株式会社三城(パリミキ)澤田さん

ファッション業界に興味のある若者に向けて、表面的に会社を知るのではなく、そこで働く”人”にフォーカスし、会社のその先にあるリアルな姿を届ける本企画。

第3弾は、海外の有名ブランドからオリジナルブランドまで様々なアイウェアを扱う株式会社三城(パリミキ)。

そんな同社からは、代表取締役社長を務める澤田さんと人事部である妹尾さん(以下略:妹尾)、安助さん(以下略:安助)に、会社と仕事について聞いた。

三城(パリミキ)

お客様一人ひとりに合わせる

──ではまずはじめに、株式会社三城の活動を教えてください。

澤田:株式会社三城は今から88年前の1930年に、姫路の「正確堂時計店」として創業しました。創業当時は時計を扱って、その後眼鏡屋の兼業となり現在に至ります。一時はレコードなどを扱っていたこともあり、そのころから音楽などの文化との縁もありました。

それまでは関西主体の「メガネの三城」というチェーンストアでしたが、1973年に関東に進出。進出の際の戦略として、いち早く眼鏡をファッションとして取り入れていこうということになり、眼鏡を単なる視力矯正の道具ではなくて、自分を輝かせるファッションアイテムとして着目をしました。

関東へ進出後、やはりファッションといえばパリであるということで、同じく1973年にパリのオペラ通りに出店しました。その当時、小売り業の海外進出は少なかったです。パリへの出店を期して、関東の店舗名は「パリミキ」となりました。今でもその名残があり、静岡より東は「パリミキ」、西は「メガネの三城」として店舗展開をしています。

パリミキのショップの様子

──今回取材させていただいている渋谷店を始め、いい意味で眼鏡屋らしくない店舗が複数ありますね。

澤田:従来のチェーンストアの概念としては同じ店装、同じ商品、同じサービスにして効率化を図るというのが戦略の基本だったのですが、今の時代は地域の属性によってニーズが変わっており、年齢層も違ってきます。だからこそ「お客様一人ひとりに合わせていく」ことを時代に合わせて徹底していくことになりました。この「お客様一人ひとりに合わせる」はミキのコンセプトでもあります。その結果、ここ渋谷店のような大都市の若者が集中する店舗に関しては、音楽などのカルチャー色の強い内装にしています。

──渋谷店のほかにはどちらにあるのでしょうか。

澤田:神戸、広島、博多などですね。現在のメガネチェーンは白い店装が多いですよね。我々は「パリミキ」という名前ですから、内装もこだわらなければということになりました。パリの街は町全体が博物館のようで、その中でも代表的な店構えがベルエポックです。ベルエポックというのは1900年前後のパリの古き良き風景を切り取ろうという風潮です。いちばんはじめは吉祥寺店を対象に店舗づくりを進め、内装や音楽にこだわりました。当時のジャズミュージックを流したり、画家の作品を飾ることなどを通して、文化を反映した雰囲気を出すお店作りをしています。

お客様をエンターテインする

──いま歴史、芸術、文化のお話をお聞きしましたが、お店に立つスタッフの方々も、特別な考えなどをお持ちなのでしょうか?

澤田:お店はステージだと思っています。社員は役者であると考えていて、お客様をエンターテインするアクターであり、アクトレスでなければならないと思っております。そのためにそれなりのコスチュームを身に着け、所作や言葉使いにおいてもお客様に合わせる必要があります。

──一人ひとりが輝いている環境ですね。以前お店の前を通った時も外国人の方が歌っているところを拝見しました。

澤田:そうですね、前の日曜日も店舗前にてライブをいたしました。広島やアメ村の店舗では二階がライブハウスやバーになっています。先日も T-SQUAREというバンドのワークショップを開催しました。

──僕らが想像する眼鏡屋さんという枠から外れたエンターテインメント施設ですね。

澤田:バイク屋さんだったり楽器屋さんだったり。いろいろな異業種の方々とコラボしています。私自身バンドをやっていたこともあり、楽器なども珍しいものを置いていたりします。ジョンレノンが使っていたギターと同じものなどもディスプレイしており、使用しているソファも本物の車の一部を使ったもので、 これは「アメリカン・グラフィティ」というアメリカの映画のコンセプトの元、設置しています。

株式会社三城(パリミキ)澤田さん

──いわゆる若い子が好きなポップなものよりも、少しレトロな雰囲気ですよね。

澤田:そうなんですよ。改装前は客層の大半が65歳以上だったんです。若者が入ってこなかったのでショップコンセプトを大幅に変えました。綺麗なお店は渋谷にはいくらでもあるので、あえて時代を巻き戻し、年配の層には懐かしく、若者には新鮮な店作りができました。そしてお客様をエンターテインするということを、内装だけでなくおもてなしにおいても徹底しています。実際に店舗スタッフが自主的にイベントを行ったりします。お店の中でハロウィンのテーマを決めてみんなで仮装するなど。そういったことが、ただモノを売るというだけではなく、お客様を喜ばせる、感動させるということに繋がります。

環境が人を育てていく

──今の渋谷店ができるまでの道は、御社の長い歴史からすると最近のことだと思いますが、そこまでの道のりをお聞かせください。

澤田:渋谷店は1979年にオープン。かつてはお荷物店でした。家賃は高いし年配の層に合わせた三城の昔ながらのコンセプトだったのでなかなか赤字が解消しませんでした。そこで思い切って、2010年に若年層のお客様に合わせたコンセプトにしたら、一番赤字額の多かった店が、売上トップになってしまったんです。一番底の時期から比べると、売り上げが2.5倍近く上がりました。

──ものすごい上昇率ですね。実際に置いている商品のこだわりもぜひお聞かせください。

澤田:すべて一流のブランド物を置くようにしています。三城のオリジナル商品も、眼鏡の名産地である福井の鯖江の工場を使用し、全てメイドインジャパンです。良いものをお求めやすくという三城のコンセプトを体現しています。

──スタッフ一人ひとりが裁量権を持って働いているということだったんですけれども、その中でも社員力などを掲げていらっしゃると思います。そちらについてご説明いただけますでしょうか。

澤田:社員力というのは、眼鏡屋に必要な技術力を指します。三城はオプティカルカレッジを構え社員に教育をしているくらい、技術を大切にしています。眼鏡を扱うのにはたくさんの知識が必要です。視力の測定一つをとっても、測定した機械の示す度数にすれば良いという事でもないんです。

お客様をコンサルティングして、何が必要なのかということを踏まえて計測をしなければならない。特にかけ具合を合わせるフィッティングは非常に難しい。お客様に喜んでいただけるよう徹底して教育しています。おかげさまで、どんな眼鏡でも三城で調整するとかけやすいという評判をいただいています。

──社員が成長できる環境が用意されているんですね。

澤田:環境というのが人を育てていくと考えています。おそらく私も、オーストラリアで10年の経験がなければホールディングスの社長はできていなかったでしょう。ただ皆さん全員が社長を目指して入社する必要はなく、商品を作るのが好きな人、お店をデザインしたい人、どのようにお客様を満足されることができるかを考えたい人など、人によって興味が違います。わたしはパリで生活したいっていうような目標でもいいんです。三城はやりたいことが実現できる環境を提供できる会社だと思います。

──ありがとうございます。とても魅力的なお仕事なんですね。

株式会社三城(パリミキ)澤田さん

人が好きということと親切心を持っていること

──続いて、人事の妹尾さんに質問です。現在新卒採用に置いて募集されている職種に関してお聞かせ願えればと思います。

妹尾:募集職種は基本的に総合職です。

──販売職と分けていないことに理由はあるのでしょうか。

妹尾:三城の仕事のベースは店頭にあり、店舗経験を経て細かい職種に分かれていくというキャリアパスになっています。その中で、我々のような人事の仕事だけでなく、商品開発やマーケティングにおいてもお店とお客様のことがわかっていないと、物事の進め方やお客様のニーズを理解することはできません。それぞれのお店にそれぞれの文化があるんです。まずはその文化をしっかりと知って、体験してほしい。そういった意味を込めて、総合職としています。

──他のショップ、眼鏡屋さんとの違いをどのようにお考えでしょうか。

妹尾:人事をしていると仕事柄、他社の人事の方と情報交換をする機会があります。あとは、休日にショッピングモールなどに行って他社のお店を見たりもします。そういったことを通して思うに、やはり三城の社員やお店の雰囲気は柔らかいですね。

安助:性格や個性は社員一人ひとり全然違いますが、人が好きということと、親切心を持っていることが共通していると思います。なので、一人ひとりタイプは違いますがみんな仲は良いですね。

──会社と「人」というところに関してすごく大事にされているんですね。店舗をみると最適な人材配置なども工夫されていると感じますが、そこに至った経緯を教えていただけますでしょうか。

妹尾:社員に早く一人前になってもらうために、各々の技術などにポイントを付け、自分の立ち位置と目標をわかりやすくしました。そのポイントは昇給にも連動します。視力の測定などプロフェッショナルでなければいけないところを、基準を設けることで磨きました。

長く自分を磨いていくことができる職業

──では、御社で2020年度の新卒採用に対して求める人物像はどのようなものでしょうか。

安助:うちの会社が、渋谷ならエンターテインメントだったり吉祥寺ならクラシックだったりと店舗によって個性があるように、新卒の子たちにも音楽やファッションなど自分の好きなことに一生懸命になれる個性を持っていてほしいです。

──御社の採用サイトで「メガネは音楽だ」というキャッチコピーを掲げていらっしゃいますよね。その言葉に込められた意味をお聞かせください。

妹尾:音楽には受け止め方に違いはあれど、一人ひとりが想いやこだわりをお持ちだと思います。眼鏡も同じで、その人の想いやこだわりがあるはずなんです。接客においても、お客様のテンポをつかむことや間合いを理解することは音楽に通じるものがあると思います。これらを踏まえ、「メガネは音楽だ」というキャッチコピーが作られました。

──非常に印象的だったのでこれは私も鮮明に覚えていました。最後に、これから2020年度新卒採用に該当する若者に向けてメッセージをお願いします。

妹尾:老舗の眼鏡チェーンで、敷居が高いと感じる方もいらっしゃると思います。でもここ数年で、会社が大きく変わろうとしている。だんだんと若い人が中心になっていく世代交代の時期の会社なので、ぜひチャレンジをしていただきたいです。自分のやりたいこと、自分の方向性を持ってる人には面白い会社だと思います。

──ちゃんとした土壌がある上に、変化が起きているタイミングであると。

妹尾:そしてもう一つ、ファッションのお仕事は、年齢的な限界というものを感じるかもしれません。ただ眼鏡屋というのは、ファッションとメディカルの両方が必要な仕事です。年を取った時にも、メディカルをきちんと学んでいればそれを活かすことができるんです。そういう意味では年を重ねていっても、ファッションに触れながら年代に応じた仕事ができるという面白さのある唯一のジャンルだと思います。自分の一生の仕事、キャリアを考えたときに、長く自分を磨いていくことができる職業は大きな魅力ですよね。

──ありがとうございました。

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text: Ryubi Fukuda

READY TO FASHION MAG 編集部

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