【レポ|1/3】ファッション業界を変えるスタートアップ3社が語る、「いま業界に必要なイノベーションと人材」

2017年8月27日(日)、渋谷レッドブル本社にて若者がファッション業界に繋がるためのイベント『READY TO FASHION OFF LINE』が開催。本イベントでは、将来ファッション業界で活躍することを志す若者に向けて、業界の様々なポジションで活躍する方を招いたパネルディスカッションを実施。三つのテーマで行われたパネルディスカッションを第三回に分けてレポートしていく。

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第一回は「ファッション業界のスタートアップ/若手起業家」を代表する三社が登壇。ITやエンタメ業界といった異業種からの参入や、海外経験をもとにした起業など、様々な背景を持つ企業が「ベンチャーに向いている若者とは?」「これからのファッションビジネスをもっと面白くするために必要なこと」について語った。

 

登壇者一覧:
スタイラー株式会社 小関 翼
株式会社スタンディングオベーション 荻田 芳宏
シタテル株式会社 若尾 真実
モデレーター:株式会社READY TO FASHION 石川 義朗

 

ファッション業界が不振の今、なぜ起業したのか?

READY TO FAHION(以下、RTF):それでは最初の質問です。衣類の市場規模がこの二十数年で約3分の2に縮小している一方、洋服の販売枚数は二倍になり、商品単価が半分に落ち込んでいます。ファストファッションの登場によって消費者の価値観や小売の方法が変わっていく中、なぜこのタイミングで起業したのでしょうか。

 

 

スタイラー株式会社 小関氏(以下、小関)

実はこの二十数年って、ファッション業界だけでなく他でも同じようなことが起きています。91年のバブル崩壊により物価が継続的に下落していくので、貯蓄した方が得だという意識に変わっていくんですよね。そうすると服だけでなく消費に関わる全般的な市場が縮小して、商品単価がどんどん落ちていく。他の業界も苦しいのは同じことで、なぜこのタイミングでファッションかと聞かれると、ただ「やってみたいから」ということに尽きます。

 

もうひとつ、僕がAmazonで働いていたこともきっかけになっています。皆さんにも馴染みがあるかもしれませんが、最近ではAmazonが東京コレクションのスポンサーになったり、オリジナルブランドを手がけたり、今まで以上にファッション分野で様々な取り組みをしています。なぜかというと、服や食べ物といったライフスタイル分野は取引頻度が多く、ユーザーの生活に入りやすいから。実はAmazon本国での1ユーザーあたりの取引回数は1ヶ月に一回くらいしかないんですが、この回数をあげれば売り上げはスケールしますよね。Amazonはまだまだアパレルに関しては攻め切れてないので、Amazonと並走してこの部分を伸ばしていきたいと思い始めたのがスタイラー株式会社です。

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株式会社スタンディングオベーション 荻田氏(以下、荻田)

洋服の販売枚数が倍増していると先ほどありましたが、服は衣食住のライフスタイルの基本なので、世界を含め大きな市場であり続けるとは思っています。ただ、他業界がユーザーに寄り添い変革を遂げる一方、ファッション業界は変わらないまま。作り手側の理屈で商品を提供して、トップダウン型のコミュニケーションばかり。ユーザーの立場にあったコミュニケーションがなされていないなと思っています。

 

これだけ服が買われていると、1人の持ち服あたり7〜8割がタンスの肥やし化しています。弊社では着まわしの提案をソーシャルで共有・相談できるアプリ「XZ(クローゼット)」を運営していて、そのタンスの肥やしを着まわしで使える宝の山に変えることができます。今まで10のうち2しか活用できていなかったものが7できるようになれば、コーディネートを楽しむ回数や服を買う頻度が増えますよね。

タンスの肥やしを活性化させれば結果的に、ユーザーのファッション消費も進み業界全体が盛り上がると考えています。タンスの肥やしが多いからこそ、このタイミングで起業しました。

 

シタテル株式会社 若尾氏(以下、若尾):ファッション業界は今、他業界からの参入が容易になっていて、会社/個人の枠組みや業界を跨いでビジネスをしたいというニーズが高まってきていると思っています。シタテルでは国内の縫製工場・生地メーカーと提携し、誰でも服を作ることができるプラットフォームを提供しています。弊社がお手伝いできることは、他業界や新しいクリエイティビティを持った方に、業界にはない斬新な発想を形にしてもらうことです。

 

例えばインスタグラマーやコスプレイヤーなどが服や衣装を作るのですが、彼らが手がけることでそれを支持するコミュニティーに服が売れていきます。「千枚は作れないけど、百枚作れば全て売れます」という濃いコミュニティーを抱えた方たちが増え、服作りや販売の仕方が大きく変化している時代だからこそ、インフラを整える必要があると思いシタテルでは衣服生産のインフラの構築を行なっています。

 

ベンチャー企業に向いている人材とは?

RTF:リスクを背負ったり、新しいことに挑戦する中でどんな人と働きたいか、実際にどんな人と働いて化学反応が起きているか、お聞かせください。

 

荻田:ベンチャーは「アドベンチャー」のベンチャーなので、冒険心が重要。お金も人もないところからリスクを背負って、ありそうでなかった価値や体験を発見していくのがベンチャーだと思っています。

例えば、大企業とベンチャーを船に例えると以下のようなことが言えます。大企業は豪華客船なので沈没はしないけど、気がついたら目的地に着いているし自分で舵は切れません。一方ベンチャーは小型船。急に波が来て沈む危険もあるけど、自分がオールを漕げば船はその方向にどんどん進んでいきます。どちらが良いかは思考の問題ですが、自分でオールを漕いでゴールに向かうことで、やりがいや楽しみを見出せる人がベンチャーに向いています。

出来ないことに対する理由や言い訳ではなく、実現方法を考え抜けるような人がベンチャーに必要だと思いますし、そういう人たちと仕事がしたいと思います。

 

若尾:想像力が豊かな人、当たり前を疑える人が向いていると思います。今の時代「こうすればうまくいく」というのはわかっているんだけど、少し先の未来はそうじゃないかもしれない。何かを始める時に「そもそもこれっていいんだっけ?」と問いただせるような人がベンチャー企業には向いていると思います。新しいものが世に出る時ってほぼ受け入れられないし、違和感があると思うんです。その違和感を生み出せるような人であり、なおかつ未来を予測して、論理立てて考えられる人がベンチャーに合っていると思います。

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小関:出世の道が決まっている大企業とは違い、スタートアップは指数関数的に成長します。これは会社が大きくなるほど必然的に求められていくことも変わってくるので、個人の成長スピードが速いからです。そういう意味で、ベンチャーで働く人は自分自身をどんどんリニューアルして、常に新しい問題に対応できるスキルが求められます。しかも、会社が伸びていけば外から優秀な人も入ってきて、競争的になっていく。ベンチャーって実は競争的なので、そういうところに飛び込んで自分の価値を上げたい人が向いていると思います。

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ファッションビジネスをもっと面白くするために必要なことは?

若尾:こうした他業界の人が作るスタートアップもそうですが、想像力のある人によってファッション業界がいい方向に解体されていけば面白いなと思っています。ファッションが好きという感覚を持ちながら当たり前を疑っていける人や、服の可能性やファッションにおける幸せの見出し方など、想像力を働かせて新たなものを作っていける人が増えたらいいなと思います。

 

荻田:世の中全般で言うと、ファッションの価値が全体的に下がっていると思っています。テクノロジーを駆使して効率化を図りすぎてしまうと、服を選ぶプロセスの楽しみや新しいお気に入りに出会った時のトキメキなど、ファッションの本質にあった高揚感が削ぎ落とされてしまう。「時短で効率良く」という方向になっていくと、もはやファッションとは言えないのではないでしょうか。

ファッションは利便性と気分の掛け合わせです。ファッションで感じる気分を、店頭はもちろんですが、僕らがやるようなファッションテクノロジーのサービスで大切にしていければ、ファッション全体の価値が上がっていくのではないかなと思います。

 

小関:ファッションビジネスを面白くするのは人であって、クリエイティブな発想でファッション業界に様々な仕掛けができて、業界を盛り上げるような人を取らないといけないと思います。面白いアイデアを持った人が他の業界に流れていってしまうとどうしようもないので、一人当たりの売上や利益を上げていって賃金を上げていくのが大切。それは現場の人がキビキビ働くとかの問題じゃなくて、ビジネスモデルの話です。経営陣が売り上げを作り、その売り上げを少ないリソースで達成できれば、一人当たりに還元できる給与もどんどん上がっていく。そういうチャレンジが業界としてなされて、働いている人のモチベーションが上がって面白いことをそれぞれが追求できればいいんじゃないかなと思います。

 

 

就活で必要とされるスキルとは?

RTF:ファッション業界を目指す若者に向けて、就活への意気込みや必要とされるスキルについて教えて下さい。

 

小関:大企業の採用でよくあるのが、どこでバイトしたとかTOEICは何点以上だとか、丸暗記したように皆同じことを言うので減点方式になるということ。そうならないためには、自分はこういう活動をしてきましたとオリジナルの話ができる方が企業の目に止まると思います。

 

荻田:意識が高い人は感度も高く優秀な方が多いのですが、物事をうまく運べる人は逆に危ないなと思います。準備をしなくてもその場でなんとかなってしまう人こそ、うさぎと亀の話のように、泥臭くやっている亀にいつのまにか抜かれてしまいます。スタートアップで本当に成果を出している人は、ウサギが常に全速力で走り抜いている状態で、器用貧乏にならずに最後までやりきることが大事なのかなと思います。

 

若尾:「御社で一生働きたいです!」と本心でないことを言うのではなく、会社を通して自分がやりたいこと、自分がいることによる会社へのメリット、などが言えるといいのかなと思います。例えば自分が人事だとして、いつか辞めて起業したりフリーに転身しそうな人材とわかっていても、それだけのパワーを感じたら短期間だとしても会社に大きな利益になるので採用したいと思う。会社に対して自分を雇ったらどんなメリットがあるかしっかり伝えた上で、ある程度わがままになってもいいと思います。

 

質疑応答:創業期に集めるメンバーは優秀な人材か?ファッション好きか?

だっつ:ユーチューバーをしている高校二年生のだっつと申します。起業という観点で、創業期は優秀な人を仲間にするのか、自分のビジョンに共感して服好きの人を集めるのかで悩んでいるので、どちらがいいのかをお聞きしたいです。

荻田:初期のコアメンバーは妥協せずに選んだ方が良い。ファッションをテーマに起業するのであれば、詳しいかは別にして興味があって好きであることは重要です。

僕もファッションに詳しいわけではないけど、楽しむ気分は共感できます。前職ではゲーム事業も手がけていましたが、ゲームにいまいちグッとこなくて、数万円も課金するユーザーの行動が頭では理解できるけど腑に落ちないところがあって。そういった価値観がわかりあえないと難しい。根本の価値観を共感できるかどうかは確認した方が良いです。あとはビジョンに対して一点の曇りなく実現できる確信がないと、同じ船に乗ったところで進ませていくのが難しくなります。ゴールを実現できるメンバーを集めることが重要です。

 

若尾:ただ優秀な人はやめた方がいいと思います。ファッションが好きという部分はあるにしろ、共感がないとズレが生じてしまいます。自分のやりたいことにどれほど共感してくれるのか、未来に向けて一緒にコミットしていきたい人かどうかが大事だと思います。

 

小関:創業期のメンバーこそ妥協したらもったいない。ビジョンにも共感してくれて、ファッションの話も合うのが一番。ただ、それでもビジネス的にいまいちだなという人は、どっちみち別れる可能性が高いので、絶対にどっちも備わっている人が良いと思います。

そういう人に出会うためにどうするかというと、とにかくいろいろなところに声をかけまくる(笑)「ケビン・ベーコン・ゲーム」または「六次の隔たり」というのですが、六人を介すると目的の人物に行き着くという仮説があるので、あらゆる手を使って辿っていけば自分が求めるパートナーと繋がることができます。

 

Text:READY TO FASHION MAG編集部
登壇者プロフィール:
スタイラー株式会社 代表取締役 CEO
小関 翼(こせき つばさ)
東京大学大学院修了。日英のメガバンクにて法人取引・オペレーション設計等を担当後、Amazonにて決済サービスの事業開発を担当。ライフスタイル分野にマーケットデザインの問題が大きいことに着目し、2015年3月にスタイラー株式会社を設立。未来の購買体験をアジアから作っていくことを目指す。Fintech、FashionTechを国内に紹介。経産省アパレル関係委員会メンバー。

 

株式会社STANDING OVATION 代表取締役CEO
荻田 芳宏(おぎた よしひろ)
早稲田大学卒。1999年に株式会社博報堂に入社。事業プロデュース局にてイベントプロデュースやプロモーション企画に携わる。その後、キャスティング局ミュージックエンタテインメント部では、アーティストやタレントの広告キャスティング、CM音楽タイアップ等を担当。2007年、ネットベンチャーのスタートアップに参画。モバイルコンテンツサービスのプロデューサーの後、取締役COOを務める。2014年1月、株式会社STANDING OVATIONを設立、代表取締役CEOに就任。

 

シタテル株式会社 sitateru  広報・PR
若尾 真実 (わかお まみ)
1992年生まれ。2011年慶應義塾大学法学部政治学科へ入学。2012 年、バングラデシュに渡航し現地の縫製工場と連携してソーシャル バッグブランド「To2Bag」を立ち上げる。卒業後PR代理店を経て、2016年、衣服生産プラットフォームを展開するシタテル株式会社に PR担当として入社。これからのファッション・衣服の在り方とサステナビリティの実現に向け、メディア編集、企画立案やブランディングなど幅広く活動中。

 

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