セレクトショップ「SHIPS」では、創業から半世紀以上にわたり、変わらぬ価値観を守りつつも、次代を担う若い世代の採用と育成に力を注いでいます。

今回は、人事部の乙部さんに新卒の採用状況や今後の採用における注力ポイント、シップスらしいキャリア形成の考え方について話を伺いました。採用基準の背景にある哲学や、店舗のリアルな働きやすさとは?

プロフィール:乙部明徳(おとべ・あきのり)株式会社 シップス 人事部  部長。2008年にアルバイトとして入社し、メンズカジュアルやメンズドレスを担当。その後、レディースブランドでの販売を経験し、2022年より現職。人材採用や社員育成、人事労務の業務全般など多岐にわたって携わっている。

ビッグな会社ではなく、グッドでストロングな会社

ー25年卒の採用実績はいかがでしたか?

39名の採用に至りました。26年卒も、引き続き販売職と商品管理職で合わせて40名ほど採用できたら、と考えています。

ー商品管理職の募集背景は?

3年前から商品管理職の募集を開始しました。豊洲にある自社の倉庫を拠点に、EC出荷や全店納品などを行っているため、100人を超える大規模なチーム体制で業務を進めています。アルバイト採用で人員数の確保はできますが、各チームにリーダーとなる存在が必要なため、新卒からリーダー候補を作っていくのが狙いです。毎年、2〜3⼈をコンスタントに採用できています。

ー24年卒と比較して、25年卒の採用では採用基準や重視するスキル・経験に変化はありましたか?

24年卒でも経営理念への共感は重視していましたが、25年卒ではより重きを置いています。シップスは、同じ方向に向かって歩んでくれるスタッフと働きたいという思いが強いです。家族と過ごすよりも長い時間を共にする会社。双方の方向性が合っている方が、従業員にとっても会社にとってもよりよい環境になるのでは。

ー現在のシップスの方向性とは?

企業理念である「SHIPSの羅針盤」には、「私たちはルーツと伝統への想いを大切に服を通じてお客様に安心感と高揚感を提供します」と掲げており、これが現在のシップスの目指す方向性です。

社長がよく言っている「ビッグな会社ではなく、グッドでストロングな会社を目指す」という言葉にもその姿勢が表れています。50年前から知ってくださっているお客様の期待を裏切らない接客や商品ラインナップを守りながら、若い世代にも響く、本当にいいものを提供していきたいと考えています。

ファッションだけでなく人にもアンテナを張れるスタッフ

ー新卒採用では、評価ポイントとしてどんな点を重視していますか?

専門的なスキルよりも、お客様に対する誠実さやファッションに対する思いを重視しています。ファッションに対する思いとは、人生においてファッションが自分の軸となっているような人のこと。販売員は「これを着たら、ちょっとワクワクしませんか?」という気持ちをお客様に伝える仕事です。だからこそ、待遇や職場環境よりも先に、ファッションを人生の中心に据えている方が理想。ファッションへの探究心があることで意欲的に働けるし、より良い接客にもつながります。

ー活躍する新卒社員には、どんな人が多いですか?

ファッションだけでなく、お客様や従業員など人にもアンテナを張っている人が共通して活躍している印象です。シップスは、個人主義というよりもチームで何かを成し遂げようという気質が強いお店です。お客様との心地良い距離感は大前提、お店の雰囲気がギスギスしているとお客様にも伝わってしまうので、働くスタッフの間でも配慮や気遣いが大切になってきます。

「今シーズンの商品、いけてるよね」や「今、チームすごくいい調子だよね」といったようにお店が好きなスタッフがいるショップは空気感が違います。「体調悪いのかな」「この仕事やってる時、生き生きしてるな」など、常に人に対してもアンテナを張っている人たちは、スタッフやお客様からの信頼が得られる。そうすると、自然と成果も仕事も集まるのではないでしょうか。

ー入社後、成長支援をサポートする取り組みとしてどんな制度がありますか?

初期教育を充実させるとともに、現場の教育力向上のため、全店舗を対象にOJT研修を実施しています。コーチング手法を学んだ先輩社員が多くいることで、新卒社員の成長を正しく支援できる制度が整っています。

さらに、セールスマイスター制度として、販売スタッフの中から優秀な販売スタッフを選出しています。お店で築くキャリアが副店長や店長だけではない、ということを伝えたくて始めた取り組みでもあります。

実際に、新卒3年目の社員がセールスマイスター制度でシルバーに選出されるなど、若年層から販売職として評価された実績があります。新卒2、3年目の社員でもきちんと成果を出していたら社内で表彰され、待遇に反映するということが伝わったのはよかったのではないでしょうか。

ーキャリアパスについては?

「シップスにはキャリアパスがない」とよくお伝えしています。これは、キャリアアップの機会がないという意味ではなく、総合職で採用され、販売職を3年間経験した後に本部へ異動するといった、一律のキャリアパスは設けていないということです。

シップスの販売は、接客のみならずVMDや商品管理、PR業務、MDなど多岐にわたる業務内容です。その中で得意なことを見つけてキャリアにつなげていく考え方なので、「何年以上これをやらないとこの職種にはつけない」ということはありません。

社内公募の制度もあり、実際に24年卒で入社した社員が11ヶ月間の販売を経て、人事部の採用担当としてこの4月から活躍してくれているんですよ。

ー新卒2年目の社員を人事に抜擢した背景は何だったんですか。

新たに人材を採用するにあたって大切にしていたポイントは、販売職として接客が楽しめていて、それを別の形で会社に還元したいという考えを持ってくれているかということ。小売の会社なので、お客様の声を知っていたり、お客様の情報をたくさん持っている人は、本社職でもそれが強みになります。

これまで、管理本部に新卒1、2年目の社員が異動した事例はありませんでしたが、他にも新卒3年目でプレスになっている方もいます。実は販売が得意な本社スタッフが多いのもシップスの特徴と言えるかもしれません。

残業ゼロの取り組みと定着率の向上

ー貴社ならではの魅力として、残業時間の少なさが挙げられます。実際に残業時間はどのくらい少ないのでしょうか?

業界的に残業が多そうなイメージを持たれる方も多いと思いますが、店舗によっては残業がほとんどない場合もあります。企業として、適切な人材配置を徹底し、無駄な残業が発生しないように努めています。

ー残業しないという空気感はどのように意識づけられているんですか?

2019年から働き⽅改⾰関連法が施⾏されていますが、シップスはその3年前から働き方に関する取り組みを始めています。以前は、業務が明確にあるわけではないのに、なんとなく周囲に合わせて残業をしてしまう店舗も多かったのですが、働く8時間の内容を変えようというテーマで、全店舗でミーティングをしたんです。

「閉店後にやっていたゴミ捨てを朝にまわそう」など、アルバイトや新卒社員の意見を取り入れながら全店舗・全部署で取り組んだ結果、ガクンと残業の水準が落ちました。「残業=偉いってちょっと違うんじゃない?」という空気感を作れたのが、取り組みがうまくいった要因。その成果が現在でも続いています。

ー採用における、今後の目標を教えてください。

会社説明会から入社後の研修まで一貫してシップスの企業理念を丁寧に伝え、入社後の定着率を向上させることです。将来的に店舗の核となる今の20代のスタッフたちが離脱してしまうと、先細りしてしまいます。20代のスタッフたちがこの先ライフイベントにぶつかっても、シップスでキャリアを描こうと思える環境を築いていきたいです。

ーそのために現在取り組まれていることは?

一点目が、セールスマイスター制度をはじめとした評価制度の改⾰。成果に応じて昇給できる、メリハリのある仕組みを整えました。

二点目は少しマインド面の話になってしまいますが、会社の取り組みと自分自身のやりたいことが一致していると感じられるかどうか。そうしたエンゲージメントを育む環境は、これからも継続的に取り組んでいきたいと思っています。

また、長く働く環境作りという点では、これまで取り組んできた男性の育休取得の推進や、育休からの復帰後のキャリア支援も欠かせない要素です。2024年には、男性の育休取得率100%を達成しました。もちろん家庭の状況に合わせるべきで、育休を無理に取得させるものではありません。ただ「育休はいつ取るの?」という投げかけが自然とあるような風土が作れているので、それを今後も大切にしていきたいです。

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三谷温紀(READY TO FASHION MAG 編集部)

2000年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、インターンとして活動していた「READY TO FASHION」に新卒で入社。記事執筆やインタビュー取材などを行っている。ジェンダーやメンタルヘルスなどの社会問題にも興味関心があり、他媒体でも執筆活動中。韓国カルチャーをこよなく愛している。

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