株式会社ユナイテッドアローズと株式会社ベイクルーズの人事が顔をあわせる

多くの方が生活の中で耳にしたことがあるであろうアパレル大手2社「株式会社ユナイテッドアローズ」と「株式会社ベイクルーズ」。

人事担当者は何を考え多くの方とお会いしているのか。実体験を交えた採用の裏話と、ファッション・アパレル業界で働くということについてお話いただききました(本記事はREADY TO FASHIONが主催したセッション内容を編集・要約した上で構成しています)。

人事編:人事の目線で本音で語る、ファッション業界で働くこと

・株式会社ユナイテッドアローズ 人事部 採用チーム リーダー 佐藤勇作 様
・株式会社ベイクルーズ 人財能力・開発 Div. Director 吉田光樹 様

人事の目線で本音で語る、ファッション業界で働くということ 【OFFLINE レポート】 スライドビジュアル

大手2社のお互いの印象は?

──近しいマーケットの2社ですが、各社の違い、互いの印象はありますか?

吉田(ベイクルーズ):まず大きく異なる点としては、上場しているかどうかだと思います。

弊社と違い、ユナイテッドアローズさんは上場しているため一般的に、しっかりとした・真面目という印象があり、学生のご両親の方の認知度としても、ユナイテッドアローズさんの方が高いのではないでしょうか?また、”店はお客様のためにある”というユナイテッドアローズさんの行動指針に共感する学生はユナイテッドアローズさんに行く印象を持っています。弊社は”個人の成長が会社の成長に”と謳っているように、社員を重視する特徴で、両社の目指すベクトルは違っているように感じます。

佐藤(ユナイテッドアローズ):弊社から見る、ベイクルーズさんは、面白い人が多いという印象です。また、一人一人が個性豊かで、それがベイクルーズさんのチャレンジ精神に繋がっていると思いますし、事業展開にもその色がよく出ていると思います。

吉田:そこが少々やんちゃすぎるところもありますが、むしろその勢いでやっているところが上手く働き、新ブランド立ち上げなど新しいことをやりやすい環境になっています。

株式会社ユナイテッドアローズ 佐藤勇作様と株式会社ベイクルーズ 吉田光樹様

──社員の性格の違いが会社の色に出ていますね。

吉田:また同じセレクトショップ事業なので、弊社とユナイテッドアローズさんの新卒採用はかなり被りますよね。

佐藤:そうですね。セレクトショップ事業を展開している会社を受けたいと思っている方は、実際に就活が始まると感じると思いますが、我々2社はかなりの確率で新卒採用の選択肢に入ってきます。他のセレクトショップ事業を展開していらっしゃる企業や、繊維商社などはよく併願している学生が多いですね。

人事目線で語る面接で必ず聞くこと

──新卒で併願することが多い2社ですが、各社、面接で必ず聞くことはありますか?

佐藤:弊社は小売業なので、販売という仕事を重要視しています。そのため、店舗での職務がしっかりできるかどうかを見ます。あとは本当に理念に共感してくれているか、ですね。「理念に共感しています。」と多くの就活生が言いますが、じゃあ我々の理念があなたにとって何なのかを聞くと答えられない人が結構います。それは共感とは言わないですよね。就活は、業界研究や職種研究も重要ですが、最終的には一つの会社を選ぶので、各社の違いや大事にしていることを確認するなど、しっかり会社ごとのリサーチをして欲しいです。

吉田:佐藤さんの仰るように「理念に共感したから」という動機だけではどうにもならないんですね。それより、皆さんの価値観を知り、それのどこが理念と合っているのかを教えて欲しいと思っています。私の場合は、弊社を希望するより具体的な目的をよく聞きます。会社に入るだけではなく、会社を踏み台にしても叶えたいことでもいいので、夢をしっかり教えてほしいです。夢がはっきりしていれば頑張ることができるし、会社に入った時の夢や目的は、仕事が行き詰った時に自分を支えてくれます。また、「好きなことを仕事にするというのはどういうこと?」ということも聞きますし、最終面接では「本音を教えてください」と言います。とにかく目的、何を成し遂げたいかが重要だと感じています。

佐藤:結局どこの業界も、吉田さんがおっしゃったような項目を判断軸にするという点はあまり変わらないんですよね。いかに自分なりに考えて答えられるかがキーになってくると思います。

吉田:考えること無しに本音を語ることは不可能です。理念共感とだけ言うのではなく、自分のどのような点がそれと一致するから共感するか、という理論付けが必要です。

セッションの内容をメモする様子

新卒採用時にはここを見ている!

──19卒が終わろうとする時期ですが、今年は説明会なども含め、のべ何人ほどの新卒と会いましたか?

佐藤:説明会含めるともっと多いですが、選考では1000名以上は会ってます。

吉田:担当者ベースだと2000人、自分は300人ほどです。

──それだけライバルがいると、学生も他の人より印象を残したいですよね。光るものを感じるのはどんな人でしょうか?

佐藤:説明会・選考は店頭に立った時をイメージした私服で来ていただいています。服装が弊社のイメージと合っていると印象がいいですね。ハイブランドでなくてもいいし、ファストファッションブランドでもいいのですが、その人の人となりが服装含めてその人らしさを表現しつつ、その人が店頭に立つイメージをできるか、を見ます。

吉田:同じですね。募集には服装について何も書いてないのですが、しっかり考えて来てほしいですし、実際スタイリングは気にしています。一次面接から最終までのスタイリングの変化も見ます。

セッションの様子

──店頭に立った時のイメージというのは、ブランドが展開するアイテムの雰囲気との親和性や清潔感など、いくつかポイントがあると思いますが、具体的に服選びはどこを見ますか?

佐藤:洋服を着て、洋服を提供する仕事なので、洋服が好きなことが分かるスタイリングかどうかを見ます。その人に似合っているかどうか、というところですね。

吉田:弊社の場合、見られる意識があるかどうかを服装から判断します。弊社もブランドの世界観を大切にしているので、入社後にそこを意識した服選びが求められ、服装はもちろんのこと、髪型やメイクもチェックされる時もあります。そうしているうちに内定式から半年、一年経つと、皆さん雰囲気が変わるんです。

佐藤:弊社もそうですね。選考から入社後の一年の間に雰囲気がかなり変わって、大袈裟かもしれませんが、誰だったかわからなくなる時もあります。

吉田: 変わることを楽しむことができる感覚を身につけると、ファッション業界で働くこと自体が楽しくなると思います。

セッションの様子

キャリアアップの方法は?

──早期にキャリアアップしたい人も多くいます。入社後、早期にキャリアアップ・チェンジのチャンスを掴む機会はありますか?

佐藤:抜擢で任せることもありますし、キャリアアップ・チェンジ希望や、やりたい仕事に手を挙げることができる ”社内公募” という制度があります。基本的には何年やったから、というようなキャリアアップはなく、全員フラットな関係です。その人に任せることができるかどうか、、チャンスを与えるかどうかの判断基準になってきます。

吉田:弊社も同じような体制をとっており、抜擢が半分、自分で手を挙げる人が半分で、手を挙げてくれた人は全員面談しています。

セッションの様子

実際、どれくらいの人が手をあげ夢を叶えられていますか?

佐藤:年4回、この制度を実施します。今年5月は全社4300人中の130人くらいの人が手を挙げてくれました。募集したから叶えられる、というわけではなく、審査があるので、年間400人くらい手を挙げ、50人くらいが叶えることができています。

吉田:年2回、手をあげた250人中の30%くらいが移動、キャリアチェンジを叶えます。

──手を挙げない方がいるのは、チャンスをつかむことが難しいからでしょうか?

佐藤:一度に全員が手を挙げるわけではなく、働く中で自分がやりたいこと、今評価されていることをさらに頑張って、もっと評価されてから手をあげようとする人もいるので、それぞれ自分のタイミングで挙げているからだと思います。

──抜擢する場合はどういった点に注目しますか?

吉田:いろいろありますが、売り上げをしっかり出している人は目につきます。そういう人はがっついているというより、お客様が何がほしいかの本質を見極めている人が多いんです。何かをする上での判断がはっきりしているから仕事もできて、キャリアチェンジにも結びつきやすい。もちろんやらせてみて合うか合わないか、各自の可能性を見てから決めています。

セッションの様子

質疑応答

学生:将来バイヤーになりたいのですが、アシスタントバイヤーはどれだけ仕事を任せてもらえますか?

佐藤:どれだけ任せてもらえるかは人にもよるので一概には答えられませんが、少しずつ自分ができることの領域を広げ、任せてもらえる範囲を増やしていくイメージです。

吉田:弊社は抜擢が多く、例えばバイヤーになりたいと手を挙げていた店員を、バイヤーが急に展示会に呼び出して、意見を聞きます。そこで抜擢するかしないかを見極めることがあります。才能、センスを見極めることは普段からしていることで、この商品はどう?と聞かれたら感覚的なものをすぐ言語化できる人の印象はいいですね。

学生:面接での第一印象は大切ですか?

佐藤:重要ですね。お客様とやり取りをする仕事なので。自分がどう見られているかを意識することが習慣として出来ている人は第一印象もいいです。

吉田:第一印象は大事ですが、取り繕うと速攻バレます。また、働く仲間の前でも印象がいい人はとてもいいです。育てられ上手、教えられ上手は好かれますよ。

佐藤:そうですね。取り繕うとわざとらしく見えるので、ナチュラルさは大事ですね。

熱心に話を聞く様子

人事よりメッセージ

佐藤:価値を生み出せない仕事は自動化され無くなるかもしれない一方、ファッション業界はただ服を売るだけではなく、服に付加価値をつけることが、さらに重要になってきています。だからこそ販売という仕事はAIに任せることができない分野だと思います。価値を生み出し続ける業界なので、そこに魅力を感じたら是非この業界に来てほしいですし、我々が掲げる理念は、服を通してイノベーションしていくことを目指しているので、ユナイテッドアローズという会社にも魅力を感じてくれたら、是非チャレンジしてみて欲しいと思います。

吉田:就活は、仕事を始めるまでの練習期間です。時間、マナー、準備など全てが就活の要素。これから仕事を始める前に、まず就活から逃げないで欲しいです。

やりたいことを仕事にしたいのであれば、その仕事が人の役に立ち、さらにお金を払いたいと思えるような価値にする必要があります。このことをしっかり踏まえた上で、やりたいことを仕事にしたいのか、そして自分にとって働く、とはどういうことかを就活を通じて考えてほしいです。
また、仕事は楽しくないとやっていられなくなります。だからこそ私たちは「 オシャレにこだわり楽しもう、ついでに仕事も楽しもう!」という行動指針を掲げていて、一つ一つの仕事をする上で、本当にやりたいことなのかどうかを問い続けています。このことを就活を進めて行く中でも自分に問いかけるようにし、「それでもやりたい」と思うことができれば、是非ファッション業界で挑戦してみてください。

会社紹介

株式会社ユナイテッドアローズ:

1989年設立、30周年を迎える。国内外のデザイナーズブランド・オリジナル企画商品を幅広く取り扱うセレクトショップを展開している。現在は全20ストアブランド、257店舗を運営。会社の特徴とも捉えられている理念は「私たちは世界に通用する新しい日本の生活文化の規範となる価値観を創造し続けます」、日常生活の一部である衣服のセレクトにおいて、ユナイテッドアローズのフィルターを通すことで、少しでも質の良い生活環境を生み出していくことを目指す。社是は『「店はお客様のためにある」。

株式会社ベイクルーズ:

ライフスタイルの変化に比例して多様化するカスタマーのニーズに沿って、衣・食・住・美に関わる事業を展開、37を超えるブランドを持つ。主なブランドとしてはJOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)・Spick & Span(スピック アンド スパン)・IENA(イエナ)などがある。理念は「全てにおいて”人”ありき 」、個人の成長が会社の成長になると考える。行動指針は「オシャレにこだわり楽しもう、ついでに仕事も楽しもう!」。


READY TO FASHION MAG 編集部

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