【連載|unsung hero vol.1】大阪の堺のデニムメーカー「スポテッドホースクラフト」オーナーにインタビュー

【unsung hero|アパレル産業を支える製造業】
vol.1:スポテッドホースクラフト 代表取締役 大園英樹

新連載企画「unsung hero」とは。

アパレル=販売員、MDなどの花形職業に憧れがちな学生と、アパレル業界の落ち込みを意識しアパレル業界への就職を前向きに考えることのできない学生の両者に、アパレル産業の『縁の下の力持ち(=unsung hero)』である、川上~川中の企業のインタビューを通じて、業界の幅広さを伝える企画だ。第1弾となる今回は、「Yohji Yamamoto homme」のラインの一部も手掛ける、デニムメーカー「スポテッドホース・クラフト」の代表取締役である大園英樹氏に、同社のブランド「OZONO」を中心に話を伺った。


大園英樹

デニムメーカー「スポテッドホースクラフト」の代表取締役社長。1966年生。大阪府岸和田市出身。趣味はサーフィンとサーフミュージック。19歳からDCブランドの販売員やクロージングメーカーの生産管理を経て、岡山の工場にて、縫製職人の修行。その後、1996年に独立。

 

スポテッドホースクラフト

デニム製品のユーズド加工を手作業で行う企業。メーカーからの委託加工と同時に、オリジナルブランドも展開している。「ヒゲやアタリなど、穿き方で出てくるデニムの癖」を1本1本手作業することで、再現する。それは、まるで、「何年、何十年と穿いたかのよう」だ。

 

ーーブランドコンセプト「研き上げた本質」と「創り上げた良質」についてお聞かせください。

「研き上げた本質」とはどういう意味ですか。

そもそもデニムとは、ワークウェアとして追及された機能美を持つものです。そんなデニムの本質は、ビンテージの何年、何十年も前の物であっても、現代人がカッコいいと感じるものそれが、デニムの本質だと考えています。しかし、現在のデニムパンツは、ワークウェアとしてのデニムよりも強度が求められるなど、デイリーウェアへシフトしています。このように、本質を研くことで時代に合ったデニムを形作っていくことを意味しています。

「創り上げた良質」の意味はどういったものですか。

良いものを作ろうと考えると、必然的に生地だけでなく、縫製にもこだわり、クオリティを上げる必要があります。お客様一人ひとりが、そのデニムを実際に履くことを想像し、シワやヒゲの一つひとつを手作業で行なうことで、お客様にとって本当に良いものを提供したいと考えています。

 

ーー展開しているブランドについてお聞かせください。「OZONO」とはどういうブランドでしょうか。

ブランド「OZONO」は今年4月で、8年目を迎えました。ブランド発足の経緯は、縫製工場から、仕上がってきたデニムに満足できなかったことです。工場での生産は、予算とクオリティのバランスを保つため、量産が難しかったので、自分で企画から製造、販売まで行なうことにしました。それが、「OZONO」です。

 

ーー「クルージングシリーズ」についてお聞かせください。

「コートだけどカジュアルに」「複雑なデザインだけど、落ち着いている雰囲気」

きっかけは自転車の買い替えです。今、乗っている自転車はフルオーダーで、テーマは「最強ママチャリ」です。ちょっと出かけるとき、ちょうど良いデザインと機能性の両立を目指しました。スポーツウェアでもなく、ツイードランのように張り切った服装でもなく、あくまで目指すのは”等身大”のデイリーウェア。和洋折衷どこのジャンルにも属さない物、それが「クルージングシリーズ」です。このコートは、ベンタイル生地を使用することで、防水性に優れているので、日用的にも便利です。

 

【クルージングシリーズとは】

大園氏が右下の写真のようにこだわった自転車を購入したことをきっかけに、本格的なアウトドアアウターや、サイクリング用の高性能ウエアではなく、『最小限の機能でシンプルなデザインの服』を作ろうと考えたのが始まりだそうだ。

また、日常でサラッと着ることができるポップさも出したい。そのために、デザインの構造はシンプルにし、防水性や大きなフロントポケット、少し長めに設定したそで丈(自転車の乗車姿勢で腕を伸ばしても、手首が出ないようにするため)などの高い機能性がある。そして色使いをクレイジーパターンにすることで遊び心を演出。

そんな、機能性とシンプルなデザインの中にある遊び心と、大園氏のこだわりが満載なのが「クルージングシリーズ」だ。

 

ーーデニムの話に戻って、特殊技術「マジックウォッシュ」についてお聞かせください。

「できるだけリアルに」「まるで誰かが履いていたような」「人の温もりを感じる」
このようなリアルを最大限追及するための技術が「マジックウォッシュ」です。デニムの線や色落ちがただ単なる、横線に見えるか、味のあるヒゲやシワに見えるかは職人の想像力によって、大きく差が出ます。そこで僕は,まず、市販の薬品を購入し、デニム生地の色が落ちるものを探すことから始めました。研究を始めて25年が経った今思うのは、もっともっと上手く再現したい。品質向上にゴールはありません。

 

【マジックウォッシュとは】

一般的なユーズド加工・ダメージ加工とは違い、電動器具を一切使用しないオールハンドメイド。

繊細な仕上がりを再現するために、水で薄めたブリーチ剤を染み込ませ、ヒゲのラインなどを再現していく。この作業を5回から7回繰り返すため、乾燥時間を除いても、5時間以上かかる。この作業によって、生地の傷みを最小限に抑え、繊細な仕上がりが実現している。

さらに、もうひとつ重要な作業が下手間だ。下洗いや揉み込み、毛焼きなどデニムならではの作業を終えることで、初めてマジックウォッシュの工程に入れる。

 

 

ーーYohji Yamamoto hommeとのコラボについてお聞かせください。

Yohji Yamamotoさんとのコラボは、2012年のコラボから現在も継続しています。今ではOZONOブランドもYohji Yamamotoファンにも認知してもらい、来店してくれる人もいます。

コレクションに出展する際には、納期が縫製を開始してから、2か月という短期間にも関わらず納期遅れができない中で、生産に追われることもあります。ですが今では、お互いに信頼関係を築けていると考えています。この関係は今後も続けていきたいですね。

 

ーー今後の展望を聞かせてください。

2019年は、一時休止していた「spotted horse」を復活させます。その後、2020年は「デニムオリンピック」、2025年に「デニム万博」などを開催したいと考えていて、現在プロジェクト進行中です。

 

ーー今、若者に伝えたいことはありますか。

何事にも本気で取り組んでほしいです。

自分だけのこだわりを持って、モノの本質を見つけてほしいと思います。例えば、白いTシャツでも、多少高くても良い物を買ってほしいと思います。その中で、もしかしたら、失敗することがあるかもしれませんが、僕は良い物を買って後悔することはないと考えています。それよりも、欲しくもない物や必要のない物を買うことで後悔することの方がもったいないです。なので、若いうちに好きなものをとことん追求しどんどん失敗することで、モノの本質を見つけてほしいと思います。

 

 

有限会社 スポテッドホース・クラフト

住  所:大阪府堺市堺区二条通2-17

電  話:072-229-8155

営業時間:10:00~18:00

定  休  日:水曜日(祝日を除く)

公式HP

フェイスブック

 

現在、多くの学生がアパレル業界に対し、”憧れ”もしくは、”失意”や”不安”など抱く感情は二分化しているように感じる。この企画を通し、前述のような学生にアパレル業界には、服を売る会社だけでなく、糸や生地を作るメーカー、それらを輸入する会社などが存在し、業態は多岐にわたることを知ってもらいたい。それによって、製造業や卸売業としての、アパレル産業に関心を持つことで業界の活性化の一端を担えればと思う。


text:Yuto Kubo(READY TO FASHION MAG編集部)

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