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新進気鋭のクリエーターと共に制作しているファッションフリーマガジン「Uni-Share」が2017年10月22日(日)にUni-Share Vol.15「身震い」をリリース。本紙でしか見ることができない内容を、READY TO FASHION MAG内にて特別に公開。

インタビュー企画テーマ:「胎動」画家内田すずめ

画家内田すずめ:「幽霊画展 2014」においてデビュー作「拒食と自」を発表し、大賞を受賞。以来、勢いをそのままに活躍の幅を広げている、今最も注目すべき画家の一人。今回はそんな彼女の背景に迫る。

2013 年に「新語・流行語大賞」にノミネートされた“悟り世代”という言葉を耳にしたことがあるだろう。不況の時代に生まれた現代の若者たちは現実主義で合理的だ、ということを意味する言葉だ。実際に私たちは、過去の若者たちよりも上手に生きることができる。しかしそれは人生を豊かにするだろうか。「遠回りを恐れない」「失敗を恐れない」。彼女のメッセージは、そんな若者世代への大きなヒントになるのかもしれない。

ー内田さんが絵の道に進もうと思ったのはどんなことがきっかけだったのですか。

私はやっぱり子供の頃から絵を見るのも描くのも好きで、ずっと絵を描く仕事をしたかったんです。イラストレーターになりたくって。で、中3の時に美術大学に進みたいって相談したら、親にすごく反対されたんです。進学校に通ってたから、学校辞めちゃいなさいとまで言われちゃって。それでも押し切って美術予備校行ったりしてたんですけど一度、絵の道で挫折したんですよ。美術予備校で。他人の絵と自分の絵を比較されることに耐えきれなくなったんです。美術予備校って、要は美術大学に入るための受験準備するところだから、 絵をバーって並べて、1から100 まで順位が付けられるんですね。絵が好きだからこそ、こんな風に比べられるのはたまらないな、もう辛いなと思って。こんなことでくじけるような私は、やっぱり絵の道に進んではいけないんだろうと思って、諦めたんです。ただデザインだったら企画とアートの両方で勝負できるかなと思って、筑波大学の芸術学部のデザインっていうところに入ったんですよね。そういう経緯です。なので絵画は好きだったけ ど、もう諦めようと思ったので高校の時から10年近く触れてませんでした。

ーそんなに長い間触れてなかったのに、どうしてもう一度描き始めようと思ったのですか。

今再び描き初めて三年半くらいなんですけど、また始めたのにはきっかけがあって。20代半ばの頃、たまたま銀座の画廊に足を踏み入れる機会があったんです。でも私はそれまで銀座の画廊って5,000万の壺とか売ってる場所だと思ってたから、敷居が高くて入れなかった。でもネットで展示を見つけて、いいなと思って行ってみたんですよね。そうして初めて、銀座に画廊が何百軒もあることや、若手作家が頑張って展示して販売している画廊もあると知りました。それから画廊巡りを始めて、同世代の人たちが努力している姿に触発されて。やっぱり自分も描いてみたいなって思って絵を始めました。

ー絵を再開してまだ数年なのにあんなに描けるんですね。

さっき諦めちゃったって言ったんですけど、でもあの時諦めつつも、頑張ってたなとは思うんです。今描けるのは、10代の時に一生懸命絵を描いていたからかなと。あの頃に本気で取り組んだことが今の自分を支えてるって思います。10代の時に本気で頑張れたことは、20代30代までずっとつながると思い ます。

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ー服と絵の関係性についてどう考えていますか。

絵の中に登場する服に関して言うと、個人的には流行を意識し過ぎてはいけな いと思っています。いろんな画家、いろんな考え方があると思うんですけど、 私としては流行最先端の服を絵の中で着せたくないんです。なぜかというと、 絵は作家が死んだ後も残るものだから。2、3年でちょっと古臭く見えるかもっていう一時の流行の服よりは、時代を感じさせ過ぎない平成のスタンダー ドな服を登場させたいと思いますね。

ー何か絵から滲み出てくるものがあるのですか。

それはあると思います。例えばルノワールの肖像画ってすごくて、人物の内面というか、その人物らしさをキャンバス上に込めることができるんですよね。例えばある可愛らしい女の子の絵があるんですけど、女の子にしてはやんちゃで落ち着きがない絵だなと思っていたんです。そしたら実際にちっちゃい男の子が女の子の格好を大人にさせられているっていう絵で。そういう内面的なものを絵に出せるんだっていうのは驚きました。

ーゴッホの自画像についてのエピソードはありますか。

ゴッホの時も、知識なしに見て怖いなと思ったんですけど、後々調べてみたら、その絵はゴッホが気を狂わせて自身の耳を切り落とした前後に描いた自画像で。あ、やっぱりこういうのも絵に込められるんだ、怖いなという印象があります。

ー絵を描くとき、どのようなものにインスピレーションを受けますか。

自分の経験がインスピレーションになることが多いです。過去のトラウマを解放してやりたい思いが出発点になると言いますか。拒食症になった時のこともそうだし、死にたいなと思った気持ちもそうですが、私にとって絵を描くことは自分の過去や現実に向き合うことです。結局そこに対して自分なりの回答が持てないと、絵も完成しないんですよ。だから絵を完成させることは、辛い体験もちゃんと乗り越えたぞっていう自分自身の確認になる側面があります。絵を描くことで負のエネルギーを希望に変えられますね。

ー自分の中でこれだけは負けないというものはありますか。

遠回りを恐れない力、でしょうか。私は10年間の遠回りをして絵の世界に戻ってきましたけど、今、沢山の幸せなご縁に恵まれて活動出来ています。そのご縁はひょっとしたら、10年の中で色々な経験をしてきたからこそ巡り合えたご縁なのかもなと。だから、遠回りしたことをそこまで後悔してないです。十代の時に絵の道を選べていたら違う人生があったかもとは思ったりはするんですけどね。ただ、いろいろなことをやってみて吟味する時間を持つことに焦りを覚 えない。良くも悪くも、マイペースな力はたぶん強いでしょうね。

ー昔と今を比べて、心境の変化はありますか。

「生きていかなきゃ」ってちゃんと思えるようになりました。結局、学生というか10代のうちは責任の範囲が狭いというか、自分のことしか見えていなくて。死にたい死にたいってだけだったんです。でも、それが絵を描くようになって関わる人が多くなって応援して下さる人もいて。幸運なことに、作品をいいねと言って買って下さる方もいらっしゃいます。そのことを考えると、もっと頑張らなきゃ、絵を描き続けなきゃ、生きなきゃって気持ちになるんです。だから今ここで、ちょっ と突飛な言い方だけど、自殺してしまったらそれはすごく無責任なことだなっていう風に 思えるようになりました。

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ー最後に、若者に伝えたいことはありますか。

失敗を恐れないで、ですかね。私は親から怒鳴られて育ったから、年上の人間に怒られるのが怖くて。人の機嫌を伺うことが第一優先になっていました。だから、大失敗はしない学生時代だったかもしれない。でも、大失敗できるのは学生の内だけなんですよ。0点とかマイナス100点の失敗をしてもまだ叱ってくれる人もいるし、大失敗したらそこから学べるじゃないですか。そしたら次は大成功できるはず。平均点ばかり狙うやり方をしていると、120点とれなくなっちゃうんです。だから失敗を恐れないでどんどん取り組むことが大切だと思います。

Uni-Shareとは

首都圏の大学生で構成されたファッションフリーペーパーを発行している学生団体。

10月22日に最新号vol.15をリリースし、同日に開催された写真展『残響』も多くの動員数を誇り成功に収めた。今号ではVETEMENTSのランウェイにアジア人で初めて抜擢された木下マナミをメインビジュアルに起用、モトーラ世理奈が主演を務める映画『少女邂逅』とのタイアップも果たした。

webサイト:http://www.uni-share7.com

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READY TO FASHION MAG 編集部

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