三日月モチーフをシグネチャーにした、独自のアイテムでファッション業界を席巻している「マリーン・セル(Marine Serre)」。アップサイクルやサステナビリティを取り入れたデザインは、新しい時代のクリエイションとして注目を集めています。

この記事では、ブランド誕生までの背景や、デザイナーの歩み、最近の動向を詳しく解説。マリーン・セルの魅力を詳しくひもときます。

マリーン・セルとは

マリーン・セルとは、デザイナーのマリーン・セルによって、2016年に設立された、パリを拠点とするブランドです。コンセプトは、「エコフューチャリスト」。2016年の設立当初からアップサイクルやリサイクル素材を駆使したサステナブルなクリエイションを実践してきました。

ブランドのアイコニックである三日月を配したデザインをはじめ、特徴的なシルエットや素材使いで知られる同ブランド。

2017年には、史上最年少でLVMHプライズのグランプリを受賞。その後も、デュア・リパのアルバムでの着用や、ビヨンセ、カイリー・ジェンナーがSNSで着用姿を披露するなど、ファッション業界のみならず海外のセレブリティからも支持され、新時代のファッションシーンをけん引するブランドとして注目を集めています。

マリーン・セルのヒストリー

デザイナーのマリーン・セルは、1991年、フランス中南部の自然豊かなコレーズに生まれました。幼少期から環境を大切にする価値観が自然と身につき、マルシェやブロカント(古道具が並ぶ蚤の市)、エマウス(社会支援を目的にリサイクル販売を行う店)で購入した服を直したり、両親の洋服を自分のサイズに直したりすることで、服作りの原点を育みました。

もともとプロテニスプレイヤーを目指していましたが、怪我をきっかけに断念。その後、ビンテージコレクターであった祖父の影響から、ファッションに興味を持ち、長年集めてきた大量のビンテージウェアのコレクションを再現したいとの思いから、ベルギー国立ラ・カンブル美術大学に進学します。

在学中は、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」や「ディオール(Dior)」、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」、「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」といった世界的なブランドでインターンシップを経験。デザイン技術だけでなく、生産や組織運営についても学びました。

また、在学中には、《15-21》と題したコレクションでデビューするなど、着実な経験と実績を積んでいきます。

大学を首席で卒業した後は、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデザインチームに加入。 Demna Gvasalia(デムナ・ヴァザリア)のもとで1年間、ジュニアデザイナーとして活躍しました。

そして、2017年、バレンシアガに在籍しながら、19世紀の中東のコスチュームとスポーツウェアから着想を得た2017年秋冬コレクション「RADICAL CALL FOR LOVE」を発表し、若手デザイナーの登竜門であり、世界最高峰でもあるファッションコンテストLVMHプライズに選出されます。

受賞前から、「ドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market)」や「ノードストローム(Nordstrom)」、「エッセンス(SSENSE)」などの世界的に有名なセレクトショップからの注目を浴び、同年6月には、満場一致で史上最年少でグランプリを受賞。『The Business of Fashion』による「ファッション業界を代表する最重要人物500人」にも選ばれています。

同年9月、自身のブランドに専念するため、バレンシアガを退社。2018年2月には、25パリコレクションにデビューし、「Manic Soul Machine」を発表。「futurewear」のプリントが話題を集めました。

このコレクションは、45%が古着で作られているのが特徴。1,500枚以上のビンテージシルクスカーフを用いたハイブリッドドレスや、古着をアップサイクルしたドレスなど、サスティナビリティを先鋭的に提示しました。

その後はメンズラインも展開し、2020年秋冬から本格的にメンズウェアをプロデュース。2019年から2020年にかけては売り上げが95%成長するなど、急速な成功を収めています。

三日月ロゴの理由

マリーン・セルのアイコンとも言える三日月は、デザイナー自身が「時代に左右されない要素」として選んだものです。

国や文化によって意味が異なる三日月は、さまざまな解釈があります。デザイナーは「見る人によって解釈が違っていい」と語り、多様な解釈を許容するデザインになっています。

マリーン・セルのクリエイションの特徴

サステナブルへのこだわり

創業当初から、アップサイクル製法にこだわったもの作りを貫いています。各コレクションでは、リサイクル素材や古着を用いた作品を展開してきました。

2020年秋冬コレクションでは、カーペットから仕立てたドレスや、複数のプルオーバーを解体して再構築したドレスを発表。また同年には、ECサイトを開設し、素材ごとに検索できるアーカイブ作品を掲載するなど、サステナブルな取り組みをより身近に伝えています。

2022年の秋冬コレクション「Hard Drive」の92%は再生素材で作られています。(うち、アップサイクル、デッドストック、リサイクルファブリックが70%、オーガニックコットンなどのサステナブル認証素材は22%)パリのスタジオでは、衣料品を解体し、アップサイクル素材が独自に製造されています。

デザイナーは、「古着を用いていることを強調するつもりはない。リサイクルブランドやエコファッションのレッテルを張らないで。そういった服の作り方が当たり前になるべき」と語っています。

4つのラインを展開

「マリーン・セル」では、異なる4つのラインを展開しています。ブランドでは、特定のミューズ(女性像)は存在せず、「誰もがミューズになれる」という姿勢を掲げています。

Border Line(ボーダーライン)

アンダーウェアを中心とした「セカンドスキン」ライン。身体とウェアの境界を曖昧にし、素肌と洋服の垣根を取り払うことを目指しています。

Red Line(レッドライン)

ユニークで職人性のあるコレクション。クチュール的なアプローチを取り入れ、レッドカーペットを想起させる華やかさを持ちながら、既成概念を揺さぶる実験的なラインです。

White Line(ホワイトライン)

多機能かつベーシックなアイテムを展開するライン。「人生の始まりから終わりまでを祝福する」というコンセプトのもと、昼夜問わず人生を謳歌できる幅広いコレクションをそろえています。

Gold Line(ゴールドライン)

実験性の高いクリエイションを追求するライン。今までにないハイブリッドな手法を模索し、未知のハイブリッド・モードを探究した精巧なコレクションを展開しています。

定番アイテム

セカンドスキントップス

ブランドを象徴する三日月ロゴを全面にあしらったアイコニックな一着。リサイクルジャージーを混紡したストレッチ素材を使用しています。

ボディスーツ

三日月ロゴのボディースーツは、ビヨンセが「ALREADY」のミュージックビデオでダンサーたちと共に着用したことで大きな話題に。ソフトなリサイクルジャージ素材を用い、人間工学に基づいた設計で、身体のラインに美しく沿います。

ムーンデニム

複数のリサイクルジーンズをアップサイクルして生まれたデニム。三日月ロゴを用いたパッチワークと、程よくゆとりのあるストレートシルエットが特徴です。

アンダーウェア

セカンドスキントップやレギンス、アンダーウェアは、新ライン「ボーダーライン」展開しています。

ハイブリッドドレス

アップサイクルしたコットンTシャツやシルクスカーフ、セーター、軍用生地などを再利用して作られたドレス。異素材を組み合わせた独創的なデザインが特徴です。

最近の動向

陶器メーカー「ファイアンスリ・ドゥ・ジアン」とコラボを発表

フランスの老舗陶器メーカー「ファイアンスリ・ドゥ・ジアン(Faïencerie de Gien)」とのコラボレーションアイテムを発売。アップサイクルされたジアンの陶器をベースに、ブランドを象徴する三日月モチーフをあしらった特別なコレクションを展開しています。

2024年、2025年にかけて日本でのポップアップを開催

2024年10月には、ヌビアン渋谷でポップアップを開催。ブランドの最新作をはじめ、ベストセラーの「ORGANIC COTTON 1X1 RIB T-SHIRT」の別注デザインも販売されました。

また、2025年4月には、伊勢丹新宿店にて2025春夏コレクションのポップアップを開催。ムーンモチーフや再生素材を使用した最新アイテムが多数ラインアップされました。


現在(2025年7月23日時点)、三喜商事株式会社では、Marine Serre 渋谷PARCO店 オープニングスタッフを募集中です。ブランドの世界観を日本で体現する最前線に立ちたい方は、ぜひチェックしてみてください。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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