SNS担当の概要や業務内容・求められるスキルや素質・必要/有利な資格・キャリアプラン・求人情報を業界で活躍する人を招き、リアルな声を取り入れながらご紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、以前は大手アパレル企業でSNSチームのグループリーダーを務め、現在はフリーランスとして企業のSNS運用のサポート全般や専門学校での講師など、多岐にわたってご活躍されているTSUKASA.さん。アパレル企業のSNS担当の仕事内容だけでなく、スキルを身につけた後のキャリアアップの具体例まで詳しく解説していだきました。

ファッション・アパレル業界への就職・転職を検討されている方やSNS運用業務に興味のある方は必見です。

プロフィール:TSUKASA. (@tsun_tsukasa
SNSディレクター・デザイナー・インストラクター
北海道生まれ、横浜育ち。2008年3月に「SLY(スライ)」販売員として株式会社バロックリジャパンリミテッドに入社。2012年7月から「SLY」SNS運用担当として本社勤務した後、全ブランドのSNSを統括するSNSチームのグループリーダーとして活躍した。退職後、2021年に株式会社バニッシュ・スタンダードに入社し、現在はフリーランスとして活躍。企業のSNS運用のサポート全般や専門学校での講師などアパレル分野に限らず多岐にわたって活動している。

SNS担当とは?

SNS担当とは、企業が開設したX(旧Twitter)やInstagram、Facebook、LINEなどのSNSアカウントを、ユーザーへの認知度の向上や新規ファンの獲得といった目的のために用いる職種です。

近年、宣伝やマーケティングの一環としてSNSに力を入れる企業が増えています。特にブランディングが大切になってくるファッション・アパレル業界の企業にとって、SNSは無料で使える重要な広告媒体と言えるでしょう。

例に挙げたようなSNSにはそれぞれ異なった特性があり、SNS担当には目的に応じてSNSを使い分けることが求められます。

例えば、X(旧Twitter)はリアルタイムでの情報発信に優れており、情報を広く素早く広めることに適しています。

一方で、インスタグラムは画像や動画の投稿が中心のため、一目で商品やブランドの雰囲気を伝えることができます。

これらの特性を考慮しつつ、ペルソナ(サービス・商品を利用する想定ユーザー像)や伝えたい情報に合わせてコンテンツの企画・発信・反響の分析までを一貫して行うのがSNS担当の仕事です。

SNS担当はまだ新しい領域なので、WEBマーケティングや広報(プレス)の社員が業務の1つとして担当している場合が多いです。

また、ファッション・アパレル業界では、アパレル店員が個人アカウントを開設し、SNS担当として商品やコーディネートを紹介したり、ライブ配信を行ってユーザーと密にコミュニケーションをとることで多くのファンを獲得しています。

アパレル店員のSNS担当についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

どこまでの業務がSNS担当の業務の領域かは、企業によって異なります。SNSチームを構築してSNSに注力している企業もあれば、プレスやEC担当が並行して運用している企業もあり、それぞれです。

SNS担当の仕事内容

SNS担当の主な業務は、コンテンツの企画・制作、日々の投稿、それに対するユーザーのリアクションの分析というPDCAサイクルを回すことです。

項目ごとに具体的な業務内容を5つご紹介します。

①戦略立案

SNSを始めるのは簡単ですが、ただ闇雲に投稿をしていても効果は得られません。SNS担当として、どのようにSNSを運用していくのか綿密な戦略を立てることが重要です。

ここではマーケティングの知識が求められるでしょう。ペルソナの設定、フォロワー数や流入率などのKPIの設定を一般的なマーケティングと同様に行った上でSNS業務を開始します。

数値的な戦略はもちろんですが、ビジュアルがPVや売り上げなどに大きく影響するファッション業界において視認性の高さを表現するためにも、トンマナ(フォント・キーカラー・画像のテンション等)やヴィジュアルの方向性も決めておきましょう。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

販促スケジュールを把握することとブランド理解は一番基本となる部分。それらをインプットしてから、施策にコンテンツを落とし込んでいきます。

②コンテンツ企画

その後は運用戦略に沿ってコンテンツの企画を行います。

企画の際、ただこちらから一方向に投稿するだけでなく、どのようにユーザーを巻き込むかという視点はSNS運営において大切です。というのも、ネット上の口コミは消費者の購買行動に深く影響するため、企業からすれば多くのユーザーに自社の商品について発信してほしいものです。

このようなユーザーが投稿する口コミは「ユーザー生成コンテンツ(User Generated Content)」の略である「UGC」と呼ばれます。

このUGCを促すために企業SNSではハッシュタグなどを用いてユーザーが参加できるような企画を行います。ユーザー参加型の企画は多くの企業SNSが実践している手法の一つです。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

これまでは、例えば新作を紹介する際はコーディネートを発信するだけでよかったのですが、今はそれだけではファンの獲得が難しい時代。消費者の方とのきっかけをどう作るかが重要になってきます。ECの施策やSNSのトレンドと連動できるようなコンテンツ企画がよいのでは。

③コンテンツの撮影・編集

SNS担当の業務では、投稿する素材を確保するための撮影やコンテンツの編集作業も含まれます。

具体的には、インスタライブやEコマースのライブに自ら出演したりする業務や、演者をサポートする業務、フィード画像の作成、動画編集などが挙げられます。

また、PR(商品やサービスなどの宣伝)を依頼するためにも、日々インフルエンサーとの関係構築もSNS担当の重要な業務の一つになる場合もあります。(企業によっては広報(プレス)が担ってくれるケースもあります)

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

SNSチームが主導で撮影するのは難しい場合もあるので、プレスやECの制作チームと連携を取って、SNS用の素材を調達したりします。
編集作業をグラフィックデザイナーに依頼する場合もあれば、簡単な制作物は自分で作ってしまうこともあります。

④投稿

投稿の文章や画像の作成もSNS担当の業務です。投稿の頻度や時間帯も考慮して計画的に投稿します。

企業アカウントで投稿業務を行う際に最も気をつるけるべきことは、SNSの炎上です。ひとたび炎上すれば企業の信用は瞬く間に低下します。どんなコンテンツがウケるのかだけでなく、どんなコンテンツが受け入れられないのか、時流を読むのもSNS担当が意識すべきことだと言えます。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

SNS運用では特にスケジューリングが至難の業。自分が苦手な場合はスケジュール管理が得意な担当とタッグを組んで運用していくことも重要です。実は私もスケジュール管理が苦手で仲間と分業しています。
また企業アカウントだからこそ、発信するコンテンツは主観的になってはいけません。シーズンテーマをしっかり理解したり、ブランドディレクターと連携を取ったりなど、自社やブランドへの理解力が大切です。一人で考えず、周囲と意見交換をして決めるのが良いでしょう。

⑤効果測定

SNS担当は投稿後はその反響を分析し、仮説を立ててネクストアクションを決めていきます。フォロワー数などの数値の分析はもちろん、SNSではユーザーの生の声を聞くことができます。

定量データと定性データの両方を考慮して、その結果に応じて目標の再設定や投稿の改善を行う必要があります。

SNS担当のある1日のスケジュール

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

撮影がある日は、ECの撮影に同行するなどして撮影業務も行います。企業にもよりますが、撮影は週1〜月1などさまざま。大手の企業は品番数も入荷も多いので週1は撮影を行っている印象です。それ以外はひたすら編集作業投稿準備をしたり、次の企画コンテンツを考えたりしています。
また、忙しい店舗でコーデ撮影をする時間が取れないスタッフを本社に呼んで、撮影サポートなどを行う場合もあります。

SNS運用のやりがい

SNS運用は地道な作業の繰り返しですが、成果が数値として表れるとやりがいを感じることができる職種です。また最先端のトレンドに触れながら、ユーザーと一番近い距離でコミュニケーションが取れることもやりがいの一つと言えるでしょう。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

商品やサービスを一番最後に消費者に届ける責任重大な仕事をしているという幸福感はもちろんのこと、商品の魅力を良い形で消費者に届けられて、クライアントやお客様に喜んでもらえることにやりがいを感じます。
販売員と一緒に考えて起用したインフルエンサーの反響が良く、このご時世に「カタログもらいに来ました」と言って頂けたり、商品だけでなく企画自体にお客様から感謝のメッセージを頂けたりした時はすごくうれしかったです。

仕事をするうえで大変だと感じることは?

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

コンテンツを生み出し続けることですね。常にトレンドやコンテンツをチェックして引き出しを増やしたり、同業の方たちと情報交換をして知識をアップデートしたりしています。
あとは常に投稿に間違いがないかチェックしたりなど、毎日SNSを追いかけなければいけないのも大変ですね。気が休まらない一面もありますが、根底としていいサービス・商品をたくさんの方に知っていただきたいという気持ちでここまで続けてこれています。

アパレルSNS担当の給与や待遇は?

SNS運用は、先に述べたようにEC業務やプレス業務との兼任で携わることが多い職種ですが、中途だと月給23万円〜45万円程度、アルバイトだと1,250円程度です。
※編集部調べ

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

正直に申し上げますと、お休みは基本的に少なくなりがち。365日24時間発信するものがあったり、世の中の消費活動が活発になる土日や大型連休前にはフェアや施策があるのでバタバタしています。
また、1月〜2月や7月〜8月などアパレルのシーズンの立ち上がり時も、SNSにアップする素材を確保したり施策をしないといけないので繁忙期です。
ただその分、SNSの更新を交代制や予約投稿にしたり、休日に店頭に出勤している販売員と協力して投稿したりするなどの対策を練っています。

SNS担当になるには?求められるスキルと素質

SNS担当には直感的な思考と論理的な思考の両方が求められます。
それ以外にも幅広いスキルを活かせる職種です。その一例を5つご紹介していきます。

①表現力

SNSでは文章や画像によって情報を発信します。そのため最低限の文章力や画像編集スキルはSNS担当に必須です。

ユーザーを引き込む文章や目を惹くワードチョイス、画像の作成はセンスによる部分も大きく、すぐに習得できることではありませんが、普段から他のSNSアカウントをチェックして感性を磨くと良いでしょう。

②数値分析力

SNS担当では、良くも悪くもその成果がフォロワー数などの明確な数字に表れます。

これらの数値を分析して、運用改善を行う必要があるので、デジタルマーケティングに求められるような統計分析のスキルはSNS担当でも活かすことができます。

③ネットリテラシー

ネットリテラシーとは、インターネット情報を正しく利用する能力のこと。SNSアカウントは企業の顔とも言えるので、発言や投稿内容には充分に注意することが必要です。

コンプライアンスを遵守しなかったり、炎上を起こしたりしてしまうと企業やブランドのイメージを傷つけることにつながってしまうので、ネットリテラシーを身につけてSNSを運用しましょう。

④トレンドをキャッチする力

読者の皆さまも百も承知だと思いますが、S NS上では情報が一気に拡散されてトレンドが生み出される、いわゆる「バズる」という現象があります。この現象を上手く利用すれば自社の存在を知らしめる絶好の機会になります。

そのためSNS担当は、自分が運用するアカウントのターゲット層の間で、いま何が流行っているのかを感じ取り、ターゲットのニーズにあったコンテンツを企画することが欠かせません。

⑤継続力

SNSで多くのファンを獲得して自社商品の売上や認知拡大に繋げるためには、継続的にSNSを運用することが大切。いわゆる、アクティブアカウントでなければなりません。投稿頻度が低いとユーザーの目に留まりにくく、アルゴリズムに逆らいファンを獲得する機会も少なくなります。

最初はなかなかフォロワーが増えなくても、日々コツコツとニーズのあるコンテンツを投稿し、運用することで、徐々にファンを増やしていくことが可能です。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

トレンドキャッチ能力やコミュニケーション能力の高さなども大切ですが、結局やらないことには始まらないので、実行力がすごく重要。SNSのアカウントが成長してる方は、能動的に取り組まれている方が多いですね。これ流行りそうだな、と思ったらすぐに取り入れて先駆者のように立ち回れる方がより向いていると思います。

SNS担当になるために必要/有利な資格

SNS担当を行うにあたって必要な資格は特にありません。しかし、自らのスキルを高めるために学ぶことは決して無駄にはなりません。

SNSエキスパート検定

「SNSエキスパート検定」は、企業・団体向けのSNS活用の知識・方法を習得するための検定プログラムです。

上級ではSNSの基礎知識から効果測定の方法まで、2日間の講座を受講後、試験を受けて合否が判定されます。

SNSマーケティング検定

「SNSマーケティング検定」はSNSを活用したデジタルマーケティング全般における基本知識などの能力を測定するプログラム。基本問題と実際のシチュエーションを想定した事例問題で構成されています。

色彩検定

「色彩検定」は名前の通り、色に関する知識や技能を問う試験。感性や経験に頼らない配色のルールにのっとった理論の土台を身につけることができます。

【応募サイト】
SNSエキスパート検定
SNSマーケティング検定
色彩検定

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

経験上、Adobeを触れるスキルはあった方が確実にいいですね。(Illustrator・Photoshop・Lightroom・Premiere Pro・aftereffect等) 「明日からポップアップの告知しないといけない!」となった時にサクッと制作物を作れるくらいのAdobeソフトのスキルがあるくらいで問題ないです。最近ではInstagramのリールやTikTokなどのショート動画も主流になっていますが、動画編集ができるだけでなく、SNS視点でウケる動画を作る企画力と編集力がある人材は貴重です。

SNS担当になるためのキャリアプラン

SNS担当は比較的新しい職種です。そのため、明確なキャリアパスは存在しておらず、販売員やマーケティング、広報(プレス)の業務から派生してSNS担当としてキャリアをスタートすることが多いです。

未経験からSNS担当を目指すには、まず個人でSNS担当を始めるといいでしょう。そこで情報発信やユーザーの反応を体感することでSNS担当のノウハウを身に着けることができます。

個人のSNSでも多数のフォロワーを獲得すれば、選考での大きなアピールポイントになります。

特にファッション・アパレル業界ではSNSのフォロワー数を応募条件とするインフルエンサー採用を行っている企業もあります。

何よりもSNSを始めるのに資金は必要ありません。地道な努力でスキルを身に着けることがSNS担当としてのキャリアをスタートする第一歩と言えるでしょう。

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

前職でSNS担当をやっていた即戦力の方もいれば、販売経験があってSNS未経験だけど挑戦される方もいらっしゃいます。私は未経験の販売員からSNS担当になりましたが、お客様の顔を想像できること以外にも、日々の業務が忙しくてSNS業務まで手が回らないスタッフの気持ちも理解してあげられる立場になれたので、販売経験をしていてよかったなと実感しています。

SNS担当になった後に描けるキャリアプラン

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

チームを育成して部署を作って、その統括のリーダーになっていくというキャリアもあるでしょうし、私みたいに一つの企業で統括リーダーとして働いた後に、もっと他の企業さんの役に立ちたいと考えてフリーランスで活躍される方もいらっしゃいます。
SNS運用の考え方は、基本同じ。なので、アパレル業界で培った感性を飲食業界やエンターテイメント業界に活かしたりと、仕事の幅も広がると思います。

SNS担当を目指す人へのメッセージ

TSUKASA.さん
TSUKASA.さん

SNS運用の仕事は一人で小さい広告代理店を運営している感覚。SNSの知識やコミュニケーション力だけでなく、この先の人生に役に立つビジネススキルも身につけられます!
将来、可能性を広げられる仕事だと思うので、楽しんでぜひこの道を歩んでほしいなと思います。絶賛、優秀な仲間募集中です(笑)!

SNS担当の求人一覧

繰り返しになりますが、SNS担当の歴史は浅く、今後ますます需要が高まっていく領域と言われています。手法が確立されていないからこそ、自ら試行錯誤しながら新しいことに挑戦したい方にはぴったりの職種です。

READY TO FASHIONでもSNS担当に関する求人を公開しているので、是非応募してみてください。

SNS担当の求人一覧

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。音楽、ドラマ、食、本などすべてにおいて韓国カルチャーが好き。

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