「ファッションシステムが変わる時?《オートクチュールからSee Now Buy Nowまで》」。前編では、オートクチュールの始まりからプレタポルテまでの流れを歴史を踏まえて触れていきます。

後編では、現在のファションシステムの主流「プレタポルテ」からの新しい形「シーナウ・バイナウ(See Now Buy Now)」について触れ、ファッションシステムの革命とも言われつつあるこのワードについて紹介します。

オートクチュールの誕生

HAUTE COUTURE=HAUTE:「高い」「高級」➕COUTURE:「縫製」「仕立て」

「オートクチュール」は、シャルル・フレデリック・ウォルトというイギリス人によって確立されたファッションシステムだ。それまでのファッションシステムは、顧客自身が服に使用する生地や装飾品全てを用意し、仕立屋に持って行き、そこで仕立屋が顧客の注文に応じて流行などに従いながらデザインし作成するというシステムだった。

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「ユージェニー皇妃と女官たち」(出典https://goo.gl/images/J0uS0m

しかし、ウォルトはこのシステムを非効率だと考えていたため、従来のシステムを変えてしまう。それが「オートクチュール」のシステムの始まりだ。彼は、顧客をシーズンが変わるごとにサロンに呼び、新作をマヌカン(モデル)に着せてプレゼンテーションをした。当時、ナポレオン3世の皇后でファッションリーダー的存在でもあったユージェニーのドレスを手掛けるなど、ウォルトには影響力があった。以来、上流階級やブルジョワジーによって作り出されていた流行は、ウォルトのようなクチュリエ(オートクチュール・デザイナー)によって生み出されるようになる。

技術革新と戦争の影響

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「シンガーの足踏みミシン」(出典https://goo.gl/images/9qyR0o

しかし、19世紀半ば以降、ファッション産業は大きく変化する。産業革命を経て、多くの分野で技術革新が進むことにより、ミシンの原型が発明される。ミシンの登場は、衣服を大量生産する既製服産業の発達を促した。また、南北戦争を始まりとし、軍服生産は既製服産業を活気づかせ、女性の社会進出も進み、女性のための既製服の需要が増大した。

パリオートクチュールの最大の顧客であったアメリカが1929年の大恐慌以降、経済力を大きく落としたりする一方で、第二次世界大戦でパリはナチスドイツに占領されパリのファッション業界全体が停滞するなどの時代背景もあり、オートクチュールは時代とともにどんどん縮小していき、プレタポルテが主流となっていった。

プレタポルテの躍進

PRET-A-PORTER=PRET:「準備が出来ている」➕A-PORTER:「着る」

1960年代以降、プレタポルテのコレクションが勢いを増していくが、第一世代として有名なのは、ソニア・リキエル、カール・ラガーフェルド、マリー・クワントなどだ。1965年にイヴ・サンローランがプレタポルテのブティック「リヴ・ゴーシュ」を開店したことも象徴的な出来事だった。

1970年代に入ると高田賢三、三宅一生、山本寛斎らが次々と海外でコレクションを発表するようになった。また、森英恵は日本人でただ一人パリ・オートクチュール組合に加盟していた。

1981年には川久保玲と山本耀司がパリで作品を発表し、それまでのファッションの常識を覆すような斬新なアイデアで話題をさらった。

ファッションの発信地の多極化とITの時代の到来

1970年代以降、それまでファッションの中心はパリだったが、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、東京、マドリードなどでも盛んになっていく。1977年にはミラノに高級既製服協会が発足し、ミラノ・コレクションが運営されるようになる。そして、1985年にロンドン・コレクション、1993年にニューヨーク・コレクションと広がりをみせて行った。日本では経済産業省のバックアップにより、1995年から日本ファッションウィーク(JFW)が始まる。

そして、1990年代にはWindows95が発売され、コンピュータが身近な存在になり、ITの時代に突入した。ファッション業界だけではなく、様々な業界で情報化社会への対応が求められるようになったのであった。

後編に続く。

「オートクチュール」をもっと知りたい方にオススメ情報

 【リーガロイヤルホテル大阪】シャネルが経営するパリの刺繍学校「エコールルサージュ」の技法を学ぶ「オートクチュール刺繍」10月開講

リーガロイヤルホテル(大阪市北区中之島、総支配人 田辺 能弘)の文化教室「エコール ド ロイヤル」で、会員制常設講座として、シャネルが経営するパリの刺繍学校「エコールルサージュ」の技法を学ぶ講座「オートクチュール刺繍」(受講1回2時間半・8,640円/月、材料費等別)を10月より新たに開講するそうだ。
「オートクチュール刺繍」は、シャネルが経営するパリの刺繍学校「エコールルサージュ」の技法で、クロッシェというかぎ針で、生地の裏から糸やビーズ、パイエットを刺繍していく技法。ビーズやパイエット、シュニール、リボン、レザーなどフランスのオートクチュールでも使われるような高級な素材を使用する「オートクチュール刺繍」からは、夢のように素敵な刺繍が生まれる。
講座は、月1回、第1水曜日に行われ、見学、体験講座も受け付けるそうだ。試しに「オートクチュール」の世界観に触れてみてはどうだろうか。

【講座名称】シャネルが経営するパリの刺繍学校「エコールルサージュ」の技法を学ぶ「オートクチュール刺繍」 講座(会員制常設講座)

【日  時】10月5日(水)より、10:00~12:30(第1水曜日)

【講  師】白井 由香利(Brodina主宰):パリで受講した「エコールルサージュ」のレッスンが忘れられず、日本から定期的に通い、3年で殆どのカリキュラムを受講。その後MOFのビィクトリアダロルッティ師にもオートクチュール刺繍を、またMOFのマルティーヌ・バルテュス師に白糸刺繍を、シンガポールのルーマべべ先生に靴の刺繍を習う。現在はオートクチュール刺繍の教室を開講している※MOF=Meilleur Ouvrier de France:フランス文化の最も優れた継承者たるにふさわしい高度の技術を持つ職人に授与される称号

【場  所】リーガロイヤルホテルの文化教室「エコール ド ロイヤル」(ウエストウイング2階)

【受 講 料】1ヶ月 8,000円(税込8,640円)

【材 料 費】別途必要

【初期費用】道具代 21,600円(レンタルの場合は2,000円/月)

【体  験】材料費 12,960円、体験受講料 25,920円※3回で1作品作るので、受講料3回分申し受けます

【備  考】※会員制常設講座は、別途入会金(年会費/1年間有効)5,400円が必要です。 ※受講料は3ヶ月分の前納制です。 ※受講料の他に、材料費が別途必要です。(作品により料金が異なります。)

【申込・問合せ】  リーガロイヤルホテルの文化教室 エコール ド ロイヤル|電話予約:06-6441-2938(直通)受付時間:9:30~17:00(日・祝日休み)

インターネット予約:http://www.rihga.co.jp/osaka/culture

READY TO FASHION MAG 編集部

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