
恩河壮琉(おんが・たける)2004年生まれ。AOYAMA FASHION ASSOCIATION 代表。青山学院大学 総合文化政策学部3年。スチール撮影やデザインを担当し、デザインチーフとしてクリエイティブ面からチームをけん引している。
塚本香乃(つかもと・かの)2005年生まれ。AOYAMA FASHION ASSOCIATION 副代表。青山学院大学 総合文化政策学部3年。スチール・ムービー撮影の進行管理や会計管理を担当し、ディレクションチーフとして団体全体の進行を担っている。
青山学院大学を拠点とし、洋服のデザインから生産管理、販売まで一貫して手がける服飾学生団体「AOYAMA FASHION ASSOCIATION」(以下、AFA)。2018年に設立された同団体は「プロと共に最高品質のファッションを作る」をコンセプトに掲げ、学生主体でのものづくりを通して、業界や社会との新たな接点を創出することを目的に活動しています。
今回は、最新コレクション「Undo」を発表したAFAのメンバーにインタビュー。コレクション制作のプロセスやテーマに込めた思い、そして団体での経験について話を伺いました。
ファッションショーを行わない、AFAのもの作り
──「AOYAMA FASHION ASSOCIATION」について、活動内容を教えてください。
恩河:青山学院大学発の学生服飾団体で、主に二つの軸で活動しています。一つは、年に1度のコレクション制作、もう一つは企業と協働してアパレル企画などを行うクライアントワークです。コレクションではテーマ設定から洋服のデザイン、さらにスチールとムービー制作など演出部分まで、プロの方々の協力を仰ぎながら学生主体で手がけています。そして、その集大成として毎年3月に展示会を開催しています。現在、部員の約9割が四年制大学に通う学生で、専門学生や短大生も在籍しています。
──服飾学生団体は、美術大学や専門学校に通う学生が多いイメージがあります。四年制大学の学生が半数以上を占めるのは意外ですね。
恩河:AFAでは、コレクションやクライアントワークの際に、デザイン画を自分たちで制作し、その後の製造工程はOEM企業に委託しています。そのため、縫製やパターンなどの専門知識がなくても服作りに関われる点が特徴です。その意味で、四年制大学で服飾を専門的に学んでいない学生でも参加しやすい団体だと思います。
実際、私自身も特段、服が好きだったわけではありません。むしろ、クリエイティブな発想を形にできる場所を探していました。縫製を中心に洋服を作りたいというよりも、企業とのコラボなどを通じて社会と関われた方が後々何かに活かせるのではと。
──当初はファッションショーを行う団体だったそうですね。
恩河:2020年にリブランディングを行い、ファッションショーを実施しない団体へと方向転換しました。AFAでは、学生団体でありながらも企業やプロフェッショナルと協働することで、クオリティを担保しながら独自性のあるアウトプットを目指しています。
塚本:作品の扱い方にも特徴があります。他団体の場合、ファッションショーのための一点物として制作されることが多いですが、AFAではクライアントワークはもちろん、コレクション作品も展示会で受注販売しています。そのため、自分たちの思想を反映したデザインでありながら、日常的に着用できるリアリティのある服づくりを意識しています。
──体制としてはどんな部門に分かれているのでしょうか。
塚本:2〜3年前までは部門ごとに分かれて進めていましたが、現在はデザインやディレクション、展示会の演出などを部員全員が横断的に関わる形で進めています。なので、体制を固定せず、その時々の状況に応じて柔軟に動いている状況です。
──これまでに携わってきたクライアントワークについて教えてください。
塚本:昨年から今年にかけて、スーツの「アオキ(AOKI)」やスポーツアパレルの「ナイキ(NIKE)」、オフィスカジュアルの「テチチ(Te chichi)」などとコラボレーションを行いました。「アオキ」や「テチチ」では、スーツやオフィスカジュアルの洋服を実際にデザインさせていただき、「ナイキ」では、新作シューズに合わせたスタイリングを提案をしました。
恩河:アパレル企業以外とも協働しています。例えば昨年は、漫画『北斗の拳』の40周年プロジェクトとして、記念展示会でグラフィックTシャツを制作・販売しました。
──クライアントワークと言っても、表現の幅が広いですね。
恩河:そうですね。個人的に、これまでのクライアントワークで印象に残っているのは、『北斗の拳』の企画です。実際の漫画のコマを切り抜いてグラフィックを作成するのがとても楽しく、気づけば徹夜してしまうほど夢中になっていました。父が原作のファンで全巻持っていたこともあり、作品を改めて読みこんだ上で好きなキャラクターをベースにデザインを考えました。
塚本:私は「ナイキ」とのコラボ。新作スニーカー「AIR MAX Dn8」の内部展示会に向けてスタイリングを担当しました。その際に、スタイリングだけでなく、私たちがデザインした洋服を実際に制作していただき、それをAFAの過去のコレクションアイテムと組み合わせて自由にスタイリングさせていただきました。
展示会では店舗スタッフの方々から「こういうスタイリングの組み方もあるのか」と参考にしたいという声をいただき、大きな自信につながりました。
──企業やブランドと協働する際、方向性のすり合わせは難しいように感じます。
塚本:企業側が私たちに求めていることと、自分たちが実現したいことの間に相違がある場合もあるため、調整の難しさを感じることはあります。
もちろん企業の方々も私たちの意図を汲み取り、実現できるように動いてくださいます。ただし、最終的には妥協点を探ることもあります。その中でも最大限いいアウトプットにできるよう、折衷案や新しい提案を出しながら、双方にとって価値のあるものを目指しています。
恩河:個人的には、ある程度の制約がある方がクリエイティブは生まれやすいと思っています。制限の中で試行錯誤することがむしろ面白いですし、自分だけのエゴに偏らず、多くの人に評価してもらえるもの作りにつながると思っています。
──協働する中で、企業が学生に求めていることは何なのでしょうか。
塚本:企業の方からは「若い方がどう考えているのかを知りたい」という意図でお声がけいただくことが多いです。ただ、私たちは服飾団体という特性上、必ずしも若者の考えを代弁しているとは限りません。そのため、単純に若者代表として意見を伝えるのではなく、リサーチを行った上で、より広い視点からもの作りに反映するように心がけています。
コレクションテーマは「Undo」。不完全さを美しさに
──コレクション制作はどのように進めていますか?
塚本:コレクションの土台となるコンセプトは、基本的にデザインチーフである恩河が決定します。決定したコンセプトは6月に部内で発表し、その後、各チームに分かれてコンペ形式でルックを提案。その中からルックの選定を行い、約3〜4ヶ月ほどで全ルックのデザインを決定します。
その後、OEM企業のパタンナーへデザインを展開し、年明けにサンプルが届きます。そこから修正を重ねながら完成度を高めていきます。同時並行でスチールとムービーの制作も進め、2月末に撮影を実施。最終的に、3月に開催する展示会に向けて会場構成や演出、SNSでの発信方法などを決定する流れで進めています。
──コンセプトを決めるにあたって意識していることは?
恩河:まず意識しているのは、過去のコレクションとは異なるものを生み出すことです。「去年よりもいいものを作りたい」という思いを持ちながら、より高い完成度を目指しています。私はAFAに入部して3年目になるため、これまでのコレクションの要素を踏まえつつ、自分自身が魅力を感じる世界観をふんだんに盛り込んだコレクションテーマにしたいと考えました。
──2025-2026のコレクションテーマについて詳しく教えてください。
恩河:今回のテーマは『Undo』です。「Undo(アンドゥ)」は、「do(する)」の否定形というよりも「un-(反対・取り消し)」と「do(する)」が組み合わさった動詞で、「元に戻す」「(結び目などを)ほどく」という意味があります。これまでAFAで活動する中で、前代表と意見が食い違うこともあり、団体の存在意義を考えることもありました。
その過程で、AFAという団体に対する自分の考え方を一度リセットしたいという思いがありました。そこで、新しい自分たちなりの美しさの定義や、固定観念にとらわれない解釈を形にしたいと思い、このコレクションテーマに至りました。
──新たに考える、AFAの美しさとはどのようなものでしょうか。
恩河:これまでのコレクションのアウトプットには、どこか硬さを感じる部分がありました。というのも、一般的にデザインから縫製まで自分たちで行う場合、手作業による不完全さが生まれると思うんです。ですが、AFAの場合はOEM企業に製造を委託しているため、量産体制や品質は担保されている一方で、どこか機械的な印象が生まれてしまう側面もありました。
そうした背景から、今回のコレクションでは、「不完全であること」そのものを美しさとして捉えています。破れたような質感など人の手が加わった痕跡をあえて取り入れることで、ハンドメイドの文脈を感じられるコレクションになっています。
──細部にもテーマが反映されているんですね。
恩河:これまではロゴなどに汎用性の高い定番フォントである、ヘルベチカを使用していました。機械的でモダンな印象のフォントですが、今回のコレクションテーマをあえて手書きで表現するなど、細部まで『Undo』の思想を反映しています。
これまでのAFAは少し保守的な部分もあったので、今回のテーマを通して一度リセットしてもいいのかなと。


──今回の展示会でAFAを引退されるそうですが、AFAでどんな学びや発見がありましたか?
恩河:メンバー同士の価値観の違いに向き合いながら制作を進めることで、自分自身の成長につながったと思います。服作り自体は、個人でも行うことができますし、他の服飾団体では一人1ルックを制作し、それらが集まってファッションショーを構成することが多いです。ただ、AFAの場合は、一つの服を制作する際に数人のチームで行っています。
その分、意見が衝突することもありますが、一つの作品を全員で作り上げるからこそ、異なる意見や価値観の共存可能性を模索することになります。そんな経験は、自分の視野を広げると同時に、大きな財産になったと感じています。
──コミュニケーションのあり方を考える時間にもなったんですね。
恩河:私が3年間で学んだことは忍耐力ですね。コンセプトや要件を満たすのはもちろんですが、かっこいいものを作ろうとすると、必ず壁にぶちあたる瞬間があります。そうした状況でも妥協せず、納得できる形になるまで作り直す気力や粘り強さの大切さを実感しました。
──クリエイティブのアウトプットの形にはこだわりがないとおっしゃっていましたが、この経験を通して新たな発見はありましたか?
恩河:制作の過程でIllustratorやPhotoshopを使用する機会が多く、使いこなせるようになったのでデジタル上でのデザインにも興味を持つようになりました。
また、コレクションの中でジュエリーラインがあり、シルバーアクセサリーの工場と連携してジュエリー制作にも携わりました。その経験を通して、自分は意外と細かい作業も得意なんだと気づくことができました。そうした発見も含めて、忍耐力を楽しさに変換できた感覚があります。結果として、自分に合ったアウトプット方法を見つけられたと思います。
──今後、団体として挑戦したいことはありますか。
恩河:ファッションショーを行わない団体として活動してきましたが、部員の中にはファッションショーに興味を持っている人も一定数います。体制としてはまだ整っていない部分もありますが、来年度はファッションショーの実施にも挑戦できたらと考えています。
その一歩として、SHIBUYA FASHION WEEKへの出展も控えています。今年は販売のみですが、来年度はぜひファッションショーを実施する側として参加することを目標にしています。
──最後に、AFAに興味を持つ学生にメッセージをお願いします。
塚本:AFAは、やればやるほど楽しさが増していく団体だと思っています。もちろん辛いこともありますが、得られる経験やスキルは非常に大きいです。大学生活で何か一つ本気で取り組みたいことがある方には、ぜひAFAという選択肢を考えてみてほしいです。
恩河:必ずしも、ファッション好きである必要はありません。クリエイティブなことに幅広く興味がある人にとって、ファッションはアウトプットの媒体の一つになり得ると思います。
AFAには、デザインやクリエイティブの力を軸にクオリティの高いもの作りができる環境があります。何から始めればよいか分からないけれど、クリエイティブな発想でもの作りをしてみたいという方には、ファッションだけでなくグラフィックや撮影ディレクションなどさまざまな分野に関われる機会があります。そうした意味でも、ぜひ多くの方に参加してもらえたらうれしいです。

《詳細》
日程:2026年3月20日(金)〜22日(日)
場所:CONTRAST 〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1丁目49-4-1F & B1F
時間:11:00 – 18:00
入場:無料
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