
右:野本陽波(のもと・はるな)Uni-share代表。國學院大学 観光まちづくり学部 3年生。大学では、観光を軸に、各地域の魅力や課題を分析して現地の方にまち作りを提案する実践型の学部で学んでいる。
右奥:小林花寧(こばやし・はなね)Uni-share デザイン局 デザイン長。武蔵野美術大学 基礎デザイン学科 3年生。学科では「デザインを科学する(Science of Design)」と称して、平面から立体まで多様な表現を通して、本質的な観点から幅広く学んでいる。
左:伊勢崎あさひ(いせざき・あさひ)Uni-share デザイン局所属。多摩美術大学 統合デザイン学科 2年生。大学では、グラフィックデザインやプロダクトデザインなどの視点を交えながら、もの作りに励んでいる。
フリーマガジンを手がける学生団体「Uni-share(ユニシェア)」は、四年制大学や専門学校に通う約50人の学生が、プロのクリエイターと協働しながら制作を行う団体。マスからニッチまで多様なテーマをUni-share独自の視点で編集し、そのカルチャーや世界観を幅広い読者へ届けています。
今回リリースされた最新号・Vol.29では、どんな企画が生まれ、どんな思いで制作が進んだのか。Uni-shareに所属する3人に、今号の見どころや団体で活動する魅力について伺いました。
どうしてUni-shareに?
──早速ですが、改めてUni-shareの活動について教えてください。
野本:約1年に1回のペースでフリーマガジンを発行しています。部署は、企業への協賛依頼やクラウドファンディングなどで資金集めを行う「渉外局」、誌面のデザインや入稿作業、フライヤー作成などを行う「デザイン局」、リリースイベントの運営やSNS運用などを行う「広報局」の3部署に分かれています。毎週1回のミーティングを軸に、発行に向けて各部署を進めて動くという流れです。
小林:今年度のざっくりしたスケジュールでいうと、まず4月の新入生の入部前までにコンセプトを決めました。そこから企画出しとブラッシュアップを重ねて、8〜9月に取材・撮影を完了。その後、10月の1ヶ月で編集して年明けに発行するというスケジュール感です。テスト期間で動けなくなる時期もあるので、全体で細かく調整しながら進めています。
──皆さんがUni-shareに入部したきっかけは?
伊勢崎:私は服飾系の学生団体が集まる合同説明会に行く機会があり、Uni-shareの説明を聞いていたら代表の野本さんが堂々としている姿がかっこよくて。それが印象的で新歓に行ってみたら、雰囲気がすごく良くて「ここしかない」と思いました。もともと他の服飾系の団体に入るつもりだったので、自分でも予想外でしたね(笑)。
野本:うれしい。私は小林と同じく4月入部ではなく、2年生の9月から入部しました。何か新しいことを探していた時にたまたま調べたらUni-shareを見つけて。以前から雑誌が好きだったので、そこから興味をもったという感じです。
小林:本来であれば9月は募集していない時期なんですが、インスタグラムにDMを送って直談判しました。そしたら意外にも「来週から来ていいよ」と返事をいただけて。その初回の日が野本も同じだったんです(笑)。偶然すぎてびっくりしました。
野本:他にも雑誌を作るサークルはあったんですけど、美大生・専門学生・私大の学生が一緒になって活動しているのはUni-shareだけだったんです。大学に属さない独立した団体というのも魅力でした。

──直談判はすごい(笑)。入部にあたってハードルはなかった?
小林:勢いで連絡してみたものの、大学に入って初めて何かに挑戦する感覚だったので、勇気を振り絞りましたね。Uni-shareのインスタグラムでは淡々と作品をアップしていて、どんなメンバーがいるのか、どこで活動しているかまでは分からないので、蓋を開けるまでの怖さはありました。
野本:私もそれを覚悟で「とにかく頑張ろう」という気持ちで行きました(笑)。
伊勢崎:私は新歓がとても楽しかったですし、そこで雰囲気もつかめたので特に不安はありませんでしたね。1年生の時は大学で思うように制作できなく、「今年は変えたいな」という気持ちがあったので、気合いだけはありました。
野本:心強い!
──4月以降も募集はしているんですか?
野本:これまではコンセプトが決定するまでに時間がかかっていたんですが、今年はスピード感を持って制作するようになったので、途中入部は受け付けない方向でいきました。
小林:スピード感という意味でも、部員がほどよく集中できるように、常に何かしらの動きを作るようにしています。新歓や定期的なご飯会など、話しやすい雰囲気作りを意識したかな。人数が多いと、せっかくサークルに来ても手を動かさずに友達と喋って終わってしまう日も少なくないです。今年度はそうならないようにしようと幹部で話し合いました。
伊勢崎:私は今年入部したばかりですが、スピード感がある中でも段階を踏んで教えてくださるので助かっています。企画や撮影が波に乗ってくるとやる気が出ますし、皆さん遊び半分ではなく仕事として向き合っているのが伝わるので、こちらも自然と身が引き締まります。
小林:ありがとう。すごくいいことだね。
野本:仕事みたいな雰囲気だよね。みんな真剣にタスクをこなしながらも、楽しんでる、その感じがUni-shareらしいと思います。
Vol.29で実現した初の韓国企画。見どころは?
──2月15日にリリースされたVol.29について教えてください。
小林:今回のタイトルは「危うさ」です。テーマ決めの時に体調を崩している部員が多く、喫茶店で集まった時に「私たち、ちょっと危うすぎない?」という話になったのがきっかけなんです(笑)。企画も「これやっちゃお!」と後先考えずにどんどん進めていくところも含めて、客観的に見ても危ういなと。
野本:その話から、若者って社会とのつながりが薄い分、何かに感化された時に未知の方向に流されてしまう危うさがあると思ったんです。
小林:でも「若いからこその危うさって今しかないんじゃない?」とも同時に思いました。その危うさは輝きも含んでいるんじゃないかと。

野本:それまでは企画書を集めて、2ヶ月かけてコンセプトやタイトルを決めていたんですが、スピーディーに計画性を持って進める中で、全員が腑に落ちたコンセプトが「危うさ」でした。
小林:正直なところ、コンセプトってそこまで難しくする必要はないと思っています。それよりも、そこからどんな企画を作るかの方が大切。誰もが共通認識で持てる分かりやすいものがいいなと。
野本:Uni-shareって読者層を特に決めていなくて。子どもからおばあちゃん・おじいちゃんまでいろんな人に読んでもらいたい。誰が読んで分かるようなコンセプトにしたいという思いもありました。
──今回の企画は?
野本:インタビュー企画とビジュアル企画が3つずつあります。ビジュアル企画にもインタビュー要素を入れたりして、今回は言葉を多めにしています。
インタビューはYouTuberであり歌人でもあるベテランちさんと、ミュージシャンのCwondoさんがYouTubeを始められたのを機に、対談を行いました。さらに、iPhoneから即興で音を作り上げるアーティストで、最近、アニメ『タコピーの原罪』で公式リミックスを制作したvqさんにもお話を伺っています。
そして今回は初の試みとして国境を越え、韓国での企画にも挑戦しました。 ”日本文化が好き”と語ってくださったKim boraさん、Kim Gyuriさん、minaさん、YUKIさんの4名のモデルとカメラマンのAnnie Chungさんに協力いただき、撮影・インタビューを行いました。韓国での撮影ではありますが、メイクや雰囲気は、皆さんが思い描く“日本”のイメージに寄せていただき、二つの文化が交わることで生まれる融合や違いを、「危うさ」として表現しています。
小林:特にKim boraさんの出演は急遽決まって、正直震えました(笑)。現場経験も多くないし、言語が通じない環境でどう対応しようかって。でも撮影のカメラマンさんが日本語と韓国語の両方に対応できる方で、現場もすごく温かく、安心して進行できました。

野本:普段なら会えないクリエイターさんと一緒に仕事できるのは、Uni-shareの魅力ですね。私は今回、牧場でのビジュアル企画を担当したんですが、自分の中でやりがいを感じられた経験でした。馬の目を綺麗に取れるカメラマンさんを探していて、カメラマンの野口哲司さんのInstagramを拝見し、馬や人の質感を捉えた表現に強く惹かれ、今回お願いすることにしました。
生命の揺らぎや危うさをビジュアルで表現できたのは、クリエイターさんのおかげです。牧場を借りるにあたって資金面や時間調整など難しいことばかりでしたが、やり遂げた時は達成感が大きかったですね。
伊勢崎:私はベテランち×Cwondo による対談企画の誌面デザインを担当しました。最終的なデザインは先輩が調整してくださったのですが、企画長にデザインを提案してすり合わせながら進めていきました。入稿直前まで文章の推敲が続いて、それに合わせて配置が変わっていくので、全体のバランスを整えるのが大変でしたね。入稿前に2徹したのも、今ではいい思い出(笑)。

──デザインでこだわったところは?
伊勢崎:文章がメインのページだったので、一番は読みやすさを大切にしました。あとは、インタビューがハードな内容だったこともあり、誌面はあえてポップな感じにしたいという企画者の意図を汲んでバランスを調整していきました。Uni-shareに入って今回が初めての制作でしたが、先輩方が優しく教えてくださり、技術的にも学びになりました。
小林:私は、先ほども話した、vqさんのビジュアル企画を担当しました。実際に彼のライブをはじめて見たとき、「この人をライブハウスの外でみてみたい」と思ったのが発案のきっかけ。なので、今回は太陽の光の下で、vqさんの新しい表情を引き出すという企画を考えました。実際に海に入っていただいたりもしたんですよ。
──オファーを受けてくださったんですね。
小林:OKしてくださったのは正直驚きましたが、企画書を送る時は、ほぼラブレターみたいに書いたので(笑)、それが伝わったのかなと思います。
──Vol.29を通して読者にどんな感情やメッセージを伝えたいですか?
伊勢崎:ビジュアルへの感動はもちろんですが、読んでくださった方の新しい思索の助けになったらうれしいです。読者の方が抱えている危うさや、その周りにある危うさを新しい視点から見つめ直すきっかけになればいいなと。
そして今回私達が表現した危うさを通して、同年代の読者の方とゆるい連帯や共感のようなものが得られたら理想です。
ひとりでは完結しない制作の面白さ
──Uni-shareで活動する上で感じる喜びとは?
伊勢崎:今回は企画立案者の方のもとでサポートする立場形でしたが、デザイン作業はほとんど任せていただきました。企画者の方が想像しているイメージに近づけられたり、良いフィードバックをもらえたりした時はすごくうれしくて、それがやりがいになっていましたね。
──デザイン面で言うと、大学でやってることも活かせるのでは?
伊勢崎:そうですね。ただUni-shareは大学以上に自主性を促してくれる場であるように感じていて。大学の課題とは違った視点や方法の実践ができるので、Uni-shareに入ってからの経験はとても勉強になっています。
小林:私も美大に通っていて常に制作をしていますが、Uni-shareでの制作とは全く別物です。私の通っている武蔵野美術大学は学生と教授で完結してしまうことが多くて。その点、Uni-shareは大学の外側にある、社会に近い空気を感じられる場所です。所属するようになってから、物の見方がかなりフラットになりました。
──どんな思考がフラットに?
小林:大学では、自分の内側にある体験を出発点に制作することが多く、社会と地続きではない感覚があるんです。一方Uni-shareでは、クリエイターの方をはじめいろんな方と関わりながら、世の中に作品を出し、フィードバックを受け取ることができる。視野を広げながらクリエイションに向き合える場所だと思っています。
伊勢崎:もちろん大学の制作も学びになるんですが、1人で完結できるものが多く、内に内に入り込んでしまう時もあります。Uni-shareは多くの人と協力しながら進めるプロジェクトなので、そこが魅力ですよね。
野本:私大に通っている私からすると、美大や専門のメンバーが普段から自分の内側と向き合って制作しているからこそ、その考え方やセンスがすごく刺激になってる。逆に四年制大学では共有できない視点にも出会えるので、純粋に楽しいですね。
小林:他の服飾系の学生団体と掛け持ちしているメンバーもいるんですが、その部員から話を聞くと「Uni-shareはいい意味で色が決まってない」と感じることがあります。他の団体では、確立された色があって、その色に自分も混ざりたいから入る感覚があると思うんです。でもUni-shareは、どちらかというと白に近い(笑)。色が決まっていないからこそ、入ってから自分のやりたいことを形にできるんだと思います。
野本:だからこそ、一人ひとりが自分のカラーを持ち寄っていて、混ざり合うというより、メンバーの数だけ何通りもの魅力が広がっていく場所なんですよね

ラスト号を前に見つめる現在地
──今、団体として抱いている課題感は?
野本:フリーマガジンの設置場所に課題を感じています。現在は、書店や古着屋を中心に置かせていただいているのですが、今回は1000部まで増刷したこともあり、これまで以上に幅広い場所に届けたいと考えています。新しい層の方にも手に取っていただける機会を増やしたいですし、韓国企画も実施したので、韓国でも展開できたらいいなと思っています。
──今後、挑戦したいことは?
伊勢崎:今年は代官山のSALOONで音楽イベントを開催しました。Uni-shareとして、リリースイベント以外で主催するのは初めての試みです。平日だったこともあり集客が不安だったんですが、おかげさまで大盛況で、収益も得られました。資金面で課題を抱えていた中で、新しい領域に踏み出せた実感があったので、また別の形でもリアルイベントに挑戦してみたいです。
個人的な野望としては、誌面に漫画やイラストのコーナーを作って企画の幅を広げたいという気持ちもあります。そういった厚みが加わることで、一冊としての魅力もより強くなるはずです。
──2人はこの号で引退ですが、Uni-shareに入ってどんな変化がありましたか?そして、最後の号に向けての意気込みを教えてください。
野本:Uni-shareに入って代表になってから、責任感が芽生えました。ふわふわしていた自分が、少しずつ地に足がついた人間に変わっていくのを自分自身でも実感しています。だからこそ、この号は多くの人に手にとっていただきたいですし、話題になってほしい。そのためにも、リリースに向けてやるべきことを着実に進めていくつもりです。
小林:顔つきが本当に変わったもんね(笑)。
野本:責任感って、もう少し噛み砕くと「自分の芯がひとつ増えた」ような感覚なんです。これまでは自分軸があまりないタイプで、少し適当なところもあったんですが、芯の太いメンバーたちに囲まれて、その影響を受けながら成長できたんだと思います。
小林:私は逆に、この団体に入って柔らかくなりました。振り返ると、大学生までの学生時代、ずっとどこか「ここじゃない」という感覚があって。でも、生まれて初めて「この場所は息ができる」と思えたんです。そこでやっと落ち着けたのかなという気がしています。
野本:私も、Uni-shareが大切な居場所になったのをすごく感じる。部員一人ひとりがパズルのピースだとしたら、それがピッタリ噛み合ったような感覚。
──今後Uni-shareに入部を考えている方にメッセージをお願いします。
野本:Uni-shareは、世界を縮小したような団体です。良い意味で色がなく、様々な感性を持った人が集まります。好きなものがある人でも、まだ見つかっていない人でも誰でも受け入れてくれる場所です。ここで出会う人と経験があなたの人生の軸になるかもしれません。ぜひ入部をお待ちしております!
vol.29コンセプト
「危うさ」
私たちが生きている“今”は、絶えず変化のただ中にある。
夢と現実のあいだで揺れる進路、他者と自己の境界線、自言と劣等感のせめぎ合い。
「ちゃんとしなきゃ」と思いながらも、どこかで崩れたくなる、寄りかかりたくなる。
そんな大学生・若者が持つ、“不安定さ”や“未完成さ”こそが、私たちの危うさだ。
それは決してネガティブなものではない。
むしろ、その中にこそ、今しかない輝きや衝動、そして創造性が潜んでいる。
本号では、そんな危うさをさまざまな角度から見つめ、表現していく。〈企画紹介〉
ーJENGA
ひたすらに積み上げ続ける。 倒れたか。 また積み直せばいい。ーアウフヘーベンの少女たち
朝、何気なく開いたスマートフォンの画面に魅了される。
それは海を越えた、時差のない隣の国。 二つの世界は交わらないようで、静かに溶け合っていく。 そんな ” 惹かれ合う瞬間 ” を追う小さな旅。ーベテランち ×Cwondo
独自の感覚で時代を見つめるふたりが、 「危うさ」を考える。
「しんどさ」とともに現在、そしてその先を生きる若者たちへ。ーSee/Seen
「窓」は、内と外を分ける境界でありながら、 二つの視点を共存させる装置でもある。 「人」もまた、見る者であり、見られる者だ。
一致しない視線のあいだに、私たちは生きている。ー生命が揺れる
生命の揺らぎに触れたとき、私たちは生きていることを自覚する。ーこどもなおとな
誰しも、ある日突然こどもからおとなにはならない。
その途中には曖昧で、不安定な状態がある。
そんな存在をここでは「こどもなおとな」と呼んでみる。ーvq
vq は、薄暗いライブハウスの光の中にいた。
音に包まれ、青白いスマホの灯とともに、ひとり立っている。
私たちはふと思った。 太陽の光の下で、 彼の肌と瞳はどんな色をしているのだろうと。ーゆにしぇあ
もっと編集部の内情や趣向が見えていてもいいのでは?
雑誌を通した交流があっても良いのでは?
当たり障りない話をしたって、 その当たり障りない話をさらけ出したっていいのでは?
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