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シナスイエン(SINA SUIEN)17ss collectionのショーが 多くの報道陣や芸能関係者に見守られる中、東京・青山で行われた。

デザイナー・有村ゆみこが去年、水の流れを司る”弁財天様”が奉られている”西明寺”を訪れた際に考えたイメージや、実際に住職に聞いて得た”袈裟”などの知識から着想したものを、インドの雰囲気やサリーと組み合わせて生まれたという17ss。今回のショーは、今年の8月に西明寺で”弁財天奉納”という形で神様の前で行われた17ss collectionのショーを、当時の出来事を振り返り、更に完成度を上げて発表された。

『F/S needle/string/cloth』と題された このショーの演出を担当したのは有村が大好きだと語る 美術家・藤本由紀夫。約1年に渡り打ち合わせを重ねた2人が作り出した空間は、「音を”布”、モデルを”針”、モデルの軌跡を”糸・線”」と見立て、会場全体で”立体的な刺繍の作品”を作り上げるというもの。全てが揃うことで、見事な一つの作品となる。その様子はまさに”刺繍のオーケストラ”であった。

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会場では軽快なリズムを刻む電子音の中、その合間に何かが衝突したような音が響き渡る。その音の正体は、有村が刺繍を施す際に生じる”針と糸が布を突き破る瞬間の音”を録音し、加工されて出来上がったもの。針を刺す瞬間の緊張の張り詰めた音、そして糸を引くときの伸びやかで優しい音、”刺繍”という動作から生まれた全ての”音(布)”をシナスイエンの服を纏ったモデル(針)が歩き回り(糸・線)縫い上げていく。さらに、彼女たちが持つピンク色の小さいスピーカーからは雅楽で奏でられた厳かな調べが会場全体の空気をさらに引き締め、神聖な場所へと移ろわせた。

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そして、会場を縫い上げる彼女たちが纏っている衣服からも素材の光沢や透け感、デザインによって”神聖さ”というものを感じとる事が出来る。

今回、今までのコレクションと大きく違うのは全てのコレクションピースがそれぞれ異なった”柄”や”質”の布を繋ぎ合わせて1着の服として作り上げられているという事だ。

元来、僧侶は世間で不要となった布を丁寧に縫い合わせ、それを身に纏っていた。糞掃衣(ふんぞうえ)とも呼ばれたその衣服は、執着心や欲望から解放された布を使うことで 着るもの自身も執着心や拘泥によって生まれる妬みの心から解放されるという。

このしきたりにインスピレーションを受け制作された17ssは”花柄”、”チェック”、”民族衣装に使われているような柄”など、様々な柄の布が丁寧に縫い合わせてあり、その上にシナスイエンの1番の特徴である美しい”刺繍”が施されていた。

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また、服のデザインにも住職の着る袈裟やサリー、巫女装束、着物の羽織のような仕組みが現れている。

”袈裟は住職が着ているもの”、”巫女装束は巫女が着ているもの”というイメージも強く、伝統的な衣服でもあることから”一見堅苦しくなってしまうのではないか”と思う人もいるかもしれない。しかし、シナスイエンのコレクションは違う。その伝統的な構造を取り入れながらも、レースや美しい柄の布を使ったり、結び目には大きいリボンをあしらうことで伝統的な衣服の構造の厳格さや神聖さを残しつつも、可愛らしさを取り入れている。さらに、箔押しや刺繍が施された細かいディテールには見る人もうっとりと陶酔する美しさがあった。

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サリーを彷彿とするデザインも同じくである。サリー独特の女性が身に纏い、動くことで生まれる布のたゆみや裾の揺れの美しさに加え、インドの雰囲気の残るビーズや箔押しを使った煌びやかな装飾とレースにより更に可愛らしく、現代の女性が身に着けやすいデザインとなっていた。

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シースルーの布から透けて見える肌、あえて布をレイヤードすることで生まれる色っぽさ、そしてそれらを彩る煌びやかで繊細な刺繍を始めとする装飾。着るものだけでなく、見るものまでを心地よく陶酔させたシナスイエンのコレクションは、身を守る為、部族や身分を提示する為に生まれた”衣服”が変化し、今や”当たり前”とされ気にも止められていない”人をより美しく引き立てる”という服の役割を、今回改めて提示していたように感じた。また、それはデザイナー自身が心からファッションを愛し、こだわり抜かれて造られた服だからこそ そのように感じるのかもしれない。

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ショーが終わり、和やかな雰囲気になった会場では 来場者にfood+thingsのケータリングが振る舞われ、落ち着いた表情でシナスイエンの服を纏ったモデルたちが登場した。笑い声や笑顔で満ちた会場は、デザイナーの人柄が現れたショーとはまた違った素敵な空間であった。

・あとがき・

今回、来場者に事前に配布されたインビテーションに同封されていたポスターを開くと、コレクションの制作に使われたと思われるリボンや糸、布の端切れが入っていました。実際に手に取ってみないとわからない布の光沢や質感を知ることが出来た事に感動。ショー前の会場でも「端切れが入っていたよね!」と嬉しそうに会話をなさっていた方がちらほらいらっしゃいました。

さらに、インビテーションには有村さんの言葉で丁寧に紡がれた今回のコレクションの思いが書かれており、ショーが始まる前からもそのこだわりや熱意を実感。

ショーが終わった後、モデルさんが見せた笑顔にドキドキしながらも、ショー中とは違う和やかなムードに有村さんの人柄を垣間見ることができました。帰り際、コレクションに心地よく陶酔しながら頂いたケータリングのザクロジュースがとても美味しかったです。

text:Tomomi Abe

photo:Midoriko Kunishima

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READY TO FASHION MAG 編集部

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