表参道の複合文化施設「スパイラル」が、 若手クリエーターの発掘・育成・支援を目的としたゴールデンウィーク恒例のアートフェスティバル「SICF18」(第 18 回スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)を 2017年5月2日(火)~ 7日(日)に開催。本記事では、出展していた一人の若手ファッションクリエイターに、今回の作品やファッションに対する意識について質問したインタビューを掲載します。

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【 一着で服の生成と劣化の循環を表す】

profile:宮崎靖之
武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 ファッションデザインコース 4年 群馬県出身 東京都在住

ーまず最初に今回の作品のコンセプトを教えてください。

宮崎:全てものは常に変化あるいは劣化、風化していきますが、そんな変化していく様を目の前でまじまじと見ることはできません。感じる変化は目で見た一瞬の画の積み重ねであります。今回の作品「molting」は、服におけるその膨大な数の画を透かして見たようなもので、糸から生地になり、生地から服になる。やがて、服は劣化し朽ちていく。そんな、服における一連の変化をその時々の状態ではなく全てを今の状態として扱い、1着の上に表現しました。

つまり、一着で服の時系列を現しました。これは、”服の表現”の立体作品ですが、一次元の”糸”なのが一番のポイントとなっています。服を媒介として”素材”を追求したこの作品を通して、”服が糸からできていく”っていうことを皆さんが感じてくれたら嬉しいと思っています。

(作品タイトル:molting)

ーこの作品はどのようにして作ったのですか?

宮崎:デニム地の部分は既製のデニムジャケットをカッターで解体し、後から縦糸を抜きました。デニム地以外の部分の生地はオリジナルの不織布を用いています。袖の部分には裏地があるので服として実際着ることもできるんですよ。(笑)

生地を作る時間などを含めると制作に2週間くらいかかりました。特にデニムを解体するのに時間がかかりました。

ー何からインスピレーションを得てこの作品を作ったんですか?

宮崎:僕は、群馬県出身なので、自然に溢れる環境で育ちました。自然というのは、その場の一瞬で変化しないですよね。過去から現在の積み重ねの結果、ゆっくりと変化し、循環していきます。その生成と劣化の循環からインスピレーションを受けています。服も毎日着ていくうちにだんだん劣化し、味が出てきます。その一連の流れを凝縮して、一つの服で表現できたらと思いました。

ーどうしてデニムで作品を作ろうと思ったのですか?

宮崎:とにかくデニムは、素材の劣化や変化を楽しみやすく、分かりやすい生地だからです。例えばジャケットとデニムを比較してみると分かりやすくて、破けたデニムは許容されるけれど、破けたジャケットってそうでないことが多いと思います。

ー宮崎さんにとって”ファッション/服”とはなんですか?

宮崎:服/衣類は、物理的に一番人間に近いものです。服/ファッションと、人との関係性・距離の具合、程度が大切ではないかと思います。ものづくりをはじめとして、何においても既成されたすでに存在する範囲内で取り組んだり、行動することは限界があると思います。僕は、そんな限界を超えたものつくりをしていきたいですね。

ー作品を通して、”糸”へのこだわりが強いように感じますが、宮崎さんにとって”糸”についてはどう意識していますか?

宮崎:服をいくつかの次元に分解すると、「一次元・・・糸、線」「二次元・・・布、面」「三次元・・・衣服、立体」というように表せると思うのですが、”糸”は一次元で、やはり全ての服は”糸”から作られる。ものづくりの基本という面から見てもやはり目が離せない、大切な存在です。

ー他の作品も糸の色は白を使っていましたが、こだわりなどあるのですか?

宮崎:他の色でも試してみたのですが、黒だと髪の毛みたいだし、赤だとちょっとグロテスクになっちゃったんですよね(笑)だから白色の糸にしました。

ー好きなブランドはありますか?

コム デ ギャルソンが好きです。また、ファッションが好きになったきっかけは、アレキサンダーマックイーンで、未だに、2010年のSPRINGコレクションのファッションショーが忘れられないんですよね。

 (movie : Alexander McQueen Spring 2010)
ー最後に同世代のみんなに伝えたいメッセージがあればお願いします。

宮崎:今の世の中、情報も物も溢れているので、自分がどうすれば良いのかという答えは手に入りやすいのではないかと思います。どんなに飽和していても、物事は更新していくべきだと思っています。それは容易なことではないかもしれないけれど、更新し続けることに意味があると思います。そして挑戦し続けた先に”答え”が見えてくるのではないかと信じています。様々なものが、すでに充足、そして与えられている世の中ですが、あえて”無いもの”を造り出そうとしている皆さんと一緒に頑張っていきたいです。

Text : Sakurako Cherry K (READY TO FASHION MAG 編集部)

READY TO FASHION MAG 編集部

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