ファッション業界で転職をした方に、転職の経緯や就職活動について聞く、匿名インタビュー連載企画。今回は、大手セレクトショップで販売経験を積み、アパレル企業が運営するウェブメディアでコンテンツ制作として転職したAさんに、お話を伺いました。

社内で順調にキャリアを築きながらも、「このままでいいのか?」と今後のキャリアへの違和感を感じたというAさん。販売職からメディア職種へと軸を移すまでの葛藤や、転職までの理由とは。

順調なキャリアの裏で感じた焦り

──これまでのキャリアを簡単に教えてください。

大学2年生の時からアルバイトとして働いていた大手セレクトショップに新卒として入社し、販売職として5年ほど働きました。その後、古着屋へ転職し、1年間販売に携わった後、現在はアパレル企業が運営するウェブメディアでコンテンツ担当として働いています。

──ファーストキャリアは大手セレクトショップ。もともとセレクトショップが好きだったんですか?

実は、特定のブランドやセレクトショップが好きだったわけではありませんでした。高校生の頃までサッカーをずっとやっていて、プロを目指して寮生活を送っていました。ですが、インターハイの時期に、怪我などいろいろな事情が重なってサッカーを諦め、大学進学することになったんです。

大学2年の時、昔から服が好きだったのと、アパレルでアルバイトしている姉からのアドバイスもあり、勢いでブランドに応募したら受かったんです。それまでアルバイトはお金を稼ぐ手段でしかなかったんですけど、得るものがなくて物足りなさを感じていて。それを変えたかったという思いもありましたね。

──新卒でそのまま入社した理由は?

他のセレクトショップも受けていて、3社から内定をいただいていました。ただ、他社に入社するより、これまでのスキルを活かした方がキャリアアップでも有利になると思い、そのままアルバイトで働いていたセレクトショップに就職しました。

入社後は、通常店舗と旗艦店2店舗で経験を積みました。服に詳しいお客様と話すことで、一人で考えていたら凝り固まっていたファッションの感性がより一層柔軟になっていった気がします。そういったファッション好きな方がリピートしてくださったのも、接客をする上での喜びでしたね。

──旗艦店を2店舗も経験。

タイミングもありましたが、社内で推薦がないとその店舗には異動できなかったので、上司がフックアップしてくださいました。自分で言うのもおこがましいですが、順当にいったら3年後にはバイヤーになれていたと思うんです。でも3年後か……と思ってしまって。社内ではキャリアは順調。でも、それはあくまでいち企業の中だけであって、自分にとってそこでキャリアを積むことに納得しきれない思いを抱き始めたんです。

──順調なキャリアの裏側には葛藤もあったんですね。

販売スキルしか身に付いてないのでは、という不安や、方向性を変えてみたい思いがありつつも、なかなか動けていない状況が続いていました。ただ、30代になってライフステージが変わってしまったら、今よりもアクティブに動けなくなってしまうと思い、勢いで転職を決めました。

将来的に自分の店やブランドを持つなど、いずれはサプライヤー側に回りたいと思っていたので、自分が主体的に仕入れたものを販売できる環境で挑戦しようと思い、古着屋に入社しました。

やらずに後悔より、やって後悔

──古着屋に転職してどうでしたか?

バイイング業務のほか、VMDなどもトータルに挑戦できる環境でした。ところが、古着屋の諸事情でコンスタントにバイイング業務ができないと分かり、1年で古着屋を退職しました。

──そこからなぜメディア職に?

今までのキャリア形成は、良くも悪くも服に固執してた部分が大きかったので、その軸をあえて逆にしてみてもいいのでは、と思ったのがきっかけです。ウェブ関係の職種ではあるものの、ファッションにも関わる仕事で全く畑違いというわけではなく、挑戦しやすそうだと思ったんです。

あとは、子どもの頃から文章を書くのが好きだったのですが、大学時代には自分の論文を授業でピックアップしてもらったり、セレクトショップ時代にはオンラインサイトに掲載するコーデ紹介やブログ記事をプレスの方に文章を褒めていただいたりと、書いたものを評価してもらえる経験もありました。そうした背景から、文章力を活かせる仕事であることも転職を決める上での大きなポイントになりましたね。

──これまでの成功体験がつながっているんですね。

ライターをやることに対しての不安は特になかったです。適応力には自信があるので、モジモジ考えるより1回やってみようと思って。

──面接で評価されたポイントはどんなところでしたか?

対策らしい対策をしていなかったので、面接ではあまり手応えがなかったんです(笑)。私の場合、型にはめてインプットすると、想定外の質問が飛んできた時に固まってしまうので、その場で考えながら構造的に話すようにしていましたね。

──働き始めてから評価された点は?

業務スピードの早さは評価してくださっていると思います。仕事自体が早いというわけではありませんが、記事ごとに優先度を見極めて効率的に対応したり、一つひとつの作成時間を5〜10分ほど減らしたりと、ちょっとした工夫で変わると考えています。

──ファッションに関わる仕事ではあるものの、メディア関連の職に就いたことで、方向性は変わりったように感じます。前職で抱いていた、サプライヤー側に行きたいという思いは今もお持ちですか?

古着屋で働いた経験を通して、個人事業で在庫を抱えることのリスクを肌で感じました。ファッション一本に絞ってしまうと、それがうまくいかなかった時に身動きが取れなくなる危険性もあるなと。

好きなことでジリ貧にはなりたくないので、ファッション以外の軸として、ウェブデザインも並行して勉強しています。

あくまでアパレルを軸としつつ、その掛け算で自分のできる領域を増やしていけたらと思っています。

──ありがとうございます。最後に読者の方にメッセージをお願いします。

「やらずに後悔するより、やって後悔」に尽きると思います。コンフォートゾーンに留まりたい気持ちも分かりますが、失敗したって死ぬわけじゃないし、だったら思い切ってそこから抜け出した方が新しい気づきを得られると思うんです。

何事もまずはやってみる、そんな行動力を大切にしてみてください。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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