーとバランスを取りながら業務をするケースが珍しくありません。この仲介役を担当するかどうかが最大の違いになります。

しかし繊維商社(アパレル商社)の事業規模の拡大に伴い、繊維商社(アパレル商社)がアパレルメーカーの機能を備えることも多々あるため、混同を招いています。

アパレルメーカーも商社機能やアパレル小売機能を有するようになっているので、業種の境界は薄れつつあります。

買い付け

衣料品の原材料やテキスタイル、アパレル商品の仕入れを行います。
日本国内に留まらず、海外で買い付けを行うことも多くあり、現地での仕入れに関する価格交渉まで業務に含まれます。

【主な職種】
バイヤー
営業
マーチャンダイザー(MD)
生産管理(プロダクトマネージャー)

受け渡し

取引先に対する代金回収や配送手配などを中心とする事務業務も繊維商社(アパレル商社)の業務の一つです。新入社員などは入社後この業務にあたることが多いのですが、これを経験することで、一連のモノの流れを把握できるようになります。

【主な職種】
営業
・事務

OEM

OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略語で、製造の発注を依頼された企業の名義やブランド名で販売される商品を製造することです。
発注側の企業によるデザインや仕様に基づいて商品を製造します。
このOEMを専業とする事業者も存在します。

【主な職種】
デザイナー
生産管理(プロダクトマネージャー)
・ディストリビューター
・商品企画
営業
マーチャンダイザー(MD)
マーケッター
EC運営担当者

ODM

ODMとは、「Original Design Manufacturing(Manufacturer)」の略語で、OEM同様に発注をうけて商品を製造する代行業のことで、商品の製造だけを代行するOEMとは異なり、ODMではデザインなどの企画や設計から行って商品を製造します。
他業界ではOEMがODMに発展したように、ODM企業が自社ブランドの商品の企画や設計から販売までを行うOBM(「Original Brand Manufacturing(Manufacturer)」)という業種に発展するケースもあります。
OEM同様、ODMを専業とする事業者も存在します。

【主な職種】
デザイナー
生産管理(プロダクトマネージャー)
・ディストリビューター
・商品企画
営業
マーチャンダイザー(MD)
マーケッター
EC運営担当者

企画・製造

商社は商品の取引以外にも自社で製品の企画をして製造することも多くあります。
社会の消費行動をふまえてどんな商品を作るのかを考え、その後の販売戦略、販促企画を検討・実行します。
デザイナーが描いたデザイン画をもとに、パタンナーが型紙を作成、ソーイングスタッフ(縫製作業者)が裁断・縫製を行い商品にしていきます。

【主な職種】
マーチャンダイザー(MD)
マーケッター
生産管理(プロダクトマネージャー)
デザイナー
パタンナー
ソーイングスタッフ(縫製作業者)

商品PR、販売

展示会の開催や、自社商品に関する広告をマスコミや紙媒体などに出稿して消費を促したり、それに伴う商品の貸し出しなどを行います。

【主な職種】
営業
広報(プレス・PR)
VMD
店長
販売員(ショップスタッフ)

繊維商社(アパレル商社)のやりがい

やりがい

職種やその人それぞれの感じ方によって変化はあると思いますが、参考として繊維商社(アパレル商社)で働く際のやりがいを説明します。

携わった商品が消費者に

職種ごとに細分化されているため、職種によって携われる部分は様々ですが、担当した商品が実際に店舗で売られているところや、雑誌やテレビなどで見かけることもあるはずです。
自分の仕事が誰かを喜ばせているということを、実感できる楽しみがあります。

作り手としてアパレル・ファッションに関われる

仕事をする中でも「好きなブランドに関わりたい」、「服作りに関わりたい」と思われる方には、その気持ちを叶えられる環境としては最高なのではないでしょうか。
周りにも服が好きな人がいる場合が多いので、本当に好きな人なら楽しみながら仕事できる環境といえるでしょう。

繊維商社(アパレル商社)で働く上での適性

適性

繊維商社(アパレル商社)には様々な職種があり、その職種によって細かな適性は変わりますが、繊維商社(アパレル商社)だからこそ求められる適性について説明していきます。

コミュニケーション能力(語学力)

社内での部署をまたいだ連携はもちろんですが、企業との交渉がメインとなるため、幅広い知識や対応力を求められることが、繊維商社(アパレル商社)の特徴です。
情報を正確に伝えて信頼を得る、顧客ニーズを敏感に感じ取って対処するなど、臨機応変な対応を求められます。
また、繊維商社(アパレル商社)は国外との取引も多く発生するため、一定レベルの語学力も必要となります。

ファッションが好きな気持ち

グローバルに活動するための国際感覚や国外連携のための語学力、トレンドを察知するための分析力など、商社で働く上で求められる適性は多々あります。
その源泉となるのが、ファッションが好きな気持ちです。これは、他の商社にはない繊維商社(アパレル商社)ならではの適性と言えるでしょう。

体力と精神力

前述の適性を支えるため、体力と精神力は必須です。
仕入先や取引先への移動も多く、その交渉時に発生するストレスなどは、商社ならではのハードルではないでしょうか。
日常からの健康管理や、無理をしすぎない自己マネジメント力も大事な適性の一つです。

繊維商社(アパレル商社)の採用に必要/有利な資格

資格

繊維商社(アパレル商社)へ就職するために、絶対に必要とされる資格やスキルはありません。企業や職種毎の応募資格を満たしていれば、応募は可能です。

ただ、その後の選考時に有利になる資格についていくつかご紹介します。

ファッションビジネス能力検定

ファッションビジネス能力検定とはマーケティングや流通、マネジメント、基礎知識まで幅広く学べる資格です。
営業や企画職などを目指している方は取得をお勧めします。

【応募サイト】
ファッションビジネス能力検定

繊維製品品質管理士(TES)試験

営業と品質管理の部門においては、持っていれば一目置かれる資格です。
取得後は、繊維の「品質」に関して消費者が要求するレベルと信頼を満たすよう、小売、アパレル、テキスタイルの間をスムーズに橋渡しをすることが求められます。
消費者のニーズが業界に浸透するだけでなく、取引先にも安心感を与え、交渉事がスムーズに運ぶ利点もあるようです。

【応募サイト】
繊維製品品質管理士(TES)試験

CAD利用技術者試験

パタンナー志望の方へおすすめの資格です。
デザイナーが作成したデザイン画をもとに型紙を起こす際、CADのスキルがあると断然有利になります。
実務経験が不足していたり、未経験の場合でも、資格があることでアピールポイントとなるでしょう。

【応募サイト】
CAD利用技術者試験

繊維商社(アパレル商社)の採用条件

採用条件

企業特性や職種によって差がありますが、国外との取引をする際に一定レベルの語学力が求められるため、大学卒以上の経歴が求められることが多く、中でも海外留学経験などに注目する企業も少なくありません。

また、デザイナーなどの専門職には、専門的な技術と知識が求められるため、服飾系の専門学校卒や実務経験◯年以上というような条件がつくことが多いです。

繊維商社(アパレル商社)の求人

繊維商社(アパレル商社)とはどんな立ち位置なのか、ファッション・アパレル業界においての繊維商社(アパレル商社)の役割とはなんなのか、どんな職種が活躍しているのかなどを解説してきました。

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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「新ファッションビジネス基礎用語辞典(増補改訂第7版)」(バンタンコミュニケーションズ 編、チャネラー、2001)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)


text: READY TO FASHION MAG 編集部


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