ITやファストファッションの普及により、人がファッションに触れる機会は以前よりも格段に多くなった。しかし、「キャリア」の視点に立ってみると、業界の現状を知る教育者や、学生が現場を体験する機会は不足していると言える。

この連載では、そのような課題を解決するために、ファッション業界を志す学生が本当に知るべき「生」の情報を伝えていく。文章は株式会社StylePicks CEOの 深地雅也氏が執筆する。

「今の職場で働き続けて未来があるのか?」

専門学校の講師などやっておりますと、在校生から卒業生まで様々な相談があります。

先日も卒業生の一人から「相談がある」と連絡があったので会ってきたのですが、今回のケースは、

「今の職場で働き続けて未来があるのか?」

というものでした。その卒業生は非常に向上心が強く、日々の業務でスキルが身についている気がしないと。だから明確な目標設定が欲しいが、自分の今もっている材料では判断がつきにくいのでどういうスキルセットが必要かを相談したかったようです。

メディアは正確な情報を流していない?

一番問題だったのが入社した企業がメディアで報じられているような内容では無かったという点です。

その企業はファッション業界では有名企業であり、当然ですがメディアではポジティブな面ばかり報じられています。

しかし実態はそんな内容とはかけ離れており、店舗運営や教育が属人化されているから全てマンパワー次第。店舗数が相当数あるのにそんな事をしているから、業務が煩雑になりすぎて販売員が疲弊して離職率も高くなる。というような状況。

これ、実はそんな珍しいケースでも無く、企業側がプレスリリースする内容や説明会で就活生に伝える内容、メディアで報じられるものはポジティブな事しか言いません。それはそれでいいんですが、企業に就職しようとしている方々は自分たちで実態を見極める必要があります。その卒業生も一番嘆いていたのが、

「学生時に自分がどんなスキルを身に付けたいかをもっと具体的に考え、それに合った企業を選べば良かった」

と言っておりました。確かにこれが真理なんですが、働き出してもここに気づける人は少ない。それを1年程度で気づいた彼は優秀だったのではとも思いますが。

講師という職業であるなら卒業生から日々このような情報が入ってきますから、それを今度は在校生の就職活動に活かしてあげることができますが、そういう機会に恵まれない学生の方が多いでしょう。

その結果、「思ってたのと違った!」という事態を引き起こし離職率してしまうか、最悪は業界を去る事になってしまう。

ですから就活生はインターネット上の情報だけを鵜呑みにせず、現場を足繁く見に行き、現場の人の声を聞き、自分の目で見極めるしかないのです。

キレイな企業など存在しない?

自分の目で見極めるという事は必要ですが、ある程度の割り切りは必要です。全てが自分の理想に合致する企業など滅多に無いでしょう。

だから優先順位を決めるのです。スキル・ノウハウが必要なのであれば、どのスキルが最優先されるのかを考えましょう。自分の未来のヴィジョンを想定し、逆算してそこに行くまでのスキルを算出する。その為のインプットを怠っては行けません。

メディアの報道が嘘とは言いませんが、切り取られた側面である事は確かです。どれだけ褒め称えられている企業でも、セール時期にロシアまで行きW杯の応援に精を出す社長や、キレイ事を言い続けながらも企業負担のクーポンを撒き散らし続ける企業などなど。それぞれの企業のスタンスですから否定はしませんが、それらを知った上でもやりがいを持って働ける準備をして頂ければと思います。


READY TO FASHION MAG 編集部

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