皆さんは、自分以外の人がカッコいいと言っている「人」や「モノ」のカッコよさが自分には全く分からないということはよくありませんか??

特にファッションに関してはこの問題はよく起こりがちな気がします。分からないことを調べてみても専門的な単語が並べられていて理解できずに結果、興味が無くなってしまうという負のループに陥ってしまっている方も多いと思います。

そこで、この連載では「ファッショニスタ」や「お洒落さん」たちがカッコいいと噂しているけどイマイチ、「カッコよさ」が伝わりづらいファッションの様々なことについての「説明書」を誰でも分かるように筆者の独断と偏見で作っていきたいと思います。

連載の第一弾として、超ロング袖のブームを作ったブランド、「Vetements(ヴェトモン)」を前編では外見の「カッコよさ」について解説しましたが後編は内面の「カッコよさ」について解説していきたいと思います。

Vol.1後編 : 最近よく見る超ロング袖の火付け役Vetements(ヴェトモン)

では後編はデザイナーのデムナ・ヴァザリアのルーツを中心にヴェトモンの内面の「カッコよさ」の核心に迫っていきましょう!

※Vetements(ヴェトモン)は旧ソビエト連邦から独立したジョージア出身のデザイナー、デムナ・ヴァザリアが2014年に設立したブランド。ブランド名の「Vetemets」はフランス語で「服」を意味する。多様なルーツを持つデザインチームによって製作され、そのトップに立つデムナ自身も2015年よりバレンシアガのアーティスティック・ディレクター(デザイナー)に就任するなどファッション界において注目を集めている。

デムナ=JK(女子高生)的感覚!?

デムナ・ヴァザリアは1981年にソビエト連邦(当時)に生まれました。社会主義下の生活では全ての服が支給され、生活に必要なモノも最低限しかありませんでした。その為、1989年に冷戦が終了し、その後ソ連が崩壊するまでヨーロッパやアメリカの西洋文化にほとんど触れないまま少年期を過ごしました。

彼はインタビューの中で「ユニフォーム(制服)」に興味があるとよく言っています。これは先に述べた社会主義時代の人々の服は全て、配給品=「制服」だったことが関係しています。例えば警察であれば「警察」とプリントされた制服を着ていました。彼がデザイナーになった今、企業名や職業名、あるいは地名をプリントした服を作っているのは幼い時に目にしてきた服の影響が大きいのではないでしょうか。

実はデムナ自身も学生時代は「制服」を改造して必死に個性を出そうとしていたそうです。これってちょっとJK(女子高生)に似ていませんか?校則で決められたスカートの丈を短くして限られたオシャレを楽しむ光景はデムナのそれに重なります。ヴェトモンの変わったシルエットはもしかしたらルールをこっそり破る子供ながらのオシャレ心が関係しているのかもしれません。

そう考えるとヴェトモンの服は自分をアピールするための「制服」なのです。変わったデザインではあるけれど、決して少なくない数が生産され世界中で売られていて、地球のどこかには同じ服を着ている人がいます。しかし、幼い頃のデムナのように着方次第で個性を出せるし、服を着ることで自分はこういう人間だと主張することが出来ます。

 

@kuznetskymost20 @gosharubchinskiy

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では社会主義下の生活から一転してヨーロッパ・アメリカの華やかな文化が生活に入り込んできた青年期から現在に至るまでデムナはどういった考えの元、服作りをしているのでしょうか。

服は服!アートじゃない!

彼は「ユニフォーム」以外にも「ワードローブ」という言葉をインタビューで多く使っています。「ワードローブ」というのは元々、衣装部屋を意味してそこから派生して自分の持っている服のことを指す言葉です。

デムナは常に「服は服であってアートではない」と考えています。これはブランド名にも分かるように、例えば「デムナ・ヴァザリア」と自分の名前を付けたり、特別な意味を持った言葉をブランド名にするのではなくフランス語で「服」を意味する「Vetements」と名前を付けることで、みんなのクローゼットに並ぶ「ワードローブ」の一部であるということを表しているのです。

またヴェトモンが始まった2014年から現在に至るまでのコレクションを見てもシーズン毎にデザインに関してテーマが決められておらず、まるで誰かの家の衣裳部屋をのぞいたような色々な種類の服が発表されています。特にそれがよく分かるのが2017年春夏のコレクションです。このシーズンはスポーツ・デニム・スーツなどジャンル関係なく様々なブランドとのコラボレーションが行われました。

 

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スーパーの主婦もストリート!?

前編ではヴェトモン=「ストリート」+「モード」という話をしましたが、何故ヴェトモンはストリートにこだわるのでしょうか。ここでヴェトモンを語るうえで外せないキーワードの「ストリート」をより深く掘り下げていきたいと思います。

そもそも「ストリート」とは何か、疑問に思う方も多いかと思います。大体の人は路上でスケートボードやラップをする人々を思い浮かべるのではないでしょうか。確かにそれも間違いではありません。しかし、ヴェトモンはもっと広い意味で「街(町)で生活する人々、またその格好」として「ストリート」を表現しています。つまり、スーパーで買い物をしている主婦も、スーツ姿のサラリーマンも、あるいは路上生活者の方も皆ヴェトモンにとっての「ストリート」なのです。

このヴェトモンの「ストリート」観をよく表しているのが最新の2017年秋冬コレクションです。そこからヴェトモンが「ストリート」と「モード」を融合させた理由が見えてきます。

みんなちがって、みんないい!

つい先日発表された2017秋冬コレクションはファッション界に大きな驚きをもたらしました。性別、人種、年齢、職業、収入も様々な人々がランウェイを歩いていたのです。「ストリート」がありのままに映し出された姿は、これが本当にファッション・ショーなのかと目を疑いたくなる光景です。

 

AH17/18 SHOW

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