雑誌や広告、テレビ、ECサイトなどで、衣装やコーディネートを手がけるスタイリスト。ファッションが好きな方にとって、一度は憧れる職業の一つではないでしょうか。

しかし、実際にはどんな仕事をしているのか、どんなスキルが必要なのか、年収やキャリアパスなどについて詳しく知る機会は多くありません。

この記事では、スタイリストの仕事内容から求められるスキル、年収、キャリアの築き方まで詳しく解説します。スタイリストを目指している方や、ファッション・アパレル業界の仕事に興味のある方はぜひご覧ください。

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スタイリストとは?

スタイリストとは、雑誌や広告、テレビ、ブライダルなどで、モデルやタレントなどの衣装をコーディネートする職種です。案件ごとのコンセプトやクライアントの要望に合わせてスタイリングを行い、ブランドや商品の魅力を引き出す役割を担います。

活躍の場は幅広く、ファッション誌や広告を中心に活動する人もいれば、ファッションショーやブライダルなど、特定の分野を専門とするスタイリストもいます。

スタイリングでは、服や小物の知識だけでなく、素材や色、シルエットの組み合わせを考えるセンスや、クライアントの意図を汲み取る力が欠かせません。また、モデルや出演者の個性やブランドイメージを理解し、それらを最大限に引き立てるコーディネート力も求められます。

働き方としては、スタイリスト事務所に所属して活動するケースや、フリーランスとして活動するケースがあります。一般的には、有名スタイリストのアシスタントとして3〜4年ほど現場経験を積み、その後に独立してフリーランスとして活動する人が多く見られます。一方で、スタイリスト事務所に所属しながら、さまざまな案件を担当してキャリアを築く人もいます。

スタイリストの働き方

スタイリストの働き方は、大きく分けて「スタイリスト事務所に所属する」と「フリーランスとして活動する」の2つがあります。それぞれの仕事内容や働き方、メリット・デメリットが異なるため、自分にあったキャリアを選ぶことが大切です。

スタイリスト事務所に所属する

スタイリスト事務所に所属する場合、主に広告やファッション雑誌、テレビ番組などのスタイリングを手がけることが多く、事務所を通じて案件を担当します。

事務所に所属することで、さまざまなクライアントの案件に携われるほか、仕事の獲得やスケジュール管理、報酬の交渉などをサポートしてもらえるため、スタイリストとして経験を積みやすく、安定したキャリアを築きやすい点が魅力です。

フリーランスとして働く

フリーランスは、特定の企業や事務所に属せず、自ら仕事を受注して活動する働き方です。仕事量やスケジュールを調整しやすく、得意分野や興味のあるジャンルの案件を選べる自由度の高さが魅力です。

一方で、仕事は自分で獲得する必要があるため、営業活動や人脈作りも欠かせません。また、独立直後は収入が安定しにくいこともあり、請求書の発行や経費・交通費の生産などの事務作業も全て自分で行う必要があります。そのため、スタイリング以外の業務も多く、自己管理能力や体力が求められる働き方と言えるでしょう。

スタイリストの仕事内容

スタイリストの仕事は、クライアントの要望に合わせてコーディネートを考えるだけではありません。打ち合わせから衣装の手配、撮影当日のスタイリング、撮影後の返却作業まで、一連の行程を担当します。ここからは、スタイリストの主な仕事内容をご紹介します。

事前打ち合わせ

スタイリストは、クライアントや編集者、ディレクター、カメラマンなどと事前に打ち合わせを行い、制作物のコンセプトやターゲット、撮影内容を確認します。

その内容をもとに、誰をどのようなイメージでスタイリングするかを考え、着用するアイテムやブランドを選定します。また、どこから衣装をリースするか、返却スケジュールをどう組むかなど、撮影に向けた準備も進めます。

リース作業

リース作業とは、撮影で使用する洋服やバッグ、シューズ、アクセサリーなどを、アパレルブランドのプレスルームやショップ、衣装リース会社などから借りる業務です。

ブランドのプレス担当者と連絡を取りながらアイテムを手配し、必要に応じて店舗やプレスルームへ足を運びます。リースだけでなく、小物などを自ら購入してスタイリングを完成させることもあります。撮影で使用するアイテムが多い場合は、スタイリストとアシスタント2〜3名がチームで作業を進めることもあります。

撮影現場でのスタイリング・同行

撮影当日は、衣装や小物に不足がないか、サイズが合っているかなどを最終確認します。必要に応じてアイロンがけやほこり取りを行い、サイズが合わない場合は簡単な縫製で調整するなど、衣装をベストな状態に整えます。また、撮影中はスタイリングの崩れを随時チェックし、シーンに応じて衣装や小物を変更するなど、現場での対応も重要な仕事です。

撮影後の確認・返却作業

撮影終了後は、リースした衣装や小物に汚れや破損がないかを確認し、整理した上でリース先へ返却します。衣装の返却までがスタイリストの仕事です。ブランドやリース会社との信頼関係を維持するためにも、丁寧な管理と迅速な返却が求められます。

スタイリストに求められるスキルと素質

スタイリストとして活躍するためには、ファッションの知識やセンスはもちろんですが、センスを磨くための情報収集力や、現場で求められるコミュニケーション能力や体力など、幅広いスキルが必要です。ここでは、スタイリストに求められる代表的なスキルや素質をご紹介します。

リサーチ力・ファッションセンス

ファッションのトレンドは日々変化しています。そのため、スタイリストは雑誌やSNS、コレクションなどから常に最新の情報を収集し、トレンドを把握し続けることが重要です。

また、単に流行を取り入れるだけでなく、モデルやタレントの個性、ブランドや企画のコンセプトを理解し、クライアントが求める世界観をファッションで表現するセンスも求められます。

専門性

スタイリストには、ファッション誌、広告、テレビ、ブライダル、ファッションショーなどさまざまな活躍の場があります。分野ごとに求められる知識やスタイリングは異なるため、自分の得意分野や専門性を持つことが強みになります。

人脈・実績

スタイリストは実績が評価されやすい職種です。有名な媒体やブランド、著名人のスタイリングを担当した経験は、次の仕事につながる大きな強みになります。

また、紹介や人脈から仕事を依頼されることも少なくありません。日頃から現場で信頼関係を築き、実績を積み重ねることが、継続的な仕事の獲得につながります。

対応力・現場経験

スタイリストは、クライアントや編集者、ヘアメイク、カメラマン、モデルなど、多くのスタッフと連携しながら仕事を進めるため、相手の意図を正確に汲み取り、自分の考えを伝えるコミュニケーション能力が欠かせません。その上で、撮影現場では急な衣装変更やスケジュールの変更といった場面でも冷静に対応し、臨機応変に判断できる柔軟性や協調性が求められます。

スタイリストは、経験を重ねることで現場での判断力や対応力を身につけていきます。撮影現場では、自分の仕事だけでなく、ヘアメイクやカメラマンなど他のスタッフの動きを理解し、撮影全体がスムーズに進むよう行動することも重要です。アシスタント時代の経験は、こうした現場力を身につけるための貴重な期間といえるでしょう。

体力

スタイリストの仕事は、衣装の運搬やリース先への移動、長時間の撮影立ち会いなど、体力を使う場面が多くあります。朝早くから夜遅くまで撮影が続くこともあり、重い荷物を持って移動することも珍しくありません。忙しいスケジュールの中でも集中力を維持し、最後まで質の高い仕事を続ける体力と精神力が求められます。

スタイリストのやりがいと大変なことは?

スタイリストは、華やかなイメージがある一方で、体力や柔軟な対応力が求められる仕事でもあります。ここでは、スタイリストとして働く上での大変なことと、やりがいをご紹介します。

《大変なこと》

勤務時間が不規則になりやすい

スタイリストは、映画やテレビ、広告、ファッション誌などの撮影スケジュールに合わせて働くため、早朝や深夜、休日に仕事をすることも珍しくありません。案件ごとに勤務時間が異なるため、生活リズムが不規則になりやすい点は大変な部分の一つです。

体力が求められる

スタイリストは、リース作業でブランドショップやプレスルームを回り、多くの衣装や小物を運搬します。また、撮影当日でも長時間立ちっぱなしで対応することが多く、想像以上に体力を使う仕事です。忙しいスケジュールが続くこともあるため、体力や自己管理能力が求められます。

《やりがい》

自分のスタイリングが作品として形になる

スタイリストにとって大きなやりがいの一つは、自分が考えたコーディネートが雑誌や広告、テレビ、ECサイトなどで公開され、多くの人の目に触れることです。作品が完成したときの達成感や、クライアントや視聴者・読者から高い評価を得られたときは、大きな喜びにつながります。

多くのブランドと関われる

リース作業を通じてさまざまなブランドやプレス担当者と関わるため、最新コレクションや新作アイテムにいち早く触れられることも魅力です。業界内での人脈を築きやすく、それが新たな仕事につながることも少なくありません。

タレントやモデル、アーティストと仕事ができる

スタイリストは、モデルやタレント、俳優、アーティストなどのスタイリングを担当する機会があります。憧れの人物の魅力を引き出すコーディネートを考えたり、自分が手掛けたスタイリングが作品として世の中に発信されたりすることは、この仕事ならではのやりがいといえるでしょう。

スタイリストの平均年収・月収

スタイリストの年収は、経験年数や実績、働き方によって大きく異なります。特にフリーランスは担当する案件数や知名度によって収入に差が出やすい職種です。

その上で、READY TO FASHIONをはじめとしたファッション・アパレル業界特化の求人サイトに掲載されている正社員求人を参考にすると、募集年収は350万〜450万円前後の求人が多く見られます。

また、アシスタントスタイリストとしてキャリアをスタートした場合は、年収200万〜300万円程度から経験を積むケースもあります。一方で、実績を重ねて有名スタイリストとして活躍したり、フリーランスとして多くの案件を担当したりすると、年収500万〜800万円以上を目指すことも可能です。さらに、第一線で活躍するスタイリストの中には、年収1,000万円を超えるケースもあります。

ファッション業界で活躍する有名スタイリスト

ここでは、ファッション業界で活躍する代表的なスタイリストをご紹介します。スタイリストは、担当する媒体やジャンルによってスタイリングの特徴が異なります。普段どのようなブランドを使用しているのか、どんな世界観を表現しているのかを知るために、InstagramなどのSNSをチェックするのもおすすめです。

TEPPEI

バンタンデザイン研究所ファッション学部スタイリスト選考を卒業後、原宿のビンテージショップ「DOG(ドッグ)」にプレスとして入社。その後、ストリートファッション誌などへの出演をきっかけに、ファッションスタイリストとして活動を開始しました。現在は、デザイナーズブランドのファッションショーやアーティストのビジュアル撮影など、幅広い分野でスタイリングを手がけています。

中野ゆりか(ゆりかでん)

女性誌『ViVi』や『ar』などを中心に活躍するスタイリスト。ガーリーな雰囲気とストリートテイストを融合したスタイリングに定評があり、多くの支持を集めています。文化服装学院を卒業後、スタイリストの山脇道子氏に師事し、約4年間のアシスタントを経験を経て独立。現在では、アパレルブランドとのコラボ商品を発売するなど、スタイリストの枠を超えて活動の幅を広げています。

百々千春

専門学校卒業後、19歳から約3年間、スタイリストの野崎美穂氏のアシスタントを経験し、2004年にスタイリストとして独立しました。雑誌や広告などのスタイリングを手掛けるほか、2019年には自身のブランド「THE SHISHIKUI」をスタート。YouTubeチャンネル「DODO TUBE」では、ファッションに関する情報発信も行っています。

二宮ちえ

文化服装学院卒業後、2002年にスタイリストの青木宏予氏に師事し、2005年に独立。ストリートファッション誌をはじめ、アーティストの衣装やビジュアル撮影など、幅広いジャンルでスタイリングを手掛けています。

スタイリストに資格は必要?

スタイリストになるために必要な資格はありません。そのため、資格の有無よりも現場での経験やファッションセンス、コミュニケーション能力、実績などが重視される職種です。

一方で、ファッションや色彩に関する知識を身につけたい方や自身のスキルを客観的に証明したい方は、以下のような資格を取得するのもおすすめです。

・ファッションビジネス能力検定 :ファッション業界の仕組みやビジネスの基礎知識を身につけられる資格
・色彩検定:色彩理論や配色の知識を学び、スタイリング力の向上に役立つ資格

スタイリストになるためのキャリアプラン

スタイリストは、未経験からすぐに一人前として活動することは難しく、まずはスタイリストのアシスタントとして現場経験を積みながら、必要な知識やスキルを身につけるのが一般的です。その後、経験や実績を積み重ね、フリーランスとして独立したり、スタイリスト事務所に所属したりすることで、スタイリストとしてキャリアを築いていきます。

①服飾系の専門学校でファッションの基礎を学ぶ

スタイリストになるために必ず専門学校を卒業する必要はありませんが、服飾系の専門学校や学科でファッションに関する基礎知識を学ぶ人は多いです。

学校では、服のシルエットや素材、コーディネートの考え方、洋服制作など、スタイリングに必要な知識を幅広く身につけることができます。また、イベントやインターンシップなどに参加することで、実際の現場を経験したり、業界関係者とのつながりを作ったりする機会にもなります。

②スタイリストのアシスタントとして経験を積む

服飾系の専門学校を卒業したとしても、すぐにスタイリストとして活動できるわけではありません。多くの場合、まずはスタイリストのアシスタントとして現場経験を積みます。

アシスタントになる方法としては、スタイリスト事務所の求人に応募するほか、憧れのスタイリストへ直接連絡を取り、アシスタントを希望する意思を伝えるケースもあります。求人が出ていない場合でも、自ら行動してチャンスをつかむ積極性が求められることもあります。

アシスタント期間中は、衣装の管理やリース作業の補助、撮影現場の準備・片付けなどを担当します。実際の現場で経験を積むことで、スタイリング技術だけでなく、業界のルールや仕事の進め方、人脈を築くことができます。一般的には3〜4年ほどのアシスタント期間を経て、独立を目指すケースが多く見られます。

③スタイリストとして独立・事務所に所属する

アシスタントとして経験を積んだ後は、フリーランスとして独立する、またはスタイリスト事務所に所属して活動する道があります。

フリーランスとして活動する場合は、自身のスタイリング実績や世界観を伝えるポートフォリオを作成し、営業活動や人脈を活かして仕事を獲得していきます。一方、事務所に所属することで、案件の紹介やスケジュール管理などのサポートを受けながら、スタイリストとして経験を積むことも可能です。

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【参考文献】
「ファッション辞典(第4版)」(大沼淳、萩村昭典、深井晃子 監修、文化出版局、1999)
「増補新版 図解服飾用語辞典」(杉野芳子 編著、ブティック社、2003)
「1秒でわかる!アパレル業界ハンドブック」(佐山周、大枝一郎、東洋経済新報社、2011)
「ファッション業界大研究[第2版]」(ファッション&ソフトマーケティング研究会 編著、産学社、2019)
「ファッション業界大研究【改訂版】」(オフィスウーノ 編、産学社、2008)
「アパレル素材企画 プロフェッショナルガイド」(野末和志、繊研新聞社、2019)
「役に立つアパレル業界の教科書」(久保茂樹、文芸社、2016)


三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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