アパレル企業のオフィスを紹介する企画「オフィスツアー」。今回は、下北沢で古着屋「ALASKA」「DYLAN」「JARMUSCH」を運営するbright young thingsを訪問。「社員にオフィスで本物に触れてほしい」という思いから、こだわり抜いた家具が揃うオフィスは見どころが詰まっています。

さらに今回は、フィッティングスペースを基盤に店舗を作ったという「JARMUSCH VENTAGLIO」にもお邪魔して家具などを見せてもらいました。

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一つひとつ選び抜かれた家具

早速、下北沢駅から徒歩1分ほどの場所にあるオフィスに入らせてもらうと、さまざまな家具やアートが。こだわっていることは「全く違うアイデアをごちゃっと合わせること」と話すのは社長の今澤さん。店舗で働くスタッフの方が出勤前後に集まる場所としても機能しているそうです。

設計士なしで作り上げたオフィスは、今澤さんが全てプロデュース。店舗も設計士がいなく、電気業者・塗装業者・大工まですべて一人でやりとりしているそう。

まず目に留まったのが、入って右手に置かれているこちらのイス。

ル・コルビジェの従兄弟、ピエール・ジャンヌレが戦後のインド都市計画のために作ったオリジナルの家具。

インドに行っている知り合いの専門バイヤーから購入した1950年代頃のもの。輸入に際して、現地で解体・メンテナンスし再度組み直しているそう。

横に置かれている小さいイスはジャンヌレと同じくル・コルビジェのアトリエに入所していたシャルロット・ペリアンのペルジュ・スツール。

「洋服はあくまで人がその洋服を着こなさなければなりませんが、イスは置いてあるだけで完結するので好きです」とのこと。

この席からは下北沢に停まる京王線が見えるのも今澤さんのお気に入りポイントだそう。

そして部屋の中央には、黒い木製のテーブルとそれぞれ形が異なるイスが並んでいます。

このテーブルは大工が日常的に使っている仕事道具から着想を得ており、畳めて、平らな板に戻るという優れもの。

夜は、店を閉め終わったスタッフたちがこのテーブルを囲って飲んでいるそう。「ビール以外ではハイボールをを飲むことが多いので冷蔵庫には炭酸水を常備しています」。なんと常備してあるビール、ウィスキー、炭酸水、コーヒーは飲み放題!

そんな店舗で働くスタッフの方に行ったミニインタビューがこちら。働くことになったきっかけや、メンバーの雰囲気などについても聞いてますよ!

壁側に置かれた長テーブルもバウハウス的な発想で、どこから見ても均等な四角になるように作られています。

さまざま国や時代のものがクロスオーバーする空間

部屋の突き当たりには、白いテーブルとイス、そしてアンディ・ウォーホルのカラフルなポスターがコントラストになって目を引く場所。

イスはアメリカ製のパントンチェア。灰皿は各テーブル必須アイテム。

「アンディーウォーホルからも多くの影響を受けている」と今澤さん。

ここまでアメリカ、ドイツ、インドなどさまざまな国の家具が配置されていましたが、商業的なものと芸術的なものの折り合いのつけ方はこのウォーホルのポップアートという概念からの影響。

ここにもウォーホルの90年代のポスター。

オフィスの角には今澤さんの趣味が詰まったコーナーがありました。

映画「コーヒー&シガレッツ」のポスターは同社と切り離せないもの。古着屋「JARMUSCH」は「コーヒー&シガレッツ」の監督を務めた「JIM JARMUSCH(ジム・ジャームッシュ)」に由来しています。

写真集は新宿に店を構えるジャズ喫茶&バー「DUG」のオーナーであり、フォトグラファーでもある中平穂積さんの作品。現在、写真の黒をきれいにプリントする工場がなくなりもう印刷できないとのこと。何枚か譲っていただいた写真は店舗で飾っています。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコのジャケットのレコードは、下北沢で50年やっていたロックバーの老舗「トラブル・ピーチ」のオーナーさんから店を閉めるときに渡されたもの。下北沢で受け継がれるカルチャーに感動します。

音楽は圧倒的にロックを聴くという今澤さん。00年代に下北沢にきた頃はインディーロックの最盛期だったそうで、その影響を受けているんだとか。

店舗と同様、サブスクのサービスなどは使われておらず、アナログのCDが流れていました。

撮影機材らしきものを発見。話を聞くと、物撮りなど簡単な撮影もここの事務所で行っているとのこと。

これはTシャツを刷る時に使用するシルクスクリーン用のハンガーパネル。ノベルティはなるべく自分たちで作るようにしており、今年3月の「ALASKA」10周年の際にも、オープン時に刷ったTシャツをリバイバルしています。

フィッティングから着想を得てオープンした「JARMUSCH VENTAGLIO」

次に見せていただいたのが、オフィスから徒歩5分ほどの場所に位置する「JARMUSCH VENTAGLIO(ジャームッシュ・ヴェンタリオ)」。

入ってすぐ出迎えてくれるのが、独特な形状のヴェンタリオテーブル(ヴェンタリオ=扇)。オフィスにも置かれていた黒い丸イスを作ったシャルロット・ペリアンがデザインしたデスクです。

お分かりの通り、店名もこのヴェンタリオテーブルから取られています。デザイナーがコルビジェの時代に活躍した女性と言うこともあり、ウィメンズの店舗にしたのだとか。

店名「JARMUSCH」にもつながる、「コーヒー&シガレッツ」のジャケット写真を意識したのがモノクロ調の床。

日本ではこの規格の正方形がなく、大阪の業者にわざわざ頼んで切ってもらうほどの追求ぶりです。

店の奥には広々とした空間のフィッティングが登場。

物件を見た時に、まず思い浮かんだのがこのフィッティングだったそう。

オフィスにも置かれていたイスをここでも発見。オフィスと同じ、ジャンヌレのイスです。店舗でも今澤さんのイスマニアぶりが発揮されていました。

アフリカの一本木から切り出されたイス。小ぶりながら大人も座れるのだから驚き。
レザーらしからぬ、切り出し椅子。100年ほど前のの東南アジアで作られたもので圧倒的存在感を放つ。

フィッティングの中央の壁に飾られているのは、代々木上原にあるファイヤーキングカフェのオーナーさんからしばらく借りているというポスター。

フィッティングにはスピーカーが。話を聞くと、BGMはオープニングパーティーの為だけに友人のミュージシャンに作ってもらったオリジナルアルバムだそう。

レコーディングにも立ち会ったという今澤さん。「俺の職業はなんなんだろうか?と思ってやってました(笑)」の一言。

取材中、「一つだけだと多すぎる。一つのテーマが無くなったら全て奪われてしまうけど、二つのテーマがあれば機能する」と今澤さんがおっしゃっていたように、今澤さんの仕事の幅のみならず、さまざまな年代や国の家具・ファッション・カルチャーで溢れるbright young thingsを堪能できた時間でした。

スタッフのためにこだわり抜かれた本格的な家具やアートに触れられる空間には、同社の魅力が詰まっていました。bright young thingsの世界を体感できる店舗にも、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

そんなbright young thingsでは、アルバイトや正社員を募集しています。興味のある方はぜひ下記からご覧ください!

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。