東海地区を拠点とする繊維商社が集まるグループ、NAGOYA ALL FASHION SOCIETY(通称NAFS)とファッション・アパレル業界に特化した求人サイトを運営するREADY TO FASHIONが、共同でトークセッションをオンライン配信にて開催しました。

毎回異なる繊維商社とアパレル企業の担当者をお呼びし、川上・川中・川下の各業種による事業やキャリア、仕事の違いをざっくばらんに話しました。この記事では、12月11日(水)に行われた豊島株式会社、ヒロタ株式会社、株式会社デイトナ・インターナショナルの3社によるトークセッションの様子をお届けします。

登壇企業

豊島株式会社

繊維のトレーディングをメインに扱う専門商社。1841年の創業以来、被服となる素材の原糸や生地の輸入から、それらの販売、製品の企画・制作までを一貫して担っています。また、持続可能なライフスタイルを提案する企業として、さまざまなサステナブル素材や機能素材の開発と提供、そしてテックベンチャーへの投資やスマートウェアの開発を推進しています。

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ヒロタ株式会社

婦人服や子ども服、紳士服、リラクシングウェアの企画・生産・卸売を行う総合アパレル商社。近年ではブランドショップも展開し、製造卸・リテール・海外の3つの柱で事業を展開しています。

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株式会社デイトナ・インターナショナル

1886年創業のアパレル企業。アパレルや家具の企画・製造・販売、海外ブランドの仕入れ・企画・卸を行っています。「LIFE TO BE FREAK-情熱と共に生きる豊かさを、世界に-」をビジョンに、「FREAK’S STORE(フリークスストア)」をはじめとしたブランドを展開しています。

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川上から川下までの企業との出会い

ーまず初めに登壇企業の方の自己紹介をお願いします。

豊島株式会社 江河さん(以下、豊島 江河):豊島株式会社の人事部の江河です。入社は17年目ですが、人事担当になる前は14年間、製品部門で営業を担当していました。当社は繊維を軸とした専門商社で、「ライフスタイル提案商社」として、衣・食・住全般に価値を提供することを目指しています。本日は、商社ならではの視点でお話しできればと思います。

ヒロタ株式会社 三鴨さん(以下、ヒロタ 三鴨):皆さんこんにちは、ヒロタ株式会社の三鴨と申します。当社は製品事業と小売事業の両方を展開しています。

私自身は、入社は18年目で、入社後13年ほど製品の企画や営業を担当した後、直近5年間は採用を中心に取り組んでいます。

株式会社デイトナ・インターナショナル 梅村さん(以下、デイトナ 梅村):こんにちは、デイトナ・インターナショナルで新卒採用を担当している梅村です。当社は「フリークスストア(FREAK’S STORE)」などのブランドを運営し、アパレル小売を基軸にした企業ですが、川中の役割も担っています。

私は2020年に新卒で入社し、入社以来、新卒採用を担当しています。学生の皆さんの視点に寄り添いながら、就活に関する質問やお悩みにお答えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社デイトナ・インターナショナル 川上さん(以下、デイトナ 川上):同じく、デイトナ・インターナショナルで新卒採用を担当している川上です。

私は新卒で入社し、今年6年目になります。実は直近まで「フリークスストア」で店長を務め、メンズの統括や戦略立案を担当していました。3か月前に人事部に異動し、新卒採用を担当しています。川下の現場経験も交えてお話しできればと思います。

ー3社は川中部分で共通点がある一方、各社ごとに特徴や違いもあります。その違いを具体的に教えてください。

ヒロタ 三鴨:当社は川中と川下を担っており、川中が約80%、川下が約20%を占めています。川中では、婦人服、紳士服、子供服、パジャマなど、幅広いアパレル製品を取り扱っています。

また、販売先はアパレル小売店だけでなくスーパーの洋服売り場、ECなど、多様な販路を展開しています。日常生活で身近に感じられる製品を扱うことが当社の特徴です。

豊島 江河:綿花商から始まった当社は、綿花が依然として強みの一つですが、最近では特にODMビジネスが増加し、川中の服の製造やデザイン事業も強化されています。500〜600ものブランドと取引をしているので、お客様向けのビジネスをしながらその情報を活かしてお客様に還元することが当社の特徴です。

また、最近ではワインの卸売りや生活雑貨も手掛け、「何でもやる」という商社のスタンスで、多岐にわたる分野を展開しています。

デイトナ 川上:主力事業は「フリークスストア」で、小売事業が中心です。川中部分で他社と異なる点は、企画からお客様に届けるまでの全てを自社で行っていることですね。お客様に価値を感じてもらえる商品を自社で考え、提供できる点が大きな特徴です。

また、オリジナルではないものの、ライセンスを取得しての商品企画も行っているので、広範な商品展開が可能です。

ー最初の質問に移りたいと思います。なぜ、今の業種の会社を選んだのでしょうか?

豊島 江河:私は業種で会社を選んだわけではなく、会社の雰囲気で決めました。もともと「商社ってかっこいいな」と思っていたのですが、実際に就活を始める前までは繊維商社はあまりみていませんでした。就職活動をしていく中で、実際に面接で出会った社員の雰囲気を見て、この会社で働きたいと思ったんです。

ー17年間続けられているということは、実際にミスマッチも少なかったということですよね。

豊島 江河:そうですね。ミスマッチを防ぐ採用に注力しているので、マッチ度の高い方が入社してくださり、その積み重ねで長年続いている会社だと思っています。

ヒロタ 三鴨:私の場合は、自分の興味を追求する中でファッションや商社といったビジネスに興味を持ち、最終的にヒロタに入社しました。なので、当時は川上・川中・川下といった業種視点では意識していなかったかもしれません。ただ、当時もっと情報収集していれば、各業種にどんな価値があるのかをより深く理解できたのでは、と思っています。

デイトナ 梅村:実は、川下に強いから選んだというわけではなく、アパレル業界に絞らず就活をしていました。たまたまアパレル小売りで選考を受けたのが、デイトナ・インターナショナルだけだったのですが、最終的に選んだ理由は、不安定な世の中で、自分の市場価値を最も早く上げられると思ったからです。

デイトナ 川上:私は梅村とは違い、アパレルに絞って就活していました。当時は特に深い考えもなく、ファッションが好きだったということもあり、セレクトショップで働きたいと思っていました。ただ、その中でも「人と違う何かになりたい」という気持ちが強くあり、早く成長して、自分で意思決定をして裁量権を持って働きたいと思っていました。

その点、「フリークスストア」は、他の会社とは違い、店長に大きな裁量権があります。本部の指示に従うのではなく、各店舗が独自に戦略を立てて、店長の判断で結果が大きく変わる環境に身を置いて、店舗のオーナーのような立場で働けることに魅力を感じ、入社を決めました。

「好き」は仕事のモチベーションになる?

ー就活生の時に一番大切にしていた軸はありますか?

デイトナ 梅村:私は企業文化を重視していました。何をするかよりも、どんな人と一緒に働くかが大切だと考えていたので、企業理念と、実際の社員の方の行動に整合性があるかを重視していました。

デイトナ 川上:先ほどの話とも重なりますが、早くから裁量権を持てることを大事にしていました。できるだけ早く大きな仕事を任され、結果を出したい思いが強かったので、自分の好きなことをできる場所を探していました。もう一つは、言語化しづらいのですが、選考後に感じるワクワク感や、この人たちと働いたら楽しそうという直感も大切にしていました。

ヒロタ 三鴨:就職活動をしていた時は、地元で活躍したい思いが強かったです。ただ、今振り返ると、アパレル業界だけでも多種多様な業種や企業があるので、もっと広い視野で見るべきだったなと思っています。

豊島 江河:私は直感を大切にして就活を進めました。例えば、友達になりたいと思う時は、基本的には直感であり、ロジックではないですよね。それを会社選びにも当てはめ、会社の雰囲気やそこで働いている人で決めようと思いました。なので、似たような会社を受けるのは合わないなと感じ、業界ごとに1社だけを受ける形で進め、商社は豊島だけ受けることにしました。

ーファッションが好きという気持ちが根底にありつつ、どんな未来が待っているのかというワクワク感も大事ですよね。では、好きなことを仕事にするのは良いことか悪いことか、という問いについて、皆さんはどう考えていますか?

デイトナ 梅村:私の考えとしては、好きじゃないことを仕事にしてうまくやっていけるほど、世の中は甘くないと思っています。

ただ私自身、好きな洋服に携わることでワクワクしますし、頑張ることも苦にならない。むしろ主体的に自分の意思で行動したくなります。これができるのは、好きなことに関わっているからこそだと思います。好きなものがあること自体が価値だし、それを仕事にするのもいいこと、というのが私の考えですね。

ヒロタ 三鴨:きっかけとして、ファッションが好きという気持ちがあるのはいいことだと思います。ただ、年齢やステータスが変わると、ずっと好きかどうかも変わってくることがあります。私自身、就活当時はファッションが好きでお金もかけていたのですが、ライフステージが変わって、自分が大切にしていることも変化してきました。

ただそんな中でも、会社やメンバーに重きを置いていると、長く仕事を続ける原動力になります。そうすることで、自分の力を発揮できる環境はどんなところか、ポジションは何かなどにも気づくことができるのではないでしょうか。

豊島 江河:私も三鴨さんの意見に近いのですが、答えはイエスでもノーでもなく、好きという気持ちがモチベーションにはなり得ると感じています。

モチベーションの源泉は、お金でも一緒に働く人でもいいと思っています。私自身、雰囲気がよかったから入社した、ということもあるので、それが一番のモチベーションでした。ただ、モチベーションだけで全てを決めるのではなく、より多くの要素があるのが仕事だと思っています。

不文律を疑え

ー業界の課題と、それに対して新卒の皆さんに期待していることはありますか?

デイトナ 川上:業界全体で課題は多いですが、特に私たちが注力しているのは、店舗で提供する体験価値をどれだけ高めていけるかということです。

新卒の皆さんに期待するのは、自分の意見やこだわりなどビジョンをしっかり持っていることです。バランスの取れた人よりも、何か一つの分野で秀でている方だといいなと思います。また、仕事には時に苦しい瞬間もあると思いますが、前向きで楽観的な姿勢を持ち続けられることも大切ですね。

ー川上さん自身も尖っていると言われたことはありますか?

デイトナ 川上:結果を出すと決めたら、他の人の意見をあまり聞かなくなることもあります(笑)。良くない部分でもあると思うのですが、自分で決めたことは徹底的に取り組み、周りに何を言われても自分のやり方を貫こうとするタイプだと思います。

ヒロタ 三鴨:小売や卸売に限らず、ファッション業界全体を元気にすることが大切だと思っています。小売店が好調だと、私たち卸売企業も好調になります。また、国内だけでなく、海外での販売も考えています。

出会いたい新卒の方は、尖った個性を持っている方ですね。ただ、全員が同じような尖り方をしているとバランスが難しいので、異なるタイプの人が組織にいることが大切です。私のように、何でもまんべんなくやるタイプの人もいれば、川上さんのような尖ったタイプの人も必要です。そうした多様な人が集まることで、強い組織が作れるのではないでしょうか。

豊島 江河:業界としての課題は、ファッション業界が与える環境負荷の高さです。それに加え、日本市場では少子高齢化と人口減少が影響して、右肩上がりにはなりません。

こうした状況で、素直で明るくエネルギッシュな人に入社してほしいと考えています。弊社の代表が「不文律を疑え」とよく言っているのですが、前年踏襲や現状維持ではなく、自由な発想や新しい挑戦ができる人だと活躍できると思います。

ー共通するキーワードとして「好奇心」があると感じました。皆さんにとって「好奇心」とは何でしょうか?

ヒロタ 三鴨:好奇心という言葉だけでは足りない部分があると感じていて、最近は学生との会話で「知的好奇心」という言葉をよく使っています。その知的好奇心を素直な気持ちで大切にすることは、どんな会社でも活躍するための土台になると思います。

ー壁にぶつかった時、乗り越えるための力のようなイメージですね。

ヒロタ 三鴨:ファッション業界ではマーケットが常に変動しているので、新しい情報が次々と更新されています。そのため、常にアンテナを張っている必要があります。ドライな言い方をすれば、これを嫌だと感じる瞬間があると、少し厳しいかもしれません。

逆に、もっと知りたい、楽しいと自然に思える人は向いていると思います。ここにいらっしゃる方々も、知りたいという気持ちから集まっていると思うので、その点はクリアされていると思います。その上で、知識を深めるほどより活躍できるのではないでしょうか。

豊島 江河:「奇」という字から、誰もやっていないことに興味を持ち、そこに向かっていく心や力が好奇心だと思います。私も自分と全く違う人に会うと興味が湧くので、その感覚も好奇心の一つだと思います。

デイトナ 三上:好奇心がある人は、情報量と「自分はできる」と思える自己効力感をしっかり持っていると思います。情報をキャッチできる環境に身を置き、それを活かしてアクションを起こし、自分なら面白いことができるというワクワク感を持つことが、好奇心を生む要素だと思います。

ー続いて質問にお答えしていきたいと思います。まず最初は、面接の際にどんな部分を見ていますか?という質問です。就職活動で大切にしてほしいことなどについてもお聞きできればと思います。

豊島 江河:第一印象として、見た目や直感は大切にしています。ただし、かわいさやかっこよさという意味での見た目ではなく、見ているのは自信があるかどうか。自信は表情や見た目に現れると思うんです。

あとは、質問に対する論理的な回答です。どちらも完璧である必要はありませんが、苦手な部分があっても一定のレベルは必要だと思っています。

デイトナ 梅村:一言で言うなら、「人間味」を大切にしています。会社は結局、人の集まりで、仕事も人と人との関わりです。なので、愛される人や信頼を得る人が重要だと考えています。人間味があり、愛されそうな印象を持てる方だといいのでは。

面接では、面接用に話すのではなく、普段の話し方からお客様との接し方が自然に想像できる方だといいなと思いますね。

ヒロタ 三鴨:私も皆さんと同じ考えです。新卒採用でスキル面を評価することは難しいので、ポテンシャルや人柄が重要です。そのため、できるだけオープンなコミュニケーションを心がけ、お互いに理解を深められるようにしたいと思っています。

自分らしくいられる企業を選ぶ

ー10年後、何をしていると思いますか?

ヒロタ 三鴨:10年後には51歳になります。仕事面では、引き続き採用担当として、会社にとっていい人材を集め、会社と共に成長していく組織作りに力を入れていきたいです。

プライベートでは、小学生の子ども2人が独立する年齢に近づいているため、業務をしっかりこなしながら、東京の拠点にも時間を割ける環境を整えたいと思っています。将来的には、岐阜と東京を行き来できる仕事のスタイルが理想ですね。

豊島 江河:将来を決めるタイプではないですが、その時々に自分や家族が幸せであればいいなと思っています。また、採用した人たちが成長していく様子を見守り、応援していきたいですね。30代後半ですが、負けじと成長することが私のスタンスだと思っているので、他の人に向けたベクトルを自分にも返していくイメージで取り組んでいます。

デイトナ 梅村:1年前の自分が、今の自分を予測できていたかというと、全くそうではなかったのが正直なところです。例えば、自分が予想していなかったことができていたり、思いもよらない役割を担っていたりすることに気づきます。

来年の自分が何をしているかも分かりませんが、むしろそれが楽しみでワクワクしています。希望としては、採用した方たちが成長していく様子を見守り、サポートできるような人になっていきたいですね。

デイトナ 川上:漠然と、もっと人のためになりたいと思っていますし、その範囲を今後ますます広げていきたいと考えています。具体的には、人数的な広がりや、より深い組織作りができるようになればいいなと思っています。

ー最後に、学生の皆さんにメッセージをお願いします。

豊島 江河:自分らしくいられる企業を選ぶのが一番だと思います。悩むこともあるかと思いますが、企業と話したり、イベントに参加したりして、最適な企業を見つけてみてください。くれぐれも皆さんも体調に気をつけて、楽しみを見つけながら、さまざまなことに挑んでほしいと思っています。

ヒロタ 三鴨:業界を盛り上げていきたい気持ちは強いので、同じ志を持つ学生さんとぜひマッチしたいと思っています。今回の参加企業をはじめ、当社や他の地方企業にも興味を持っていただけたらうれしいです。また別の機会にお会いできることを楽しみにしています。

デイトナ 梅村:小売企業以外の方々と実際に比較しながら話す機会は、私自身も貴重で新鮮でした。学生の皆さんにとっても、このような機会がプラスになればうれしいです。弊社は2月から選考を開始します。少しでも興味を持っていただけた方や、もう一度面接で話したい方がいれば、お会いできることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。