【Report】日本発信の次世代デザイナーと日本のテキスタイル産地が世界で活躍していくために今できることとは?

 

Tokyo新人デザイナーファッション大賞事務局が、2017年3月22日〜28日に、次世代デザイナーとテキスタイル産地が協働した作品を展示する「クリエイターズトウキョウ 8ブランド×8産地のコラボレーション展」を銀座三越にて開催。開催初日には、業界著名人を招いたトークショーが行われ、本記事ではそのトークショーの様子をレポート。

 

関連記事:【EVENT】将来ファッション業界を牽引する若手デザイナーとテキスタイル産地によるコラボレーション展が3月22日より開催!

 

【モデレーター】
・向 千鶴氏(写真:右)
ファッション業界の専門紙WWDジャパンの編集長を務める。
【登壇者Profile】
・ミーシャ・ジャネット氏(写真:中央)
文化服装学院を卒業し、ファッションジャーナリスト兼ブロガーとして活動。海外では「日本はギャルソン以降、何も話題になるブランドがない。」と言われていたが、彼女は“ただ日本のファッションの情報が回ってないだけで、そんな事ないはずだ”と思いブログを始めた。現在は日本語と英語で日本のファッションを全世界に発信する。
・宮浦晋哉氏(写真:左)
セコリ荘オーナーで「ものづくりの学校」を主催。セコリ荘とは、人と人をつなげるコミュニティープレイス。宮浦氏は、平日は産地を回り、土日はセコリ荘に集まった人々と産地の話などを繰り広げ、人と人を繋ぐような場を提供。今回の企画では、ブランドと産地を繋ぐコーディネーター役として携わった。

 

関連記事:【Event】おでんプロジェクトISSUE 002 『最後に笑う、モノ作り。(産地×デザイナー×若者)』

 

【ユキヒーロープロレス×レザーブルゾン】

ハンガーラック一番左にかかっているのが、ユキヒーロープロレスのレザーブルゾン

 

向 千鶴氏(以下、向):今回、宮浦さんはブランドと産地を繋ぐコーディネーターとして活動されていましたね。両者を繋ぐのにどのような考えがあったかなどお伺いしたいと思います。まず初めに、ユキヒーロープロレスにはどのようなお考えのもと、工場を紹介したのですか?

宮浦晋哉氏(以下、宮浦):レザーの工場を紹介しました。今回、そこを紹介することにしたのは、ユキヒーロープロレスがレザーを扱う産地と繋がりが弱かったため、そのような方向性が良いかなと思いました。

ミーシャ・ジャネット氏(以下、ミーシャ):このブランドはコンセプトがしっかりしているので、様々なデザインのテキスタイルに挑戦しやすいブランドだなと思います。コンセプトがあやふやで幅広いものだと、逆に何を作るべきなのかわからなくなると思います。そういった点で、ユキヒーロープロレスの服は「次はどういう表現をするのかな?」ということをお客さん側も楽しみに待つようになりますよね。

宮浦:そうですね。それに技術面から見ても、コンセプトがしっかりと定まっているからこそ、活かせる技術というものがあります。“このコンセプトであればこの技術を使おう!”というような感じです。逆にコンセプトがなく、工場の技術だけが先行してしまうと、ただの“テクニックショー”になってしまうのでそこのバランスは大事です。

 

【MIDDLA×白シャツ】

 

向:世の中には様々な白シャツが溢れていますよね。それでも今回「MIDDLAは白のシャツを作りたい」となった理由はなんだったのでしょうか?

宮浦: MIDDLAはシャツにこだわってきました。デザイナーの安藤氏は日本で流通している白シャツでは満足していないと言って、実際にイタリアのシャツを僕に見せて下さったんです。そのシャツを見せてもらったことによって、僕自身も日本のシャツがもっと良くなる伸び代があるのではないかと思うようになりました。イタリアのシャツの良さというのはとろみ感と肌触りが日本製のものとは違うという点です。今回はそこを意識しながらシャツを作りました。工場は兵庫の東播染工というところで、糸の選定からこだわりました。また、このシャツは「タイプライター」という生地を使っているのですが、MIDDLAではこの生地にこだわりを持っていて、究極のタイプライター地*というものを追い求めています。100点ではないですが、かなり満足のいく仕上がりまで持ってくることができたと感じています。

*タイプライター地:高密度で織られており、タイプライターで文字が打ち込めるほど、ペーパーライクのもの。

向:なるほど。生地一つとっても背景があって面白いですね。ミーシャはそういった出来上がるまでの背景を気にして服を選んでいますか?

ミーシャ:そういった事を気にし始めるとキリがないので、最終的にはビジュアルで選んでいますね。いくら背景やストーリーがあったとしても服を選ぶ側が納得できるものでないと、そこまでする意味がなくなってしまうと思います。服を選ぶ側は出来上がったものを見て満足した後に、背景というものをプラスαとして捉えるという感じですね。

向:真理ですね!最終的に出来上がったものと、それのストーリーの両軸を考えてないといけないなんて、お洋服を作るのって大変ですね。

 

【5knot×チェックパンツ】

向氏が持っているのは5knotのパンツ

 

宮浦: 5knotの企画では「二重織りでポンポンをつけたい」というデザイナーの作りたいテキスタイルが既に明白でした。そこでカナーレという工場を紹介したのですが、カナーレの生地は独自性を持っています。でもその“カナーレ”っぽさを持ち合わせながらもブランドと調和できると考えました。“5knotがデザインした服だけど、カナーレの生地を使っているんだ”という、ちょうど良いバランスを保つことができるというのは、本当に至難の技なのですがそれができた工場だと感じています。

ミーシャ:このブランドは“ヴィンテージやリメイクをどう今っぽくするのか?”ということを打ち出すのが得意なブランドですよね。それに全体的にツイードを取り入れているコーディネートが素敵です。派手だけど、落ち着いているというようなバランスの良さは、良いテキスタイルを使っているからこそ洋服のデザインを引き立たせてくれているということなんでしょうね。

向:ミーシャはテキスタイルのデザインとかしたりするんですか?

ミーシャ:テキスタイルのデザインはしませんが、文化服装学院が開催しているファッションコンテストのテキスタイルの審査員を務めています。若い人たちが作り上げるテキスタイルを見て、とても刺激を受けています。その経験から“テキスタイル=アート”というイメージを持つようになりました。

宮浦さん:そうですね。テキスタイルを作るというのは、“織機の上で絵を書く”イメージだなと僕は感じています。

ミーシャ:審査員の仕事を通して、生地の中には作った人の物語が込められているということを感じているので、テキスタイルを作る工場がその物語を伝えることができる機会をなかなか得られないのはもったいないことだなと思っています。

 

【meanswhile×MA–1】

 

宮浦:このMA–1は、表裏が違う素材になっているダブルフェイスの生地を使用しています。ボンディング*という技法を使わず、最初から1枚の布になっているということが特徴の二重織りの生地です。

*ボンディング:表地と裏地を接着剤で貼り合わせて、表裏に違いをつける。

工場は福井のウエマツというところなのですが、技術が抜群にあるため、工場に行くとダイヤの原石となる面白い生地が溢れているんです。でもその技術を使った製品化はなかなか難しいというのが現状です。でも、meanswhileのデザイナー藤崎さんであればこの原石をうまく磨いて、良いプロダクトに仕上げることができると考えました。

ミーシャ:ちょっと話はずれてしまうんですが、小ロットの注文を工場に頼むことは難しいと聞きます。そこはどうやってお願いしているんですか?

宮浦さん:おっしゃる通りです。通常では小ロットの仕事って請け負ってもらえないのですが、“デザイナーさんを応援したい”というような工場側の想いで請け負って頂けているという感じです。実際に職人さんたちも90%はいわゆる利益が出る仕事を受けて、10%はわくわくする仕事をしたいという気持ちもあるので、そこをうまく汲み取ることが大事になってきます。

 

【日本が世界で闘うために鍵となるのは“デザイナーと産地のタッグ”】

 

向:今回の仕事に携わって何か自分自身の中で変化はありましたか?

宮浦:この仕事を頂いた当初は自分にできることはないのではないかと思ったのですが、実際に取り組んでみると、デザイナーの方々も産地の方々も、そして自分自身もまだまだできることがあるんだと思えましたね。

ミーシャ:今日色々と話をさせていただいていく中で、洋服がクローゼットに入ることは奇跡なんだなと思うようになりました。洋服が出来上がるまでの過程は、糸の選定から始まって、テキスタイルができて、デザイナーが服をデザインして、ファッションショーがあって、店舗で販売されて…という長い道のりを経て、やっと洋服が消費者の手に渡る。だから、自分のクローゼットに入っている服って奇跡的に出逢えた服なんだなと思いました。

向:今、皆さんや私が着ている服も、奇跡の出会いがあったのですね。

ミーシャ: 最近のファッション業界はごちゃごちゃしているなと感じています。リアルクローズな服ばかりで面白い服がないねと言われたと思ったら、コレクション用の服ばかりで売れそうな服がないねと言われたりとか。いったいどちらを作ればいいのだろうと思います。

それに日本で売れる服はベーシックなものが多いですが、海外ではベーシックプラスαという、何かしらのオリジナリティーがないと埋もれてしまうと思います。そうならないためにも生地からこだわってオリジナリティーな服を作るということは日本のファッション業界にとってものすごく大事なことだと感じています。

“面白い、だけど着ることができる服“というバランスの良い服を作るということが日本のファッション業界が海外で闘っていけるようになるための課題なのではないでしょうか。

向:すごく説得力のあるお話ですね。ミーシャはなぜ今の仕事をやっているのですか?

ミーシャ:ファッションからパワーをもらえるからです。変身とまではいかないですが、気分の変身ができる道具だと思っています。それにそういう気持ちの部分をその時に着ている服を通して、見ている相手にも伝えることができる一つのツールなのかなとも思います。

向:なるほど。服って、絶対いるものじゃない。でも絶対なくてはならないものですよね。

ミーシャ:そうですね。お洋服とファッションって意味が違うと思うんです。お洋服は向さんが言う絶対になくてはならないもののカテゴリで“ただ体を覆うだけ”というイメージ。でもファッションって絶対にいるものではないというカテゴリではあるけれど、“自分自身をレベルアップさせてくれるもの”というか、自分をより一層引き上げてくれるものだなと思っています。

向:素敵なお話ですね。お二人とも本日はありがとうございました。

 

【今こそ日本の良さを発信していく時なのでは?】

 

日本は以前、「ものづくり大国」と称され、ファッション業界だけではなく様々な分野で、高度な技術を活かし世界と闘ってきた。しかし近年では、工場は海外に依存し、ものづくりの文化が薄れつつあることは、職人と呼ばれる人々の高齢化や後継者不足の話題からも感じ取ることができる。

日本のものづくりが再び元気を取り戻すことで、そこで従事する人の生活もより豊かなものになる。言葉にしてしまうととても簡単だが、成し遂げるのは難しい。かといって、行動を起こさなければ今と何も状況は変わらないであろう。少し壮大な話になってしまったが、出来ることから一つずつ始めていけば良いのではないだろうか。今回で言えば、まず日本の「ものづくり」という観点を今一度見直してみることがきっと小さな一歩前進につながるだろう。

 

Photo:Satoshi,T(READY TO FASHION

Text:Reiko.SREADY TO FASHION MAG編集部)

ファッション業界と繋がる
この記事をシェアする
READY TO FASHION をフォローする