ファションをテーマに活動している若者のリアルや、同世代へのメッセージを届ける連載企画「若者VOICE」。第15回目の今回は、GLAMHATEのデザイナー・製作を務める藤原大輔さんに、クリエイションや今後の展開について伺った。

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藤原大輔

青山学院大学4年生。卒業後はロンドン美大へ進学を予定。2017年7月に渋谷ESギャラリーにて、自身がデザイナー・製作を務めるブランド「GLAMHATE」の展示会を行った。ブランドの持つ唯一の世界観が注目を集め、今後の展開が期待されている。

Instagram: https://www.instagram.com/glamhate/

Online store: https://glamhate.xyz

 

ー藤原さんのファッションはとても特徴的ですが、今のファッションに至る経緯はどのようなものなのでしょう。

藤原:最初に派手な格好を始めたのが中学生の後半から。母親が厳しく、相当押さえつけられて育ったので、分かりやすく反発するために派手な服を着たのが始まりです。当時はピアスを開けて派手な服を身につけるのが精一杯の反抗だったんでしょうね。母の反応は最悪でしたよ。ですがそこで母親という弾糾してくれる存在がいたことが、むしろ私のアイデンティティーを生んだのかもしれません。

いわゆるパンキッシュな反骨精神的なものというのは生まれた時に成立するのではなくて、誰かが「それは良くない。間違っている。」と言った時に初めて成立すると思うんです。だから自分が変な格好を始めた時に母親が「それいいじゃん!」と言うような環境だったら、今のようにファッションを楽しめていないかもしれない。今でも街の人たちが白い目で見てきたり、なんだアイツって思われる所に快感を覚えていますしね。

 

ー服装において何かテーマやポリシーのようなものはありますか?

藤原:意識していることは全くないです。でも周囲と違う人間に見られたいっていうのは内心とても思っています。

例えば、もし私にスポーツでも音楽でも何かしらの才能があって有名にでもなれていたら、服に興味は湧かなかったはず。服って一番安易で、誰にでもできるものだから。もし他人に自分と同じメイクをして服もそのまま着させたら、自分と同じ人間がまた1人出来上がる。自分的に服はそれぐらいのものだと思っています。正直、服装とかブランド自体に意味はないなと感じているんです。作り手にはもちろんあったとしても服を着るって結局衣食住のひとつだし、法に触れない程度で身に纏うっていうのが限界なんじゃないかなって。

 

ーそれで実際に服を作り始めたのは何故ですか?

藤原:「明日は何着よう」とか「この服はバランス的に何か加えようか」という感じで、リメイクをし始めたのがきっかけです。昔は夜中に服のリメイク作業をして、翌日それを着て街に出るというのをよくしていました。

 

ーそうして高校生の頃には文化服装学院のファッションデザインアワードを受賞されていますよね。そのことはやはり現在に繋がる経験だったのでしょうか?

藤原:中学生ぐらいから服がすごく好きで、高校生になると文化服装学院に進学することを漠然と考えていました。しかし専門系の学校に行くことに対し親の反対が強く、ファッションデザインアワードに応募していたのも親の説得のためです。高校3年生の時にやっと最終まで通ったのですが、コンテストや文化服装学院についてはレベルは高いものの内容が自分にとってとても刺激的というわけでもなく。結局その時に、青山学院大学に進学することに決めました。面白みで服も化粧も楽しんでいるから、そういう自分が一般大にいた方が目立つと気づいたのも大きいです。

 

 

ー先ほどパンキッシュや反骨精神などの話が出ましたが、個人的に藤原さんにはアレキサンダーマックイーン好きなイメージがあります。

藤原:好きなデザイナーかと聞かれると困るんですが、自分が初めてファッションというものを見たのがアレキサンダーマックイーンなんだと思います。中学2年生の頃、ロンドンにサマースクールに行かされていて、それが終わる頃に母親とデパートにいったんです。それはちょうど彼が亡くなる直前くらいの時期で、当時のコレクションの映像が売り場で流されていました。それを見た時はとにかく衝撃でした。こんなことが本当にあり得るのかと。レディーガガのバットロマンスという曲がエンディングに使われていたのをよく覚えています。

そしてファッション系の広告に携わる母親から「アレキサンダーマックイーンという天才がいてね。」と話を聞きました。ここがファッションという概念が初めて自分の中に生まれた瞬間でありファーストインパクトで、彼はとても影響を与えられた存在ではあります。

 

ーなるほど。では今実際にインスピレーションの源になっている人やモノはありますか?

藤原:私がすごく大好きで、最初に自分の頭のネジが外れたきっかけになったのは、レディーガガの存在です。2008年くらいかな、偶然テレビを見ていた時に彼女が血まみれで良く分からない歌を歌っていたんですよ。初めてすんなりとしたシンクロを覚えました。こんなに自分が受け入れられるものがあるんだなと感じたんです。

私は小学生の頃からラグビー部に入らされていたんです。中学で私がぶち壊れるまではバスケ部に。習い事ではサッカーとテニスもしていました。今考えるととんでもない。勉強面でも、中学受験のために塾に行かされていました。そういう状況にずっと違和感を感じていたんです。でも自分自身も軟弱で趣味もなく、友達も少ないタイプ。親はただ正義だったんです。だから彼女を見た時に、こういう種類の逃げ道があるんだと気付かされました。マックイーンのショーを見たのはすでに彼女にドブドブはまっていた時だったので、その感動もありましたね。

それとは別に、一番影響を受けた人物はやはりデヴィッド・ボウイ。もちろん歌やファッションもそうですが、私は彼のシアトリカル(演劇的)なところがすごく好きです。馬鹿げた、大げさな、アホみたいな人が大好きなんですよ。綺麗なものだけど、客観視すると現実逃避なものたちが。だからデヴィッド・ボウイが自分とは他の人格を作り出して歌を歌うのなんかも、好きを越してもはや納得してしまいます。ああなるほどなって感覚がすごく強い。ディーバと呼ばれる歌姫たちにも言えるように、観客が見せられているものが全てフェイク、作られたストーリーであるということがとても好みです。だから自分が表現する術である服作りにも、何かストーリー性を感じさせたいと思っています。

 

ーストーリー性ですか。

藤原:例えばですけど、私自身服の系統が全く定まっていません。すごく気分が落ち込んでクールに街を歩きたいなと思えば、全身真っ黒でコムデギャルソンやヨウジヤマモトを着るし、逆にすごく良いことがあり颯爽とクラブに繰り出したいと思えば、ストリートな服を着てジャラジャラとアクセサリーをつけます。それってとても狭いテリトリーの中でのストーリー性を求めていることじゃないですか。だからファッションにおいて自分のスタイルは本当になくて、その日のストーリーみたいなものを服で表現しています。

 

ー結果として、それが藤原さんのオリジナリティーになってますね。

藤原:自分はセクシャリティ的にはゲイなのですが、男の人と会う時にはノーメイクで普通の大学生らしい格好をします。ファッションによってスイッチがあって、それを押すと全く別の人間になるというのをすごくエンジョイしてるんです。

 

ー自分も誰かに共感を与えられる存在になりたいですか?

藤原:思わないかな。簡単にいえば彼らはシアトリカルなことをする前に意識がとても高く、自分にそこまではできないなと思います。エンターテイメントはやっぱりすごく好きだけど、表に立ってそれに共感されたいというよりも、それを自分の中で活かしているから自分が今このように生きているわけだから。私にはそれが特別な逃げ道なんですね。だからそれをブランドとして伝えるのはあまりにも難しい。それはあくまで私が作り出したもので、それを丸々売ることは自分としても嫌だし成立し得ないと思っています。

 

 

ーでは今回のブランドで表現したかったのはどういうことなのでしょうか?

藤原:GLAMHATEではそのような自分の思考やスタイルを売ることが目的ではありません。私がこうしたファッションを始めるきっかけや今でもモチベーションになっている源を突き詰めた核のところで、共有できる人がいるかもしれないという部分を探して形にしました。GALAMHATEの服自体にアーティスト性やストーリー性はないと思います。なんでもない服たちにどうにか着る人が何か落とし込んで欲しい。私の自己満足で作った服たちが、核の部分をどうにか共有してくれる人たちに身につけてもらうことで、自分のようにネガティブに生きる人たちを変えられる。それがコンセプトの”輝かせる”という部分につながっていきます。

 

ー今回のブランドコンセプトについて詳しく聞かせてください。

藤原:1番核になるのが、妬みや嫉みの感情。そして自己嫌悪。自分の中でそうした感情がすごく大きいことや、今世間的にSNSの普及などでその類の感情は爆発的に増えていると思います。でも結局は自分にとってはそうした感情があったからこそ今の思考やスタイルにつながっているわけなので、意外とヘイトというものはすごくポジティブに捉えられると思ったんです。それに気付いて欲しくて、このコンセプトを元にブランドを始めました。

 

ーブランドを始めて、展示会をすることになった経緯は?

藤原:実はブランドをやろうと思うより、展示会をしたいと思ったのが先でした。自分には特殊な自信もあるし、それを共有できる人間がいる自信もありました。だからそれをアウトプットする場を設けることに決め、内容を決めたのはそれから。自分の周りには服好きが多いこともあり、ブランドを作るという形式を取るのがやはり最も効率がいい方法で、キャッチーだと思いました。

 

ー展示会ではかなり色濃く世界観が演出されていましたね。

藤原:展示会ではわざと服を見にくくしました。というのは先にムービーや空間を見てもらい、それが動機となり服の購入につながって欲しいと考えたからです。

 

ー企画や空間デザインの構想、製品のデザインと制作は全てご自分で?

藤原:基本的に一人でやります。アクセサリー類も全てハンドメイド。

 

 

ー展示会を終えた今、何か変化を感じますか?

藤原:展示会の理由付けのためのブランドであるにもかかわらず、300人近くの人たちが来てくれました。受注も予想外にたくさんつきました。自分の世界観や製品に共感してお金を出す人がいると知って驚きましたし、とても大きな収穫になりました。得たことのない種類の自信を得ることができて、これまで否定的に捉えていた共有するということをポジティブに考えられるようになったんです。今ではブランドとしてもっと真剣にやっていこうと考えています。今後は世界観の共有より服をメインに。意味を持つ服を魅せられるようにしたいです。

今ではこれまで足を運ぶことのなかったショップやギャラリーも見に行っています。アートや音楽もただ好きで終わると何も意味はなく、それぞれの要素に疑問を持ったり思考を巡らしたりすることがすごく豊かなことだと意識が変わりました。

 

ー今後の展開は?

藤原:GLAMHATEではオンラインサイトを始めます。そして前回の展示会の時の名目はアクセサリーブランドだったものを、服に焦点を絞っていきます。次はリメイクものも作りつつオリジナルも並行して。根本として世界観あっての製品というのは変わりません。だから通販というのもある程度で限界はあると思うので、衣装提供などもやりつつまた来年に展示会をできればいいなと考えています。自分自身では、進学してとにかく知識をつけていきたいと思います。

 

ーありがとうございました。では最後に、同世代の若者に向けたメッセージをお願いします。

藤原:正しさというものを自分の中だけで見つけてもいいんじゃないかなとよく思います。私はいまこうして活動していますが、これは自分の究極の昇華方法なんです。ファッションとは本質的にはとてもネガティブなものだと思います。そもそも他に特出した才能があったり自慢できるものがあればファッションに興味は向かないじゃないですか。逃げ道や救いとしてファッションを考えると、自分がそこに満足して正しさを見つけられることはとても素晴らしい。

私は、誰もが持っているはずの世界観や感情をうまく自分の中で昇華できるなら、周りからの肯定は要らないと思って生きています。流行とも呼ぶのでしょうが、街を見ていてもあまりに正解が蔓延しすぎていて気持ちが悪い。ものとして服を見るのではなく、自らの感情や欲望を受け入れた気持ちとしてのファッションに自信をつけてほしいですね。そうすれば寄せ集めの古着だって、ハイブランドなんかに負けない価値ある服になると思います。私はそのように自分だけで肯定しながらやってきたことがこうして周囲に認められるようなって、それが今大きな生きる糧になっています。

 

 

※藤原さんはGLAMHATEの規模拡大のために、クリエーションや展示などジャンル、スキル問わず共に活動してくださる方を募集しています。価値観に共感したうえで、ご興味のある方は glamhate.xyz@gmail.com までご連絡ください

 

Text:Naoko Inoue (READY TO FASHION  MAG編集部)

READY TO FASHION MAG 編集部

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