業界を目指す若者、延いては業界人に向けて、本連載では、現在17歳でイギリス・ロンドンで留学中の高校生ファッションユーチューバー ”だっつ/DAttSU” による進行のもと、時代に先駆けて活動を行うファッションユーチューバーたちのリアルな声をお届けする。

今回のゲスト1人目は、ブランド古着「 Brooch 表参道店」のストアマネージャー・バイヤーを努めつつ、ファッションユーチューバーしても活躍する「なかむ」。

2人目は「Ryo(高島 涼)」。元人気販売員で、現在は商品のPRなど、インフルエンサーとして活躍する。

憧れの職業としてユーチューバーが上位にランクインする現代、その中でも高い人気を誇る3人は、どんな思い・視点でものごとを見つめ生きているのか。普段明かされない人気ユーチューバーの素顔に迫った。

ユーチューブの影響力

だっつ:まずは、自己紹介させて下さい。高校生ファッションユーチューバーのだっつと申します。登録者は約13000人で、現在はロンドンにて留学中です。

なかむ:なかむと申します。本職はブランド古着「Brooch」表参道店のバイヤーと責任者をしております。ユーチューバーは去年の12月に始め、現在の登録者は36000人くらいです。

Ryo:高島涼と申します。これまでにTOKYO BASE販売員、LIDNM プレス・ECを務め、現在はインフルエンサーとして、商品のPRなど案件を担当しています。ユーチューブのチャンネル登録者は33000人ほど、インスタグラムは38000人フォロワー。WEARは60000人ほどです。

だっつ:自己紹介、ありがとうございます。さすが人気ユーチューバーだけあって、ファンも相当数付いていますね!最初の質問なのですが、自分が「いいな」と思った情報を多くの人が支持してくださることについて、どう感じますか? 僕の立場はあくまで学生なので、「好きなものを買って、好きなもの紹介することができる」それだけですごい嬉しいですし、その部分がモチベーションでやっているのですが、皆さんはどう考えているのか教えてください。

なかむ:もちろん嬉しいという気持ちはありますが、それ以上にユーチューブという媒体がもたらす影響力の強さを感じています。というのも、インスタグラムでも情報発信はしてきたのですが、このレベルでの伸びはなかったんです。

Ryo:なかむさんと同じく、やはり一番最初に感じたものは影響力の大きさですし、それがユーチューバーになったきっかけでもあります。実は、販売員をやっていた頃から、店舗だけでなく、SNSを使ってコーディネート等の提案をすることができるのではないか?と、商品の売り方の変化に気がつきました。そこで、僕がもともと個人で行なっていた「インスタグラムやWEARでのコーディネート提案」を販売スタイルに落とし込んで見たところ、業績向上につながりました。当時、ファッションユーチューバーである”げんじ君”の配信による売り上げへの影響が強く、他の媒体と比べ、ユーチューブの影響力が圧倒的に大きいことを身を以て感じ、その驚き・発見が僕自身もユーチューバーを始めたことに繋がっています。

日本のファッション業界は停滞している

だっつ:なるほど、影響力の強さに本人自身も驚いているのですね。続いての質問ですが、お二人はユーチューバーという立場上、ファッション業界を俯瞰的に見ることができると思うのですが、今の業界をどう捉えていますか?

Ryo:日本のファッション業界は停滞している印象があるので、僕らだからこそ業界のためにできることをしたいと思っています。僕らは情報を提供する側であり、ブランドありきの存在なので、いかにブランドの価値高めてお客様に提供するのかというのが僕らの仕事の要です。つまり、SNSを通して紹介する際に、僕たちの伝え方次第では、そのブランド価値を下げかねない。その点は、投稿・提案するときに一番気をつけています。

だっつ:ただユーチューバーをやっているわけではなく、そういう思いが原動力になっているんですね。

なかむ:ブランド古着業界もあまりいい状態ではありません。メルカリの台頭により、自分で売るという行為がかなり簡単になりました。その結果、個人でもある程度は買い取り額を左右することが可能となったので、古着業界としては痛手です。その状態の中でユーチューバーを始めたところ、よりたくさんの人に商品の紹介ができるようになりましたし、僕に査定して欲しいと持ってきてくれるお客様もいらっしゃいます。ユーチューブは人を動かす力・集客力が圧倒的に強く、そこを上手く使って古着業界を盛り上げることができれば、と思っています。

だっつ:お二人が業界のためと思われている一方、ファッションとユーチューブは繋がりにくいという声をよく聴聞きますよね。確かに好ましくない組み合わせかもしれないですが、いつまでも「ファッションと繋がりにくい」という古典的な考えでいると、新しいものなんて生まれないと思います。今、注目を浴びているECに関しても、今のユーチューブと同じように以前は捉えられていたのではないかとも思っています。遅かれ早かれユーチューブの時代がファッション業界にも来るのではないかと思っています。

喰わず嫌いで可能性を否定して欲しくない

だっつ:ただ、不安な点としては、まだファッションユーチューバーの数が少ないからこそ僕らも成立しているので、もっと専門性のある人が参入すると、僕の立場が危ぶまれる可能性もあります。そこで質問なのですが、お二人は、ファッションユーチューバーとして希望や不安はありますか? また私たちファッションユーチューバーの将来についてどのように考えていますか?

なかむ:ファッションユーチューバーとして先駆けになれたことは大きいメリットですよね。インスタはすぐ始めやすい一方、ユーチューバーは顔出しが必要ですし、編集能力や機材費など、どうしても始めるまでのハードルが高いことも事実です。それが新しいユーチューバーの誕生の妨げになっているのではないでしょうか。

また、これまでの主なユーチューバーはネタ系の方が多く、そのイメージがあるからこそファッションとは合わない、と思われがちです。特にファッション業界の人はユーチューバーに対して否定的な人が多いですが、かと言って彼らがユーチューブを逐一チェックしているわけでもないんです。ユーチューブにおいては、たとえ1000人でもフォロワーがついたら、かなりいい集客につながります。従来のユーチューバーと重ねないでほしいですし、喰わず嫌いでユーチューバーそのものの可能性を否定して欲しくないと思っています。

Ryo:相性は良くない、と言う業界人の考え方が古いですし、ファッション業界全体の雰囲気としてカッコつけていることが、フランクなユーチューバーを否定する要因になっていると思います。僕自身、販売員時代にカッコつけてしまう部分があったのですが、業界人だから、おしゃれだから、というプライドを捨てなければいけない時代になってきてると思います。
店頭でお客様と面と向かうことも大事さも知っていますが、ユーチューバーとなった今は、一本の動画・同じ時間で30000人と同時に向き合うことが可能で、今までとは規模も可能性も違いますし、こういうメリットを見越して、ユーチューバーとファッション業界がもっと絡むべきだとも思っています。

若者に必要なのはやりたいことにチェレンジすること

だっつ:ファッション業界内でもユーチューバーを受け入れてくれる動きが進むと嬉しいですよね。。ところで、お二人ともユーチューバー以外でも活動していらっしゃいますが、今後どのように活動していきたいと考えていますか?

Ryo:インフルエンサーとして働いていく上で、大好きな日本ブランドの価値を上げて世界にそれを発信できるようになりたいと思っています。それがインフルエンサーの役目であり、そういう影響力を与えることのできるポジションに常にいたいですね。ユーチューバーだけで活動を終わらせず、様々な新しいものに手をつけることで、各方面の可能性を探っていきたいと考えています。

なかむ:Ryoさんと同じ意見です。また、視聴者の方を大切にすることを忘れないようにしていきます。ユーチューバーを始めた頃からずっと見てくださっている方もいて、中には未だに店頭に来てくださる方もいます。この繋がりを大事にするというスタンスを変えなければ、僕のことを支えてくださる方も増えていくのではないかと思っています。

だっつ:なかむさんは店舗でのお仕事、Ryoさんは前職として販売員・プレス、現在はフリーランス・インフルエンサーということを例に、世の中の働き方が多様化してきています。その現実を前に、若者に求められることとどういったことでしょう?

なかむ:やりたいことにチェレンジすることだと思います。僕の場合、四年制大学を卒業後、新卒で広告代理店に入ったものの、一年弱で退社、現在働いている古着屋に転職、今度はユーチューバーと、やりたいことに挑戦してきました。
就活どうすばいい?とよく聞かれるのですが、ぶっちゃけ一社目は社会勉強ができればいいというのが個人的意見です。一年の社会勉強後に、会社との折り合いが良ければそのまま働くこともできますし、転職が普通になってきている時代なので、やりたいことが見つかったり、やりたいことが変わることがあれば、自分の”やりたい”という思いに正直に行動することが大事です。

挑戦には勇気が必要

だっつ:チャレンジするという点では、まさにRyoさんもチャレンジの連続ですよね。

Ryo:はい、僕自身は決断力が強く、失敗を恐れないタイプなので、同じく挑戦が大事だと思って行動してきました。僕は工業高校出身で、元々は建築士としてハウスメーカーで住宅の設計を三年間やっていたのですが、WEARというアプリとの出会いがきっかけでアパレル業界への転職を考えるようになりました。そこからはTOKYO BASEでの「SNSインフルエンサーとアパレル店員」という販売スタイルの実施や、 LIDNMでのPRやECなど新しい職種、フリーランスと、ファッション業界に入った後も挑戦を続けてきました。

なかむ:ユーチューブを始める時は本当に勇気が必要でしたよね。動画 一本目は完成させるまでに半年もかかったり、あまり得意ではないSNSでの顔出しなど、苦手なこと・困難なこともありましたが、こういう挑戦を繰り返しているからこそ、行動することの大切さがわかります。

だっつ:そうですよね。僕がユーチューバー始めたのは中学三年の時で、ぶっちゃけげんじ君よりも前にファッションユーチューバーを始めたので、当時は完全な未開拓領域でした。何をすればいいかよくわからず、最初1本目のハードルがかなり高かったことを覚えています。それでもここまできて、支えてくださる視聴者の方がたくさんいらっしゃるのが支えになっています。

Ryo:僕もそうでした。げんじ君とも仲がいいのですが、彼を近くで見ていたからこそ、容姿をバカにされたりと、否定的な反応をしてくる視聴者もいることを事前から知っていたので、始めると決めるだけでもハードルが高かったです。病んでいるユーチューバーって多いらしいです(笑)

もし、いま学生だったら

だっつ:僕はまだ学生を終えるまでに最低でも4年間ありますが、現時点で既に起業をしたいと思っています。二人が今、新卒の学生だったら就活をしますか?また、どんな会社に入りたいですか?

なかむ:就活していた頃は入りたかった企業もあったのですが、今あの頃に戻るのなら起業したいですね。新卒採用された時に感じたのですが、上司と部下、というような縦構造がしっかりし過ぎている環境だと、行動的・金銭的に動きづらさがあり、自分はそういう環境に合わないタイプです。

Ryo:以前勤務していたLIDNMは、今の時代性にあった販売方法を採用している会社で素敵だな、と思っています。会社名どうこうより、そのスタイルに共感できるところがいいですね。

だっつ:就活は必要だと思いますか?

なかむ:就活はした方がいいと思っています。僕自身、就活を通して得たことがたくさんあり、会社・社会がどういうものかを知ることができました。それらを経験する中で成長できますし、就活の結果より、その過程が大事だと思います。

Ryo:なかむさんが仰った通り、就活は会社が自分に合っているかどうか、どんな会社か、を確かめる上で大切だと思います。建築業界からアパレル業界へ転職する時に、そこを意識して就活をした結果、TOKYO BASEさんに入社させていただくことができました。先ほども話した通り、同社は僕の思いを受け入れてくださり、僕も挑戦したいと思える環境だと、入社するタイミングで既に感じることができたんです。

だっつ:僕がユーチューバーを続けているのは、莫大な影響力を持つことができるし、人の輪も広がる、それに何よりやっていて楽しいからです。実は周りに服好きな友達が少なかったのですが、ユーチューバーを始めてからはSNS・リアルの両方で増えてきて。自分を介して誰かが服を好きになってくれることが嬉しいです。僕はただの学生で、ユーチューブによる収益も少ないし、制作時間もかかるけれど、楽しさがそれらを凌いでいます。一学生がこんな風に好きなことを好きに発信して、それを見て支えてくださる方がいる。その人たちに何かしらの形で恩返ししたいな、という気持ちもユーチューバーを続ける原動力になっているのですが、お二人は、なぜユーチューバーをやっていますか?

なかむ:人に影響を与えることができることが楽しいからです。これは限られた人しかできないことですし、紹介したものが売れるのは、僕の価値観に共感してくれたということだから、やはり嬉しい。だからこそ見てくださっている方、共感してくださる方を裏切らないように、しっかり責任を持っていたいですし、このチャンスを無駄にしたくないと思っています。

Ryo:僕は好きなことで生きたい、という思いがあるからです。僕らの仕事はファッションという嗜好品を紹介すること。SNSを通して、自分がいいな、伝えたいなと思ったものを色んな人に認められたいという自己承認欲求が少なからずあると思うんです。僕はこの欲求をすごい大事にしていて、現実でもSNS、二つの自己表現の場を楽しんでいきたいと思っています。

若者へのアドバイス

だっつ:僕自身若者のくくりになりますが、最後に若者へのアドバイスはありますか?

なかむ:小さい子の将来の夢ランキング一位がユーチューバーというニュースを見たのですが、ユーチューバーも一時的な憧れの存在になりうる可能性は十分にあり、もっと新しいSNSでのインフルエンサーも出てくるかもしれません。次々と新しいものが出ては消えていく現代、いろんな変化に柔軟に対応をすることが生き抜くことのキーになるかと思います。若者は常に敏感であれ、と思っています。

Ryo:僕は、今は個人の力が強い時代だと思っています。服に関しても、”あの人”が作っているからという理由だけで売れる。僕たちはSNSを介して自由に自分を表現することで、もしかしたら”あの人”にもなりうるし、これからそういうことに挑戦できる新しいSNSがもっと出てくるかもしれません。いずれにせよ、若者は常に色んなところにアンテナを張り、新しく出てくるツールをとにかく試してみることが大事だと思っています。そういう思考でSNSに限らず、”何でも挑戦してみる”生活を送ってほしいと思います。

だっつ:確かに18年で時代が大きく変わりました。僕の世代だと、中学校の時はガラケーとスマホが半分ずつ、高校になると、みんなスマホを使っていました。今では小学生がスマホを持っていますよね。僕らが生きている時代なんて数年単位で変わりますし、だからこそ時代の流れに乗っていかなければ取り残されます。お二人が言った通り、あらゆることに敏感であること、がこれからを生きる僕ら若者には必要だと思います。お二人とも、本日はありがとうございました。

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【なかむ】
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ブランド古着Brooch

text:S.Kamegai READY TO FASHION MAG)編集部


READY TO FASHION MAG 編集部

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