【連載】「若者VOICE vol.13:デザイナー×フォトグラファー」誰にでもできる世代は如何にして作品に付加価値をつけるのか。

ファッションをテーマに活動している若者のリアルや、同世代へのメッセージを届ける連載企画「若者VOICE」。第13回目となる今回はデザイナーの阿部渚と、フォトグラファー志望の井上ゆうみをピックアップ。デザイナーとそのコレクションを撮影するフォトグラファーという間柄。彼女たちの目指す仕事がSNSの発達に影響を受ける中、どのようにして業界で生きていこうとしているのか。業界進出を目の前にした若者2人の等身大に迫った。

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文化服装学院4年の阿部渚と東洋大学3年の井上ゆうみは、阿部が服をデザインし、井上がそのコレクションを撮影するという関係。独自の似通った価値観を持つ2人が繋がり、今らしい古臭さで自己表現をし、業界の流れの中で自らを突出させる道を模索している。
井上ゆうみ(写真:左)
Instagram公式アカウント:http://instagram.com/_yuuml
阿部渚(写真:右)
Instagram公式アカウント:http://instagram.com/na__gi__sa

ーデザインや写真を始めたきっかけを教えて頂けますでしょうか?

ゆうみ:中学の頃から旅行先で撮り始めたのがきっかけです。本気になったのは去年で、古本屋でドアノーの写真集に衝撃を受けて。そこでプロの写真家の方にアシスタントになりたいと頼んだのですが、大学をやめて3年間下で働くことを条件にされ、3年間ずっと自分の写真が撮れないのが嫌で諦めました。でもその数ヶ月後に渚さんからコレクションの写真をお願いしたいという依頼がきて。初めての本格的な活動になりました。

渚:自分の母がアンティークコレクターなので、その影響で小さい頃から雑貨や古着が好きだったんです。そして、服飾の授業がある高校に入学したことがきっかけで服を作り始めて、作ったものを着てもらう、見てもらうことの楽しさを感じるようになりました。もう一つのきっかけはケイスケカンダさんの服に出会ったことです。神田さんの服ってぼろぼろだし、めちゃくちゃなのですが、すごく可愛いし、コアなファンもたくさんいて。今まで自分が見てきた服の常識が壊れた気がして衝撃を受けました。

私は今、古いものをコンセプトにしたり素材に取り入れたりして服を作っています。神田さんの服との出会いは新しい服を作っていく中で古い要素を取り込んでいくという自分の服作りの素となりました。

 ーこれまでにフォトグラファーとしてのキャリアがないゆうみさんにコレクション撮影を依頼したのは何故でしょうか?

渚:最近はインスタグラムの影響で、誰でも写真を発信できるし、ちょっとした有名人になれる時代です。しかし、被写体がいいだけの写真やいいね数狙いの写真ばかりで見飽きてしまっていたんです。多数派が好きな写真はビジネスに繋がるし、ファンが増えるのは分かりますが。そんな中、そういうものよりもっと心臓にダイレクトに来たのが彼女の写真でした。見ただけで写っている人の会話が浮かんでくるような。彼女の写真にはあざとさがなく、映画のワンシーンみたいで、その中に自分の服を溶け込ませてみたいと思ったのが声をかけた理由です。

ーインスタグラム始めとし、SNSを通してプロではない人たちもある程度のレベルで撮ったものや作ったものを簡単に発信することのできる世の中になってきたというのは理解に難しくないですね。プロとして作り、撮ろうとしていく上で感じることはありますか?

ゆうみ:投稿へのいいね数を意識するのは良いのですが、その写真にはそれ以上の付加価値が生まれないと思っています。逆に付加価値のある写真じゃないと世の中に残っていかないと感じます。

渚:私は、デザイナーさんがインスタグラマーのように私生活をさらけ出すことにあまりいい印象を抱いていません。服を作る身として、服以外のところで勝負すべきでは無いと思っているんです。服と私生活両方を発信することで、相乗効果で人気になって服が売れることがありますが、それを良しととするのは違うかなって。SNSでの発信はこれからの時代に欠かせないものですが、使い方は考えていかなければと思っています。

ーお二人の就活事情やキャリアの考え方について教えていただけますか?

ゆうみ:周りがやっているからやらなきゃとは思いましたが、写真家以外に当てはまる仕事がないんです。そのことを自覚した上で今やらなきゃいけないことは、もっと外に向けて自分の写真を発信していくこと。そのために写真の合同展に参加したり、夏休みには代官山で個展を企画しています。安定志向は人間をダメにするというスタンスだから、周りは気にならなくなってきました。

渚:私が就職をやめようと思った一番のきっかけは、今年の五月までインターンシップとして勤めていた某ブランドにありました。というのも、そのブランドのデザイナーさんは18歳から10年以上1人で全てやっていて、その本気さを間近で感じました。就職をすると企業での下積みやコネクションを独立した時に活かすことができるというメリットもありますが、自分でブランドを立ち上げるというのも根性があればできるかなと。私の学校の場合は服飾関係を学びたくて入学した人が多いはずなのに、いざ就職となると妥協してそっちに進まない人も多いんです。それで終わってしまうくらいなら覚悟を決めて勝負に出るのも間違いではないかもと感じ就職をしないことに決めました。

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ー弊社では様々な業界の人が集まることのできる『OPEN PARTY』というものを開催しています。ファッション業界を始めとする文化系の仕事を目指す人が減少している今、文化の横の繋がりが必要だと思うのですが、やってほしい又は行ってほしいイベントなどはありますか?

 

渚:ヘアメイクやフォトグラファー、パタンナーなどは洋服を表現する上で必要不可欠な存在ですが、なかなかそういう人と繋がりにくいという現状があります。そういう人たちが一挙に集まるこのような場があるといいですね。
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ー今の日本の若者のファッションに対して思うことはありますか?

 渚:インスタグラムの話に戻ってしまうのですが、今はインスタグラマーが載せているものを特定数のフォロワーやファンがほぼそのまま真似して商品を買うことが多いと思っています。こんなに開放的な時代なのに自分でコーディネートをしたり好きなものを見つけたりしない姿に逆に没個性的で窮屈な印象を受けます。自分がいつの間にかインスタグラマーのコピー商品になっていることに気がついていないというか。

ゆうみ:古着屋ですら流行りのものを店頭に置いていたりしますよね。

 

ー服作り、写真というように自分らしい表現をしていますが、同世代の若者に思うことはありますか?

ゆうみ : 誰にでも好きなことはあるのに、この年齢になると安定思考や周りの雰囲気にそれが流されてしまう人が多いと思います。好きなことはずっと続けて欲しいですね。

渚 : 私たちが悟り世代と呼ばれる理由として、熱量の少ない人が多いと感じます。やりたいことを何かしら一貫してやっていれば何かに繋がることはあるからやってみるべきだと思います。

 

ーファッション業界に思うことはありますか?

渚:提供する側も消費する側も、”何か伝えたい”/”感じ取る”という”意思”がなく残念に感じます。

ゆうみ:ある通販サイトでは、毎回決められた背景、構図でアイテムを撮影しています。そういう写真は分かりやすく人気も得やすいので商業的にはいいと思いますが、それがずっと続くとも思えなくて。機械が撮るものには思い入れがなく、愛が感じられないです。

2人の会話の中に2つ感じることがあります。1つ目は誰にでもできるということがキーワードになっているということ。カメラもSNSも発達した誰にでもできる世代に生まれたからこそ考えて行動していかなければいけないことが伝わってきました。一方、自分を売り出していかなければならないのに、簡単に発信することのできるSNSではあまり発信していきたくないという矛盾も同時にあるのではと感じました。誰にでもできる世代だからこそ、自分たちしか出来ないことに対して、どのように付加価値をつけていけばいいと思いますか?

ゆうみ : 私は他の分野の人たちと繋がり共創することで、写真に新しい付加価値をつけることができると思います。まさに私と渚さんのような繋がりを連鎖させていくことができたら、と思っています。

渚 :この時代に服を売っていくのは難しいと感じ、通販に切り替えることも考えたのですが…SNSが発達してからお店を構えるショップは少し弱くなってしまったと感じています。しかし、地方の人たちが手にとって見て直接買うことができる場所はリアルショップくらいしかないんです。そんな中だからこそ、地方のセレクトショップにも商品が置いてもらえるように、自分で地方に足を運んで営業をかけたいと思っています。時代遅れのように感じるかもしれませんが、今の時代だからこそ人と人の直の繋がりをあえて大切にすることで自分のコレクションに付加価値をつけることも出来るんじゃないかと思います。

 

ーあえて時代と逆行するとまでは言いませんが、簡単に繋がることができる時代だからこそ、その繋がりの中で意思を持っていくことが大切なんですね。渚さんの場合、いい意味で古臭い考えが個性に感じますが、それはどこから生まれたのでしょうか?

 渚 :頑固オヤジみたいですよね。中学生の頃に服が好きになったのですが、周りにはそういう子がいなかったことから、同じ服が好きな人に関わりたくてネットの世界に走ったんです。ネットには結構長くはまっていたのですが、逆に同じような人ばかりの環境に飽きてしまって。しかし、ネットに一度触れてみたことで自分が行動すればネットを通さなくても熱量のある人にたくさん出会えるし、いろんなことを深く知ることが出来ることに気がつきました。

ーネットで見るものや人は全部没個性に感じるのでしょうか?

渚:そうですね。神田さんの服を好きになった時に、それが好きな人たちのコミュニティみたいなものがたくさんあったんです。交流は楽しかったですが同じ空間を共有しないとどうしても気を使いあった仲にしかなれないというかSNSで出会った友達はそこで終わることも多いので、やはり顔を見て声を聞いて話さないといけないと思いました。ネットが嫌になったのは、ネットにいた時からの反動が原因とも言えますね。

 

ーそう思うと、今っぽいようにも感じてきます。お二人の今後の展開について教えて頂けますか?

渚 : 今後は資金が貯まり次第、展示会にて年に2回のコレクションを発表したいです。それと同時に、受注会で購入したものが半年後に届くというシステムがあまり好きではないので受注会から手に届くまでのスパンを短くできるようにしたいと思っています。

ゆうみ : 自分の自信のなさから今回の個展の開催に踏み切りました。自信をつけるためには何かしら自分の意思で決めたことを行動して成功させる必要があると思ったんです。個展に来てくれる人には、テーマを決めてしまうとそれに引っ張られてしまうので、自由に何かしら伝わればいいなと思っています。

渚&ゆうみ : 2人の活動としては、一緒にギャラリーを借りて個展と展示会を混ぜたようなものを開催してみたいと考えています。ファッションと写真以外にも音楽やケータリングといった様々なジャンルも取り込んでみたいです。そして今後もこの2人の関係は友達だけに収まらず、デザイナーとフォトグラファーとしてもっと発展させたいです。

 

ーありがとうございました。

 

【editor’s view】

筆者もそうであるが、現代の若者は「誰でもできる世代」であり、自分の求めるものや人に簡単に繋がることができる。だからこそ、なにをどのように発信していくかを意識して、意思を持った生き方が大切になってくるのだろう。個々の自己表現レベルが上がり、SNSを駆使できる者がビッグチャンスを掴むこともできる今、SNSの発達の影響を受けやすいデザイナーやフォトグラファーといった職業に就く人たちには個性の突出がより高いレベルで求められるようになるだろう。そしてそれを達成しようとする上で大切なのがそこに至るまでのプロセス。道は険しい、これから先幾度となく紆余曲折をするのだろう。しかしそのプロセスを1つ1つ埋めていくこともまたプロとして絶対的に必要だ。まだ自分の道を歩き始めたばかりの今回の若者2人。これからどのように自分を突出させていくのか、同世代として大いに楽しみである。

 

「井上ゆうみの個展情報」

FIRST PHOTO EXHIBITION ーsomewhereー

場所 : A.S ANTIQUE GALLERY

住所 : 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-31-15 2F

期間 : 2017年8月18日 15:00-20:00

2017年8月19日 11:00-20:00

2017年8月20日 11:00-19:00

 

入場:無料

 

Text: S.Kamegai (READY TO FASHION MAG編集部)
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