「マリテ+フランソワ・ジルボー」と聞いて、フランスの老舗ブランドを思い浮かべる方もいれば、韓国で人気を集めるトレンドブランドとして認識している方もいるかもしれません。
この記事では、そんなマリテ+フランソワ・ジルボーが設立された背景から最近のグローバルな展開までを詳しく解説。ブランドに興味がある方はもちろん、マリテ+フランソワ・ジルボーでのキャリアに関心がある方もぜひご覧ください。
マリテ+フランソワ・ジルボーとは
「マリテ+フランソワ・ジルボー(Marithe + Francois Girbaud)」は、マリテ・バシュレリーとフランソワ・ジルボーによって、1972年にパリで設立された既製服ブランドです。
彼らは、ジーンズを石で洗い、色落ちと柔らかい質感を演出するストーンウォッシュの技術や、バギージーンズ、ストレッチデニムといった革新的な技術とデザインを次々と開発し、ファッション史に名を刻みました。
また1980年代〜90年代には、ヒップホップカルチャーに支持され、音楽やストリートシーンとも共鳴しながら、カルト的な人気を獲得。とりわけ、ラッパーたちのスタイルの象徴的な存在として親しまれました。
一時は経営難やトレンドの変化により衰退しましたが、ストリートファッションやY2Kファッションのリバイバルの流れを背景に、2023年頃から再び注目を集めています。
2019年には韓国企業「レイヤー(LAYER)」とアジア地域におけるライセンス契約を結び、リブランディングしたことで、Kファッションとしても再評価されるようになりました。
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ブランドの誕生。デニムの可能性を大きく広げ、注目を集める
ファッションの常識に挑戦するという共通の情熱を持っていたマリテとフランソワは、1967年にフランスで出会い、すぐに意気投合しました。
フランスのクチュールに根ざした経歴を持ち、創造的なセンスと実用的な衣服に関心を持つマリテ。一方、マーケティングの才能に長け、デニム文化とアメリカンスタイルに興味を抱いていたフランソワ。
そんな2人は、1968年に最初のブランド「サ(ÇA)」を立ち上げます。
オランダのカジュアルブランド「シー・アンド・エー(C&A)」から商標訴訟を起こされるなどの困難に直面しましたが、1972年にはパリの中心地であるレアール地区に最初のショップ「アルカポネ(Halle Capone)」をオープン。従来のアメリカンジーンズの概念を覆し、ヨーロピアンテイストを取り入れた斬新なデザインで、瞬く間にファッショニスタたちの注目を集めました。
1976年には、マリテが工業用ストーンウォッシュの実用化に成功。当時主流だった硬く着心地の良くないデニムに代わり、柔らかく独特な風合いを持つデニムを生み出したこの技術は、デニム業界に大きな衝撃を与えました。(※ストーンウォッシュの技術自体は1950年代に他社が使っていた可能性があり、ジルボーが実用化を普及させたという見方もあります)
ちなみに当初は、「カンパニエ・デ・モンターニュ・エ・デ・フォレ(Compagnie des Montagnes et des Forêts)」や「クローズド(Closed)」など、10以上のブランド名やライセンスのもと、ジーンズを発表していました。
そのため、ヴィンテージ市場では、どの製品がジルボーに由来するのかを見分けるのが難しく、アーカイブ調査が複雑になる一因ともなっています。
1977年には、伸縮性繊維と綿を組み合わせたストレッチジーンズを開発。さらに、ゆったりとしたシルエットのバギージーンズを「カーゴ・バギー」という名前で発表し、ストリートにも影響を与える存在となりました。
そして1986年、ついに2人の名を冠したブランド、マリテ+フランソワ ジルボーとしてブティックをオープン。パリのルーブル美術館で行われたファッションショーで、パリ・コレクションにデビューを果たしました。
メディア露出でカルト的な人気を獲得
1970年代から2000年代にかけて、数々の革新的な技術を発表。縫製を使わずに生地を接合する「超音波溶着」や「レーザーカット(1990年代)」、レーザーで模様を刻む「イマージュ(2003年)」、高節水の洗浄技術「WattWash(2008年)」など、時代の先を行くプロダクトで注目を集め続けました。
1990年代に入ると、ブランドは急速にグローバル展開を開始。デニムウェアにとどまらず、レザーシューズやアクセサリー、アイウェア、スポーツウェアなど幅広いアイテムを展開し、トータルファッションブランドとしての地位を確立していきます。
特に90年代にはアメリカでも人気が爆発。ヒップホップカルチャーやストリートファッションと密接に結びつき、多くのアーティストやダンサーたちが愛用したことで、一大ムーブメントとなりました
例えば、1983年公開の映画『フラッシュダンス』では、主演のジェニファー・ビールスがバギージーンズを着用し、700万本が売れる大ヒットに。
また、ヒップホップグループ、クリス・クロスが1992年に発表した楽曲『Jump』のMVでは、ジルボーのバギージーンズを着こなすスタイルが話題となり、ティーン世代を中心に爆発的な人気を獲得しました。
さらに、映画監督、ジャン=リュック・ゴダールが手がけた広告映像の影響もあり、1990年代まで熱狂的な人気を集めました。
大々的な広告活動をしていなかったにも関わらず、当時のミュージックビデオには頻繁に登場し、B.I.G(ビギー)、アウトキャスト、マスターP、リル・ウェインといったアーティストの歌詞にも名指しで登場。ジルボーは実用的な高級品として認知されるようになり、ストリートにおける絶大なステータスシンボルとなっていきました。
2000年代に入り、徐々に人気が衰退
2000年代に突入するも、ジーンズメーカーとのコラボレーションや世界各国での旗艦店・フランチャイズ展開などを通じて、ブランド拡大を続けていました。
しかし、2000年代後半には売り上げが急減。ゆったりとしたシルエットが特徴的だった同ブランドのスタイルはトレンドの変化により徐々に人気を失い始め、2012年に破産。ブランドは事実上、休眠状態に入りました。
韓国企業がライセンス取得で再ブーム到来。本国ブランドも再始動へ
そんな中、2019年にジルボーの親会社が国際ライセンスを韓国法人のレイヤーに売却し、韓国市場向けにブランドをリブランディングしました。
レイヤーはアジア全域のマリテ+フランソワ・ジルボーのライセンスを所有し、オリジナルラインとして、国内限定コレクションを展開。現在では、60を超える実店舗を展開するなど、Z世代を中心に再び注目を集めるストリートブランドとして人気を博しています。
一方で、本国のマリテ+フランソワ・ジルボーでは、2023年末にブランド名を「ジルボー(Girbaud)」へと変更し、再始動。韓国で展開されているブランドとは一線を画し、アーカイブの復刻やアートプロジェクトを中心に活動を展開しています。
Z世代に支持される理由
Y2Kトレンドの文脈で再燃
韓国をはじめとするアジア圏で再び注目を集めている同ブランドですが、アーカイブファッションやY2Kのブームの文脈でも、支持を拡大しています。
TikTokでは、古着屋で手に入れたヴィンテージのジルボーのジーンズをシェアする動画が多く投稿されています。
@styxstuck Live laugh love girbauds #fyp #swag #fypツ #2000s #baggyjeans #y2k #girbaud #ootd #trending #baggy ♬ Meat Grinder – Madvillain & Madlib & MF Doom
韓国ブランドとしての人気
韓国版のマリテ+フランソワ・ジルボーは、韓国アイドルやインフルエンサーの着用も相まって、韓国のMZ世代を中心に、アジア全域のZ世代から再び世界的な注目を集めています。
売上は2019年の約3億ウォンから、2024年は推定1500億ウォンに到達するとされ、わずか5年で500倍以上の成長を遂げたと言われています。
韓国の若年層に人気のある3大ブランド「マリテ+フランソワ・ジルボー」、「マーティンキム(Matin Kim)」、「マルディメクルディ(Mardi Mercredi)」の3ブランドの頭文字をとって、「3マ(サンマ)」と呼ばれる現象も話題に(※参照)。韓国国内のみならず、日本や台湾といったアジア諸国でも人気が拡大しています。
最近の動向
本国のジルボー、「シュプリーム」とコラボレーションで話題に
2025年春夏コレクションにて、本国フランス発のジルボーが「シュプリーム(Supreme)」とコラボレーションを発表し、話題を呼びました。
今回のコレクションでは、レザーフライトボンバージャケットやデニムジャケット、バギージーンズ、レザーカーゴパンツなど、ジルボーらしいユニークな加工技術とシルエットが、シュプリームの視点で再構築されています。
中国・香港への進出(韓国版)
韓国発のマリテ+フランソワ・ジルボーは、2025年に中国市場へ本格参入。第一弾として、上海に旗艦店をオープンしました。店舗の内装は、ソウル・ハンナム洞にあるフラグシップストアからインスピレーションを受けたもので、約1,200平方フィートの広々とした空間が印象的です。
今後は、杭州、北京、上海(2号店)を含む合計4店舗の出店を計画しています。
日本展開が本格始動
日本では、伊藤忠商事がレイヤーを通じて、マリテ+フランソワ・ジルボーの独占輸入販売権を取得。アパレルD2C企業・yutoriが販売特約店契約を締結し、ポップアップや旗艦店の展開を通じて、国内市場への浸透を進めています。
2024年10月〜12月には、大阪・福岡・名古屋の3拠点で巡回ポップアップを開催し、2025年公式オンラインストアを開設しました。
さらに、2025年4月に東京・原宿に日本初の旗艦店をオープンし、同年7月にはZOZOTOWNに公式ショップも登場。
他にも、「ケースティファイ(CASETiFY)」とコラボレーションするなど、日本のファッションシーンに新たな存在感を示しています。
現在(2025年7月23日時点)、株式会社yutoriでは、マリテ+フランソワ・ジルボーの日本初となる旗艦店での店長ポジションを募集中です。ブランドの世界観を日本で体現する最前線に立ちたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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