アパレル賞与

新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、未曾有の事態となった2020年。ファッション・アパレル業界の賞与・ボーナス事情はどのように変化したのでしょうか?

先日、パーソルキャリアが運営するファッション・アパレル業界特化の人材紹介サービス「クリーデンス」が、20年の職種別・年齢別平均賞与・ボーナスに関する調査結果を発表しました。

その調査結果から、ファッション・アパレル業界の平均賞与・ボーナスの推移と傾向を見ていきましょう。

※職種区分はクリーデンスの区分に準拠しています。

昨年比で全体平均+2.2万円 40代は向上、他年代では減額

アパレル賞与
年代別平均年間賞与額 クリーデンス事業部が作成

2020年1月~12月の期間、クリーデンス登録者を対象に実施した調査によると、全体の平均年間賞与・ボーナス額60.7万円という結果がでており、これは2019年の調査結果である平均年間賞与・ボーナス額58.5万円から比較して2.2万円の上昇となっています。

ただし、各年代ごとに見てみると、20代の平均年間賞与・ボーナス額は46.7万円で前年比0.8万円減、30代の平均年間賞与・ボーナス額は63.9万円で前年比1.6万円減、50代以上の平均年間賞与・ボーナス額は106.4万円で前年比1.8万円減と、ほとんどの年代で平均年間賞与・ボーナス額は減少しています。

一方、40代は平均年間賞与・ボーナス額79.4万円で前年比7.2万円増と、唯一の増加となっており、40代の平均年間賞与・ボーナス額が全体平均を引き上げたかたちになっています。

背景に転職市場の変化による即戦力人材のニーズの高まり

その背景として、コロナ禍に端を発する専門スキル・知見を持つ即戦力人材のニーズの高まりがあると考えられます。

これまでのファッション・アパレル業界の採用傾向として、社内教育を前提とした若手多人数採用が多く見られていました。しかし、各社の業績悪化やそれに伴う教育リソースの縮小が災いし、それまでの採用志向が変化していると見られます。

クリーデンスの調査によると、新型コロナウィルスの影響による業績悪化の立て直しを目的に、ファッション・アパレル業界での勤続経験の長い人材などを対象とした求人を公開している企業が増加しているそうです。

アパレル賞与
年代別平均年収 クリーデンス事業部が作成

ただし、平均年間賞与・ボーナス額が20代、30代、50代以上で減少しているのに対して、年代別の平均年収に関しては全年代で向上しています。

20代は平均年収298万円で前年比2万円増、30代は平均年収377万円で前年比7万円増となり、特に40代は平均年収470万円で前年比21万円増、50代以上は前年比42万円増と大幅に増加しております。

平均賞与・ボーナス額だけをみると業界の落ち込みを感じられるかもしれませんが、平均年収に関しては全体的に向上しています。平均年収の職種別・年齢別のデータに関しては下記記事をご参照ください。

参考記事
2020年最新版!アパレル業界の「平均年収」職種別・年齢別まとめ|アパレル業界について知り、不安を解消!

職種別では9職種中7職種の平均年間賞与・ボーナス額が上昇

アパレル賞与
職種別平均年間賞与額 クリーデンス事業部が作成

職種別に平均年間賞与・ボーナスの増減をみると、デザイナー、パタンナー、プレス・販売促進・VMD、営業、生産管理・物流、マーケティング、WEB・ECで平均年間賞与・ボーナス額は増加、MD・バイヤーと販売・店舗系は減少という結果が出ています。

特に、生産管理・物流の平均年間賞与・ボーナス額は79.9万円で前年比15.4万円増、マーケティングの平均年間賞与・ボーナス額は72.8万円で前年比16.2万円増と大幅に向上。コロナ禍を受けた物流体制・生産体制とマーケティング戦略の見直しによる各ポジションのニーズの高まりが影響したと思われます。

一方で、前年比14.1万円減と大幅な減額が見られたMD・バイヤーと前年比0.6万円減の販売・店舗系に関しては、直接的に売上に関わる職種であるため、コロナ禍による企業全体の業績悪化の煽りを受けての減額と考えられます。

平均年間賞与・ボーナス額の増減はいずれも、コロナ禍による影響が多分に見られた結果となっています。

即戦力人材少数採用の傾向は継続の見込み

今後のファッション・アパレル業界の転職市場は、2020年の即戦力人材の少数採用の傾向が2021年も続くと予想されます。

また、21年はコロナ禍をきっかけに発展目覚ましいデジタル・EC領域と、20年で平均賞与・ボーナス額の向上が見られたマーケティング分野の人材に対する求人が増加するであろうとの予測をクリーデンスは発表しています。

アパレル・ファッション業界の給与水準は他業界に比べて低いとされてきていましたが、既存の有力人材や他分野からの参入人材の流出を防ぐ目的などもあり、給与/賞与・ボーナス水準や人事制度を見直す企業が現在増加しています。

今後もその傾向の維持が予想されるため、21年の平均年間賞与・ボーナス額も増加する見込みです。

参考記事
アパレル・ファッション業界「平均年間賞与額」最新版を発表 コロナ禍でも賞与額は増加。背景には転職市場の変化

【年代別】平均年間賞与・ボーナス額データ

全体 60.7万円
(前年58.5万円、前年比+2.2万円

20代 46.7万円
(前年47.5万円、前年比-0.8万円

30代 63.9万円
(前年65.5万円、前年比-1.6万円

40代 79.4万円
(前年72.2万円、前年比+7.2万円

50代以上 106.4万円
(前年104.6万円、前年比-1.8万円

【職種別】平均年間賞与・ボーナス額データ

デザイナー 59.2万円
(前年58.1万円、前年比+1.1万円

パタンナー 62.1万円
(前年53.8万円、前年比+8.3万円

MD・バイヤー 68.5万円
(前年82.6万円、前年比-14.1万円

プレス・販売促進・VMD 73.3万円
(前年66.5万円、前年比+6.8万円

営業 74.4万円
(前年71.0万円、前年比+3.4万円

販売・店舗系 49.0万円
(前年49.6万円、前年比-0.6万円

生産管理・物流 79.9万円
(前年64.5万円、前年比+15.4万円

マーケティング 72.8万円
(前年56.6万円、前年比+16.2万円

WEB・EC 61.0万円
(前年59.4万円、前年比+1.6万円

【参考】年代別平均年収データ

全体 350万円
(前年339万円、前年比+11万円

20代 298万円
(前年296万円、前年比+2万円

30代 377万円
(前年370万円、前年比+7万円

40代 470万円
(前年450万円、前年比+20万円

50代以上 571万円
(前年528万円、前年比+43万円

平均賞与・ボーナスが高い職種で働くには

ファッション ・アパレル業界の職種別・年齢別平均賞与・ボーナスを見てきました。ファッション ・アパレル業界は結果主義の企業が多いため、賞与・ボーナスはあなた次第でいくらでも変えることができると思います。

ファッション・アパレル業界で働く事に不安を抱えている人は、まずは業界の仕事を経験してみることをおすすめします。

READY TO FASHIONでは、ファッション・アパレル業界の様々な求人を取り扱っています。興味のある求人があれば、ぜひ応募してみてください!

求人はこちら

関連記事

秋吉成紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

ライター・編集者。1994年東京都出身。2018年1月から2020年5月までファッション業界紙にて、研究者インタビューやファッション関連書籍紹介記事などを執筆。2020年5月から2023年6月まで、ファッション・アパレル業界特化型求人プラットフォーム「READY TO FASHION」のオウンドメディア「READY TO FASHION MAG」「READY TO FASHION FOR JINJI」の編集チームに参加。傍ら、様々なファッション・アパレル関連メディアを中心にフリーランスライターとして活動中。