早稲田大学繊維研究会、一般大学生だから出来る事「ファッションを再帰的に問う」1から作り上げる彼らのショーに密着 【前編2/2】

 

では、ここからは今回発表されるコレクションを制作する服造部門に注目。服造は2・3年生だけで18人が所属しており、そのメンバーは全員が女性。服をデザインし、服を繕う仕事をする若者が減ってきている今、実際に洋服を作っている学生の彼女たちはこの状況をどのように捉えているのだろうか。まず、2人の服造部門に属する学生から直接お話を伺ってきた。さらに、服でテーマやコンセプトを表現するという彼女たちにしかわからないその難しさ、さらに今回のコレクションでこだわっている点なども語ってくれている。今回のショーのコレクションを見るにあたってまさに必見のインタビュー、そして見えてきた共通点とは?


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・interview・

早稲田大学繊維研究会・副代表/服造部門 大澤美久

1.服造を担当しようと思ったきっかけは何でしょうか?
ショーの中に自分のつくった服が出るって素敵だな、と思ったからです。もともと服づくりには興味があり、とても良い機会でした。

2. 今回のショーのテーマをどのように自身の服で表現しようと考えていますか?
ショーで見るからこそ生きる素材、メディアを通すことで伝わる細部などを組み合わせて、演出を活かせるような服にしようと考えています。今回のコンセプトにある「差異」が伝わるように常に意識しています。

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3.その中でも、こだわっている部分や見て欲しい!と思う部分があったら教えてください。
全体としては、それぞれの服の素材や細部、動き方など、ショーの中でこそ楽しめるところを味わってほしいです。

個人的には、りぼん刺繍です。服造の数人に共通した細部としていくつか候補がある中で、わたしは刺繍を取り入れることに決めました。そして、単なる装飾ではなく、コンセプトを体現する一つの要素として刺繍を使いたいという思いから、より立体感が伝わりやすいりぼん刺繍を選びました。実験的な部分もありますが、ショーの中で様々な見え方が味わえるのではないかと思っています。

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4.服をデザインしていく上で影響を受けたデザイナーやアーティストがいたら教えてください。

いろいろな方の作品からいろいろな影響を受けているとは思いますが、特定の人やブランドはありません。お店や古着屋さんなど、実際の服からアイデアをもらうことが多いです。

5.服を造る学生の立場から見た服飾業界における若者の役割や自身のことを含めても構わないので教えてください。

服を選ぶのもつくるのも着るのも自由であっていいと私は思っています。なので若者だからこその役割みたいなのは、あんまり感じていません。
服飾業界というフィールドでもその外でも、単純に、服によって幸せな気持ちになる人、着ることを楽しむ人がたくさんいればいいなと思います。


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・interview・

早稲田大学繊維研究会/服造部門 青木美椰子

1.今回のテーマを聞いて、一番に浮かび上がったアイデアやイメージはどんなものだったでしょうか?

今回のテーマが、聞いてというよりも全体で考えながらだったので、”決める中で”にはなるのですが、今回のテーマが”メディアによるイメージの差異”で普段、具体的なアイデアだったらそのまま服に入れればいいので、服で表しやすいのですが、テーマ・コンセプトを衣服で表すのは例年いつも難しく、結局伝わらない!ということがすごく多いので、今回どのくらい具体的に伝えられるようにできるかということを考えました。その結果として服造は時間軸のある服というものを作っているのですが、私はもともと古着だったり古いものが好きで、古着の服そのものの持つ時間みたいなものを使って表現できたらいいなと思いました。

2.その中でも、こだわっている部分や見て欲しい!と思う部分があったら教えてください。

今回、やりたいことをいろいろと詰め込んでみたんです…!

例えば、シルクスクリーンに挑戦した事もその一つです。自分で絵を描いて、それを業者の方に頼み、版を作ってもらい、プリントして、オリジナルテキスタイルを作ったのでそこを是非見てもらえたらと思っています。また、私も刺繍やニット、染め、箔押しなど、細部にまでこだわって作りました。是非見にきていただけたらと思っています。そして、学生団体だとなりがちなのですが、”ショーを個人発表会みたいにはしたくない”という思いがあり、個性を活かしながらちゃんと全体がひとつのコレクションとして成り立つように、ルックどうしがリンクするシステムを服造全体で工夫したり、ビジュアル全体としてのデザインの設定をしました。

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3.青木さんがファッションに興味を持ち、自分で服を作ろう!と思ったきっかけや、影響を受けたブランドがあったら教えてください。

中学、高校くらいの時に、おしゃれな友達の影響で好きになりました。その時に、ファッションや服について勉強したいと思い東京に出てきたのですが、このサークルに入ると、着るだけでなく、身体的なことだったり、社会的なことだったり、本当に面白いなと思い、そこからのめり込んでいます。

服を作ることについては、昔から手芸が好きで、リカちゃん人形やシルバニアファミリーなどの服を作っていたのでその延長線上で…。リカちゃんに着せたい服があっても売ってなかったり、値段が高くて買えなかったりした時に「じゃあ作っちゃおう!」みたいな感じで作っていました。それが大きくなっただけみたいなところはあります。
ケイスケカンダ(keisuke kanda)の神田さんは凄く考えていることが面白くて好きです。
私は大学で服飾史を勉強しているのですが、昔の資料が面白く、服を造る上でインスピレーションを受けたりしています。

4.これからの服飾業界について、服を造る学生の立場から見た学生服飾サークルの役割はどのようなことだと思いますか?また、ご自身はどのような存在でありたいと考えているか教えてください。

私たち一般大学生の作る服は、流通している衣服とは異なる性質のものだと思います。技術も未熟ですし、売れる必要も流行る必要もありません。商品としての衣服の価値はない反面、テーマやコンセプトに沿って、自分たちの表現したいものを作ることができるのは、学生の強みだと思います。「ファッション」ではあっても「アパレル」ではない。 ファッションに興味を持った学生が服飾サークルに入り、実際に作ったり、同じくファッ ションに興味を持つ人と話したり、(繊維の場合ファッション業界に就職したOB OGのお手伝いインターンがしばしばあります)本物のショーを体感したりすることで、ただなんとなく服が好きなだけだった人も、ファッションってなんなんだろう?って考えるようになると思うんです。

また、サークルでは服飾だけではなくて哲学、建築、芸術、医学、演劇、文学、いろんなことをやっている人が集まるので、ファッションを共通点としていろんなことを考えている人がいます。普段関わらない人、考えが、ファッションでファッションへと繋がっていきます。服を作っていても、普段勉強していることが顔を出したりするので面白いです。 私自身サークルで知り合った友人の影響を受け、興味の範囲、行動範囲が広がったの を感じています。

学生服飾サークルの役割は、きっかけだと思います。ファッションについてもっと知り、 考えるきっかけになるのではないでしょうか。

繊維に在籍するなかで、見聞きしたこと、体験したこと、そして考えたことはたくさん あります。ファッションは近くて遠い、すごく曖昧なもので、深みにはまることもしばし ばですが(笑)、考え続けることのできる人であれたら、と思っています。


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服を通して、様々な問題を提起をしファッションのあり方を人々に投げかけている繊維研究会。難しいことをしているようにも見えるが、その内面は意外なことに天田さんをはじめ”ただファッションが好きで、自由に着ることの何が悪い!”という考えを持っている学生が多かった。しかし、服飾業界での繊維研究会の役割を見失うことはなく、それぞれが「服飾業界において一般大学生が出来ることは何か?」と模索している。一般大学生ということを決してマイナスに見るのではなく、”一般大学生にしか出来ないこと”と逆手に取り学術や彼らの得意な分野でその考えを発表していく。その結果が服飾業界に対しファッションを改めて考えさせる”きっかけ”となり、一石を投じる存在となっているのではないだろうか。

実際に彼らのショーを見ていくと、”一般大学生にしか出来ないこと”と彼らが語るその様子がとてもよく分かる。昨年のショー「見えないものと見えるもの」では、鏡を用いた演出を行い、あえて実際に目で見ることが出来る”実像”と鏡に写った姿の”虚像”を同じ空間に併存させた。それにより、観客は実像を見ているのか、虚像を見ているのか区別がつかない。このような空間を作り出すのは、案外簡単なように見えて鏡の配置の緻密な計算と構成がとても重要となってくる。学術に長けている彼らだからこそ出来る演出、そして作ることが出来る服、今回のコレクションでも彼らによる緻密な計算によって作り上げられる”目の錯覚”を利用した演出がなされているだろう。是非、実際に彼らに騙されて欲しい。そして、「ファッションとは何か?」「ファッションショーのあるべき姿とは?」彼らがファッションを通し、改めて提示する問題に皆さんもご一緒に考えていただきたい。

今回のコレクションは完全予約制。ご予約は下記ホームページより。

http://wwen-i.org/news/2016/1023.html

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