ファッション業界に興味のある若者に向けて、表面的に会社を知るのではなく、そこで働く”人”にフォーカスし、会社のその先にあるリアルな姿を届ける本企画。

第一弾は、マッキントッシュ ロンドン、マッキントッシュ フィロソフィー、ポール・スチュアート、サンヨー(コート)、ブラックレーベル・クレストブリッジ、ラブレスなど、多くのブランド、店舗を構え、アパレル業界でも売上高上位を記録し、今年で創業75周年を迎える三陽商会。

そんな同社からは、タグラインである「TIMELESS WORK. ほんとうにいいものをつくろう。」を反映する「100年コート」でMDを担当する石田和孝さん(以下略:石田)と人事部である石橋京子さんに、会社と仕事について聞いた。

三陽商会

MDとはレストランでいう、”メニューを決める人”

石田和孝(いしだかずたか)・・・コーポレートビジネス部コート企画グループ。早稲田大学卒業後、2008年総合職入社。紳士ブランドで販売ののち、婦人服ブランドで営業を経て、2013年より婦人服の企画に配属、現職。

──MDとしてかお仕事をされている石田さんですが、意外と「MD」という仕事について、どんな業務をしているのか、いまいち掴めないという学生が多いため、まずは、「MD」という仕事について教えて頂けますか?

石田:一言でいうと、レストランでいう、”メニューを決める人”だと思っています。私は4年制の大学を出て就職したため、デザインは描けないですし、パターンも引けるわけでもないですけど、デザイナー/パタンナーが作るものを、”どのくらいの値段で誰に向けて売りたいのか””どうやってPRに繋げるか”をチームの皆と具体化していく仕事をしています。

例えば、59,000円のコートと89,000円コートだと、そもそも作る工場から素材からデザインから全然違うことをしないといけないので、これをデザイナーが形にしやすいように導いていくといったものです。レストランで言うと、料理は作れないが、それをどこから調達して、どの価格帯でどのようにして売っていくかを考えることと似ているかもしれないですね。

──ありがとうございます。特にレストランの例えはとても分かりやすかったです。

石田:未だに説明が難しくMDって何だろうって思いますけど。でも、デザイン/パターン以外ほんとになんでもやる仕事です。

──4年生大学の出身ということでしたが、どのような経緯で三陽商会に入社し、今の職種に就いたのか教えてください。

石田:当時はMDという職業があるのを知らなくて、就活の途中で、デザイン画が描けなくてもファッション 業界で服作りに携われると思ったのがきっかけですね。そのため、初めからMDがやりたくて入ったみたいなところがあります。百貨店ブランドもあれば、セレクトショップもあって、この会社に入社したら、何でもやらせてもらえるという考えもありましたし、純粋にスーツを着なくていいという発想もあったと思います。銀行や保険業界の方へOB訪問もしていたけど、人生一度きりだから、自分が本当にやりたいMDになるためにここにしようと決めました。

──もともとファッションが好きだったのですか。

石田:服は好きでしたが、アパレルに関わる経験は全くありませんでした。それでも三陽商会は全てを教えてくれると思いました。最初は、店頭の販売や営業をしていて、その後MDで働くことになりました。

モノを大事にする文化

──ありがとうございます。それでは、MDという職業をしている中で、一番のやりがいを教えてください。

石田:エゴサーチをしていると、よく三陽商会やSANYO COATに関するつぶやきが見るのが楽しいし、街でSANYO COATを着ている人を見るとやっていて良かったと純粋に思います。それより嬉しいのは、イベントや店頭で接客する際に、大学生くらいの方がご両親や祖父母と一緒に買いに来てくれることが多くなってきたことです。SANYO COATは高額なラインナップのため、ご本人のアルバイト代では買えないので、ご両親や祖父母が一緒にご来店され、成人式や就職祝いなどの人生の節目をきっかけに100年コートをお買い求めくださいます。人生という時間の中で大切な人にプレゼントしたいと思えるコートは、他のブランドではないことですし、時計や万年筆のような長く使ってもらう記念として、コートが選ばれるのは商品としてもブランドとしても誇りに思いますね。

──人生の節目に渡すものに選ばれるっていうのはとても感慨深いですね。

石田:そもそもモノを作って売るというのが基本ですが、その先に“売ってどうするか”や“それによって世の中にどういうメッセージや影響を与えられるのか”というところを考えていくのもやりがいですね。最近は、日本人本来が持つ“長く良いモノを使う”という文化が薄れてしまっていると思っています。というのも、今は5年保てば長持ちしたなという感覚だと皆が思います。しかし江戸時代では、着物を100年着ていたそうです。親子三代まで着て当たり前で、着られなくなったらタオルにし、最終的には下駄の鼻緒にしているほどモノを長く使っていた。だからこそ、もう一度日本人が本来もっている、モノを大事にする文化がまた根付いていって、洋服との付き合い方を考えるきっかけになればと思いました。

──メッセージ性を伝えていくことはファッションが本来もっているものであり、実際にご購入頂いた方のストーリーに触れていくのはとても理想的ですね。仕事している中で大変なことはありますか。

石田:お客様目線に立つことと、社内とのやりとりで大変なことがあります。

まずお客様目線ですが、多種多様なお客様がいる中で、プライオリティはどこにあるのかをメンバーで話し合って、一つの答えを導き、決定することは簡単ではありません。売上や利益を考えつつ、お客様第一主義を貫くことは難しいし、苦労します。

社内の方でいうと、MDは立場上、嫌われ役になることです。例えば、デザイナーに10型デザインを出してもらい、7型にしなきゃいけない時に、3型を中止することをデザイナーに伝え、生産する前に中止のジャッジをしなくてはいけない。また、納期から逆算してスケジュールを管理し、納期に間に合うようにデザイナーにうまく促すこともMD職の仕事ですね。デザイナーとの信頼関係を築いて、何をもってどういう根拠で、なぜ中止なのかを客観的に伝えないといけません。

──100年コートが始まった経緯を教えてください。

石田:100年コートに関しては、2013年に三陽商会が創業70周年を迎えた時に、会社の象徴となる商品を作ろうということで生まれました。もともとレインコート専業の会社で、1946年から20年くらいからずっとコート一筋の会社だったという経緯もあって“三陽商会といえばコート”という背景もあります。そして、ただ良いモノを作って終わりではなく、その先にあるお客様の喜びや、サステナブルな観点から見たファッションのあり方など、社会的なメッセージを会社として伝えていくという目標がありました。

歴史や伝統に捕われない自由な発想を持った人に

──それでは、次に三陽商会という会社についてお聞かせください。2017年より、会社として新しい指針を掲げているそうですが、その内容について教えて頂けますか。

人事部 石橋さん(以下略:石橋):2017年に社長が交代し、大きなテーマとして「継承」と「革新」を掲げています。三陽商会が創業以来75年間培ってきたものづくりのノウハウを「継承」しつつ、「新たな販路」へ、「新たな顧客」へ、「新たな商品/サービス」へと、さらに三陽商会の新しいあり方を模索すること(=「革新」)を意味しています。

──これから入社したい学生に向けて、何か新しい変化がありますか?

石橋:これまでは百貨店への出店が中心でしたが、3月9日に、恵比寿アトレでブラックレーベルとブルーレーベルの複合ショップ、3月29日には、ミッドタウン日比谷に三陽山長初の複合ショップがオープンするなど、新しい取り組みが始まっています。

──新卒採用に関してですが、どのような職種があるのか教えて頂けますか。

石橋:入社後のキャリアプランですが、三陽商会では3つの職種を募集しています。1つ目は社内の業務を担当しながら販売をバックアップする総合職。2つ目は、販売のプロフェッショナルを目指す販売職、そして3つ目はパタンナーやデザイナーなどの技術職があります。

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弊社は、お客様に商品が手に渡る販売を重要視しているので、まずは、販売を経験して頂きます。総合職は1・2年目を通して販売・営業に携わり、3年目以降は様々な部署を2、3年ごとにジョブローテーションしながら30代からは各専門分野へ進むキャリアとなっています。販売職には、販売の仕事を学びながら自分の要望に応じてスキルアップするためのオプション研修があります。また、販売以外にも社内の仕事である販促活動や営業にチャレンジしたい場合は、総合職への職種転換制度を設けています。そのほか、自己申告制度というものがあり、年に1回、自分が働いている職場環境への提言や自身のキャリアプランについて申告する機会があります。

──最後に、若者に向けたメッセージをお願いします。

石橋:ファッション以外に様々なことに興味を持って、三陽商会が築きあげてきた歴史や伝統に捕われない自由な発想を持った人にお会いしたいと思っています。

石田:例えばいまあなたがMDになりたいと思っているのであれば、なったあとに”何がしたいのか”についても考えてみても良いかもしれませんね。

──ありがとうございました。

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