ファッション業界に特化した求人サイトを運営するREADY TO FASHIONは、エスモード・東京校にて27卒の学生を対象にキャリアセミナー「~「ありのまま」と「何者か」の葛藤を乗り越えるキャリア術〜」を開催。

当日は、約50名の学生が参加し、「自分の本来の意思を見つけるにはどうすればいいのか」、「その思いをどうキャリアにつなげていくのか」について考えを深めました。

この記事では、当日のセミナー内容を振り返り、ファッション業界の採用動向から、自分が本当にやりたいことを見つけるヒントまで、詳しく解説します。

講師プロフィール:久保田極光(くぼた・むねみつ)READY TO FASHION営業・カスタマーサクセスチーム責任者。アメリカでMBAを取得後、株式会社リクルートマネジメントソリューションズで人材育成と組織開発に10年間携わる。その後、READY TO FASHIONに入社。アパレル企業の採用コンサルティングを行っている。これまで、200以上のファッション企業の採用担当者をサポートしてきた。

自分らしく輝ける場所を見つけるために

このセミナーの目的は、皆さんが社会に出ても「自分らしく働ける状態」を保つためのヒントを得ること。今日は、営業とカスタマーサクセスの責任者としての経験をもとに、皆さんの将来を考えるヒントをお伝えします。

「ありのまま」と「何者か」の間で揺れる気持ち

今回のテーマは、「ありのまま」と「何者か」の葛藤を乗り越えるキャリア術です。「自分らしくいたい」という気持ちと、「社会の中で何者かになりたい」という思い。その2つの間で揺れるのは、自然なことです。

これは学生時代だけでなく、社会に出てからもずっと続くテーマでもあります。だからこそ、今このタイミングで自分の軸を見つけておくことが、将来の支えになると思っています。

今日は以下の5つのテーマで話します。

・就職市場の現状や社会の構造の変化について
・「ありのまま」と「何者かになりたい」の間で起こる葛藤の正体を理解すること
・その葛藤を乗り越えるための考え方
・自分の「真の欲求」──本当は何をしたいのかを見つけるワーク
・その気づきをキャリア選択にどう活かすか

働く環境の変化と、就職市場のいま

働き方をめぐる社会の変化

15年後の2040年には、日本でおよそ1,100万人の労働人口が不足すると予想されています。つまり、「働く人が足りない社会=労働供給制約社会」に入るということです。

人手不足は単なる採用難ではなく、生活基盤そのものが維持できないレベルの問題になると言われています。

そうなると、社会のあちこちで変化が起こります。例えば、物流業のドライバー不足により、荷物が届かず、居住可能な地域が制限されたり、介護現場の人材不足によって共働き世帯にも影響が及んだり。

そうした変化の中で、一人ひとりが生き方・働き方をどう選ぶかがこれまで以上に重要になってきます。

就職市場の現状

就職市場では、現在の有効求人倍率は約1.66倍、特にファッション業界では3.03倍とさらに高い数字になっています。

とはいえ、企業の規模や職種、勤務地によって状況は違うので、一概に「就職しやすい=満足できる仕事に出会える」とは限りません。そして、第一志望の企業に就職できる学生は全体の3割ほど。多くの人が理想とのズレを感じて社会に出ています。

また、企業の採用意欲はとても高いですが、実は採用がうまくいっている企業は多くありません。「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」という課題にも直面しており、働きやすい環境づくりを進めている企業が増えています。

法改正の影響も相まって、「働きやすい職場」は増えましたが、その一方で「成長できない」「やりがいが感じられない」と感じる若手も増えています。

つまり、自分らしさを大切にしたい「ありのままの自分でいたい」という面と、社会的に認められたい「何者かになりたい、認められたい」という2つの気持ちが揺れやすい時代になっているんです。

AI時代に問われる「人が働く意味」

AIが進化していく中で、「人にしかできないこと」がより価値を持つ時代になってきました。

「仕事の数>労働数」だった状態が、近い将来
「労働数>仕事の数」になる可能性もあります。

最近、「自分で自分を追い込む」ことを指す「セルフブラック」という言葉があります。ブラック企業のようにやらされているのではなく、「成長したい」「認められたい」という気持ちから、あえてハードに働く状態のこと。

ただ、その自分のやりたいことが明確でないまま頑張り続けてしまうと、いつの間にか無理をしてしまうこともあります。だからこそ、意思を持って働くかどうかで、同じ努力でも感じ方が全く違ってきます。

「ありのまま」と「何者か」をつなぐ ── Will・Can・Mustの視点で考える

この葛藤を整理する上で役立つのが「Wil・Can・Must」というフレームです。

・Will(やりたいこと):自分の価値観や理想、情熱。まさに「ありのままの自分」。
・Can(できること):スキルや得意分野。「何者か」としての力。
・Must(求められること):社会や企業が自分に期待していること。

この3つの円が重なるほど、「働きがい」や「自分らしくいられる感覚」が強くなると言われています。ただ、現実はこの重なりをうまく見つけられない人が多いんです。

例えば──
・「Will(やりたいこと)」が曖昧=親や友人の意見に流されて、自分の本音が見えなくなっている
・「Can(できること)」が見つからない=企業が求めてる人物像に合わせようとしてしまう
・「Must(求められること)」の範囲が狭い=社会や会社が本当に必要としていることが見えない

結果として、自己分析が過去の棚卸しだけで終わってしまったり、誰かの正解探しになってしまう。でも本来の就活は、自分がどう生きたいかを考える時間のはず。だからこそ、今日のセミナーでは自分の真の欲求に立ち返ることを大切にしています。

例えば「人の心を動かすことが好き」という欲求があるなら、企画職でもマーケティングでもPRでも教育でも叶えられる。職種名ではなく動詞で捉えると、自分の可能性が一気に広がります。

真の欲求を掘り下げる自己分析

キャリアというと、仕事のことだけを思い浮かべがちですが、実際は人生全体のことです。

「ライフキャリアレインボー」という考え方がありますが、社会人、友人、家族──その全てがキャリアの一部。仕事はその一部に過ぎないんです。だからこそ、自分の真の欲求を知ることが、働き方だけでなく生き方にもつながります。

「真の欲求」とは、最近ハマっていることではなく、子どもの頃から「気付いたらやっていたこと」。止められても、ついしてしまうようなことの中に、自分らしさが隠れています。

ワークの進め方

①「この人の言うことは聞いておいて方がいい」と思う人を思い浮かべる
例)親、教師、友人、恋人、上司など身近で影響力のある人
②その人に「禁止されたこと」や「強制されたこと」を思い出す
③それでも「やってしまっていたこと」は何かを書き出す
④その行動の理由を掘り下げる

具体例

・お母さんに「友達と勉強するな」と言われたけど、友達に勉強を教えていた。
 →本当は「教えることで自分も理解を深めたかった」

・彼氏に「派手な格好をするな」と言われたけど、好きな服を着ていた。
 →「自由に自己表現したかった」

・親友に「絵なんて仕事にならない」と言われたけど、絵を描き続けていた。
 →「自分の内なる熱を表現したかった」

・お父さんに「家から通える学校に行け」と言われたけど、自分で進学先を選んだ。
 →「自分の人生を自分で選びたかった」

・先生に「習い事を続けなさい」と言われたけど、やめた。
 →「新しいことに挑戦したかった」

こういう形で、行動の理由を掘っていくと、自分の根っこの欲求=自分が本当に何を大切にしているのかが見えてきます。

自己理解からキャリア選択へ

ここまでで見えてきた真の欲求を、どう仕事につなげるかを考えましょう。

その行動自体が報酬になるような仕事、つまりやっているだけで楽しいと感じられる仕事を探していきます。

企業を選ぶ時、つい「有名だから」「知っているから」という理由で選びがちですが、実は第一志望の企業に行ける人は全体の3割ほど。知らない会社の中にも、自分が一番輝ける場所があるかもしれません。

大切なのは、どんな環境で自分が生き生きできるかを知ることです。

「どの会社に入るか」から考えるのではなく、「自分らしく働ける条件」から会社を見ていくことで、選択肢がぐっと広がります。

【これまでの振り返り】
① 自分の真の欲求を知る
② それを満たせる仕事・業務を考える
③ 自分らしくいられる「環境と対象」を見つける
④ その条件に合う会社を探す

日々の感情が自分らしさを見つけるヒントになる

最後にお伝えしたいのは、日常の中で喜怒哀楽を感じることの大切さです。「嫌だな」「悲しいな」と感じることは、その裏に自分の欲求=何をしたいか、本来はこうありたいということが隠れている可能性があります。

日々の生活の中で、マイナスの感情に出会った時こそ、自分を知るチャンス。

「本当は何がしたいのか」と問いを一つ立てるだけでも、見える世界は変わっていきます。就活は、誰にどんな価値を見届けるかを決めること。ぜひ、自分の未来のストーリーを、自分なりに描いてみてください。

READY TO FASHIONには、ファッションアパレル業界の企業情報や求人情報が豊富に載っており、働きがいや働きやすさの情報も掲載しています。自分とのマッチングを考える材料として、ぜひ活用してください。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。