ファッションをテーマに活動している若者のリアルや、業界に対する声をありのままに届ける連載企画「若者VOICE」。本企画vol.3では、横浜国立大/筑波大学2年生で「学生団体リプラス(Replus)」に所属する2人に団体の活動内容や自身の将来について取材した。

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【連載】「若者VOICE vol.3:横国/筑波大2年」服を作らないファッションサークル”リプラス”の学生が業界に感じる疑問や期待

profile:
西山綾加(写真左):横浜国立大学経営学部経営システム科学科。Replus6代目共同代表。
平山千尋(写真右):筑波大学社会国際学群国際総合学類。

【服を製作しないファッションサークル】

—リプラスがどんなファッションサークルなのか教えてください。

西山綾加(以下、西山): 私たちのサークルは“ファッションを通して、学生の可能性と希望の連鎖を”というテーマを掲げています。主な活動はファッションショーの運営です。ファッションショーと一口でいうと、作った服を見せるというイメージがありますが、リプラスは服を製作していません。企業などからリースしているので、“ただ服を見せる”というだけではなく、世界観形成というものを第一で考えたファッションショーになるように演出しています。

—ファッションサークルなのに、服を作らないのは意外ですね。そもそもなぜ服を作っていないのですか?

西山:理由は大きく2つあります。一つ目は、インカレサークルなので、活動拠点がありません。そのため、製作をする場所がなかったということです。もう一つの理由は、服だけを主体としてしまうと、本来リプラスが大事にしている世界観形成が難しくなってしまうのかなと思っているからです。私たちの考えるファッションは、ショーで使う音楽も映像も全て、全体の一つとして考え、幅広い意味でのファッションとして捉えています。

服は、本来デザイナーが作るものです。でも、私たちが服を製作してしまうと、それ1点に集中してしまうのではないかなとも思うんです。だからこそ、服だけで伝えるのではなく、ショーに含まれる全てを一つのメッセージとして伝えるということを重視しています。

平山千尋(以下、平山):一般的なファッションショーは歩いてポーズをして、というものが多いと思うのですが、リプラスでは歩くという行為だけでも、細かく設定を設けています。“ここではこんなポーズをする”と決めたり、 “ここで羽を散らす”とか。一つ一つに意味を持たせて、ショー全体の世界観形成を作り出していきました。

西山:ディズニーランドが作るイメージと、少し似ているのかもしれません。ディズニーランドは大人でも子供でも楽しめますよね。リプラスのショーもそのようなイメージを目指していて、ファッションを好きな人もそうでない人も楽しんでもらえ、結果として、リプラスを通してファッションをより好きになってもらえたら嬉しいですね。

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【最終的に洋服に興味を持ってもらえればいい。ファッションを好きになってもらえるきっかけになれれば…】

—今回はどんなショーにしたんですか?

西山:今回のショーは花言葉を組み立てて、物語を作ったのですが、ショーでは実際にモデルが物語に沿って花を持っていました。モデルには、花になりきってもらうイメージで、その花を具現化させたような服を組み合わせてスタイリングしました。大トリのモデルでは白いバラを表現しました。白いバラの花言葉は“私はあなたにふさわしい”という意味があり、物語のラストで両思いが成立したところに合うように組み立て、“さらに幸せオーラ全開!“というイメージを服だけではなく、表情や細かく設定した動きで表しました。

—では、演劇の要素も取り入れたということですか?いわゆるファッションショーというよりはエンターテイメント的なショーといったイメージですね。

西山:はい。まずは世界観から入ってもらって、最終的に服を見てもらえればと思います。こういった楽しみ方もあるんだ、と思ってもらえれば嬉しいです。

【どんな人でも親しみやすいエンターテイメント的ファッションショー】

—今回のショーで得たものはありますか?

平山:リプラスの軸がしっかりできたかなと感じています。

西山:そうですね。リプラスは団体設立が2012年とまだまだ若い団体のため、これまではテーマによって軸がぶれていることが多かったように思います。でも、私たちの代でリプラスという団体の土台をしっかりと固めたい気持ちが強くありました。

私自身は、他の学生団体のショーを見学するんですが、どの団体もとても洗練されていて、すごくかっこいいショーだと感じています。ただ、このようなショーは、本当にファッションに興味がある人じゃないと参加しづらいのではないかと、考えることがありました。その点においてはリプラスのショーはファッションに興味がない人でも軽い気持ちで見に来て頂いて楽しんでもらえる「圧倒的な親しみやすさ」があると思っています。

そうした強みを活かした土台を作るために、エンターテイメントというものが何なのかという根本的なところから始まり、最終的には他のファッションサークルとは違う、リプラスらしい“どんな人でも親しみやすいエンターテイメント的ファッションショー”を作ることが今回出来たのではないかと思います。

【様々な経験を通して感じた違和感】

西山:昔からファッション業界で働きたいと考えていました。でもいろいろなことを経験した結果 “私がやりたいことはこれじゃないな”と感じたんです。
—いろいろな経験というのは、ファッション業界で働いたりしたということですか?

西山:はい。私は服が好きだったので大学に入ってから販売のアルバイトとインターンを経験しました。そしてそれらの経験から“消費するための服を作りたいのではない”と気づいたんです。でもそうした経験から逆に、私がやりたいと思うことはリプラスでは出来ると思いました。そうなると服自体を楽しむという方向に持って行くことが大切になりました。

— “やりたいことはこれじゃない”と思ったのは、どんな背景があったのですか?

西山:私はもともと服のデザインは出来ないけれどファッションには関わりたいという思いから、ビジネスの視点で将来の仕事を考えていました。マーチャンダイザーになって企画から販売まで自分が携われれば、自分がデザイン出来なくてもお客様にファッションの価値を提供出来ると。そういった仕事をずっとやりたいと思っていました。

その仕事に就くためには、ファッション専門の経営学を学ぶより、もっと幅広く経営学を学ぶべきなのではないかと考え、横浜国立大学の経営学部を受験しました。私は岐阜で育ったので、関東の大学の方がより視野を広げることが出来るのではないかと思ったんです。「マーチャンダイザーになりたいです。」と言って推薦入試を受けました。

大学に入ってすぐ、学校の授業で、ある企業の方の講演を聞く機会がありました。その企業にとても興味を持ち、インターンを受けさせて頂くことになりました。それと同時期に販売のアルバイトを始めました。インターン先の企業は、服作りの背景を大事にされていたので、自分のやりたいことに通じる部分はあったのですが、「新しく服を作る」ということ自体にどこか疑問を感じていたんです。

服ってもういっぱいありますよね。こんなに沢山あるのに、どうして作らなければいけないのだろうと思いました。インターン先の企業は本当に服作りの背景を大事にしていて、働いていた時はその服がとても良いものだということは仕事を通してすごく感じました。でもやっぱり「売る」ために服を作っているのは事実で、背景を大事にしているのはわかるけど、“何か違う”という違和感が募る日々が続きました。

一方で、販売のアルバイトでは店員として店頭に立ってはいたのですが、自分自身が価値を見出せない服をお客様に売らなければならないということにとても疑問を感じていました。

それに、少しでも売り上げの良い商品があればすぐにその追加補充をしていたのですが、“でもその服って本当にまだ売れるの?”と思ったんです。下手をすると、縫製が悪かったりして、「これは店頭に出せないね」と言って捨ててしまったり、売れ残ると値下げして値下げして最終的には叩き売り状態で、“それって本当に作る必要あったの?”と感じるようになったことが一番大きなきっかけです。

平山:それはとても共感します。私もアパレルでアルバイトしているのですが、西山さんと同じような経験をしています。ある商品が売れて店舗在庫が少なくなったら、大量に追加補充されるシステム。私はそこにとても機械的なものを感じ、服の重みみたいなものをなかなか感じられなくなりました。

【ファッション=自己表現の時代は終わった?】

—ファッションって最近は何にとり変わったと思いますか?

西山:みんな今まで、必死に流行についていこうとしていた気がします。でも流行を追う中でもどんどん時代が変わっていって、流行についていくだけではダメで、“自分らしさ”という差別化をしなければならないというジレンマのようなものも感じていたのではないでしょうか。その中で、いろいろとやり尽くした結果、ファッションで“自分らしさ”を表すことに価値を見出せなくなってしまったのかなと思います。

平山:私は逆にファッションで自分を表すことが好きです。地元が長崎で、今通っている大学は筑波大学なのですが、長崎でも筑波でもおしゃれをすることによって”これが私の個性だ”というように自信を持って思えるし、自己表現も出来ていると思います。でも、いざ東京に来るとどんなにおしゃれをして個性を表現しても、すでに皆、個性に満ち溢れているので個性がぶつかり合ってしまっているなと感じました。一体何が個性になるのだろうと。西山さんのいうジレンマのようなものなのでしょうか。

—おしゃれをして自己表現をしていたけれど、東京ではすでにファッションでの自己表現が浸透しきってしまって、もうどうしたら良いのかわからないという感じですね?

西山:そうですね。なので、そのフィールドで闘い続けるのか、降りるのか。どちらかに分かれるのではないでしょうか。私も地元では“こんな服着て大丈夫かな”と思ってしまうような服を着ていたつもりでしたが、東京では割と“普通”というような感覚で着るようになりました。

最近は、ファッションって“自分を表現するもの”というよりは“自分を隠すもの”と考えた方がしっくりくるなと思うようになりました。自分の良い部分を引き立たせるために、上手に自分の良くない部分を隠す、それがファッションなのかなと感じるようになりました。

平山:日本では今、このような状況になっていますが、逆に面白いなと思ったのが、コンゴのファッション集団”サプール”です。昔の日本みたいだなと感じました。いわゆる発展途上の国の人が思いっきりおしゃれを楽しむという文化は、国や文化が違ったとしても繰り返しているのだなと感じます。ファッションってどこに行くんだろう!?ってちょっと思いますね(笑)。

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(READY TO FASHIONが行ったアンケート)

【現役大学生は何にお金を使うのか】

—では、そういう考えの中で、2人はどういった判断で服を消費しているんですか?

西山:自分に似合うものを買います。私はほとんど新品を買わないです。1着あたりだいたい3桁に収まるくらいの値段で、あえてリサイクルショップで買います。古着屋ではその時の流行を追って品揃えを変えているのですが、リサイクルショップは古着屋とは全く違って誰かが本当にいらないと思ったものが持ち込まれ、流行とかタイミングとか関係なく店頭に置かれます。その中で、“なにこれ(笑)”と感じるものを買うのが好きです。今日着ているものもサンキューマートで買いました。421円です。(笑)

平山:私は別かもしれない。昔は古着屋でも買っていました。でも最近は一度原点に帰ろうかなと思い、シュールなものがもともと好きなので、直感的に“面白い!”と感じたものや“それどこで買ったの!?”というものを買っています。

西山:結局自分が良いと思って、似合うものなら良いですよね。私自身は、もう新しい服を作らなくて良いのではないかと感じているので、自分が“良い!”と思うものを、あえて新品に求めることはなくなりました。

 【学生から作り手へのメッセージ】

—では、服を作る人たちはどういったものを作っていけば良いと思いますか?

平山:服を作る方たちはたくさんのことを勉強してから仕事に就きますよね。それってすごく重要なことだと思うので、そこは大事にし続けて欲しいです。その技術を持った上で、例えば、レッドブルのプルタブがあって、そのプルタブが“とっても面白い!”と感じたとしたらそれを技術を使ってクリエイティブして欲しいです。

西山:私は、もう新しいものを生み出すのってキツくない?って思います。服だけではなくてモノづくり全般に当てはまるかも知れません。オリンピックのロゴもそうだと思います。どこへ行ってもモノが溢れているので、クリエイティブをするということは本当に大変だと思います。新しいものを生み出すことを諦めても良いのではないかな、と感じています。

平山:私は逆にその隙間を縫ってでも人が作り出す新しいものを見てみたいです。例を挙げると、最近話題のロボティクス・ファッション・クリエイターのきゅんくんのように、最初は“え!?なにこれ!?(笑)”と思うような、一瞬 “ありえないでしょ!”と感じるような発想の掛け合わせでも良いので、新しいものを生み出し続けて欲しいと思います。

西山:でもそれって普段着れるの?

平山:普通の人は着ないかもしれないけれど、原宿ファッションのような感じで必ずどこかには着る人がいるのではないかと思います。確かに商品として売るのは難しいと思いますが、”売れる/売れない”ではなくクリエイティブとして生み出していって欲しいなと思っています。

【どんな業界にしていきたいのか。あなただから出来ることは?】

今回、同世代かつ同じサークルに所属する2人に話を聞くことが出来たが、2人に共通することは、“服が好き”ということ。しかし、これからのファッション業界に対しての期待は全く異なっていた。将来の仕事の一つとしてファッション業界に興味を持っているREADY TO FASHIONの読者の皆さまは今回の記事を読んでどう感じ、そしてどんな業界にしていきたいと思っただろうか。あなただからこそ出来ることは何なのか、考えてみてはどうだろうか。

Text:Reiko.SREADY TO FASHION 編集部)

Photo:Satoshi.T&Replus

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READY TO FASHION MAG 編集部

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