昔からファッションの街として栄え、現在はスタートアップがひしめき合う渋谷。その双方のカルチャーがクロスして、ファッションとIT・ベンチャーが協業してイノベーションを起こしていくー「渋谷ファッションバレー」なる動きを見せつつある。

WWD Japanの特集「渋谷ファッションバレー」をきっかけとし「SHIBUYA FASHION VALLEY meet up vol.1」が神宮前の”WeWork Iceberg”で5月22日に開催された。sitateruとREADY TO FASHION、nullbetが中心となり最新テクノロジーを活用したファッションビジネス事例をピッチ形式でお届けするイベントだ。各発表から見えた最新テクノロジーとの融合によるファッションイノベーションの事例を、セッションごとに紹介する。

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FINE × AIQ「Rename(再販) × AI で社会問題を解決する」

服の再販事業 “Rename(リネーム)” を運営するFINEと、AIを活用したソーシャル分析を行うAIQがタッグを組み、アパレルの在庫問題や廃棄問題の解決を加速させるための”Rename ai”という共同プロジェクトを発表した。”Rename”は、ブランドから買い取った在庫のタグを付け替え加工することで、ブランドイメージに影響を与えない再販を可能にしている。業界課題でもあるアパレルの廃棄削減に貢献している。

一方、AIQがもつAI技術はSNSからユーザーの趣味嗜好、生活エリア、年齢や性別を分析し、自動でプロファイリングを行うことができる。現在、700万件のプロファイリングデータを保有し、このデータを活用することで「商品の魅力を”適切な形”で”適切な人”に伝えることが出来るようになる」と、AIQの高島孝太郎CCOは言う。

新サービスについて、FINEの取締役・津田一志は「仮説検証のスピードを上げ、より良いサービスを1日も早くローンチさせたい」と意気込んだ。

オムニス「アパレル業界のデジタル・トランスフォーマー」

オムニスは、サブスクリプション型のファッションレンタルサービス”SUSTINA(サスティナ)”やカスタムオーダースーツ、アイテムの自動採寸、需要予測などを行う企業。R&D(Research&Development)事業にも広く取り組んでおり、現在はワールドグループで複数のデジタル・トランスフォーム(デジタル化)プロジェクトに注力している。

代表の上田徹は「アパレルメーカーの中に入って、どうデジタル化していくかが僕らの大きなテーマになっている」と語り、今後のオムニスの展開に関してAI、人材融合(人事)、テクノロジードリブン、パーソナライズ、グローバル化への注力を述べた。特に人材融合の面では、チーム内の役割分担やフォーメーションにおいて、アパレルメーカーとベンチャー企業のスキルセットの乖離が激しいことを問題視し、デジタルと人材のトランスフォーマーとして更なる成長を期待させる。

ニューロープ × JUN「ファッション×コンテンツ×テクノロジーが業界を変える」

JUNは今年の5月、ニューロープとの共同プロジェクトである “Auto tagginng”をリリースした。ニューロープは、AIを用いたマーケティング分析を行い、ファッションスナップを自動解析しタグ情報を表示する”#CBK scnnr(カブキスキャナー)”を運営する企業で、JUNのサイトに表示されるスタイリング画像を自動で仕分ける機能”Auto tagginng”を今回導入した形だ。

JUNの山田順一郎EC事業部 プロジェクトマネージャーは「お客様との接点がページではなく画像にあることに気づかされた。”Auto tagginng”を活用し画像接点を解析することで、お客様のニーズをさらに深く掘り下げることができる。この解析結果を次代のコンテンツに応用したい」と述べた。それに対し、ニューロープの酒井聡・代表は「パーソナライズや需要予測にも尽力したい」と返し、今後“ファッション × コンテンツ × テクノロジー”がアパレル業界の常識を大きく変えることを示唆した。

standing ovation × COX「オンラインとオフラインの垣根を越えた新しいファッション体験」

standing ovationは5月16日、アパレル専門店240店舗と3つのEC限定ブランドを運営するイオングループのCOXと業務提携を結んだ。standing ovationは、タンスの中身をデジタル化し、AIが手持ちの服からコーディネートを自動で提案してくれるオンライン・クローゼットアプリ”XZ(クローゼット)”を運営する。

今回の業務提携に至った経緯として、COXの竹中真幸デジタル戦略部長は「従来はスタッフのスタイリングを見て全身購入する消費行動が主流だったが、現在は手持ちの服とのスタイリングを考えた服を消費行動が一般的。この流れに対応するための新たなサービスの付加価値が必要で、その課題解決として今回のプロジェクトが始動した」と語る。

standing ovationの荻田芳宏・代表は「ECとリアル店舗を融合させたサービスのため、オンラインでもオフラインでも手持ちの服が主人公のファッション体験をすることができる」と続け、今後の展望を「サステナブルなエコシステムの実現」だと述べた。

イベントでは、ピッチ形式の発表の後、はじめてゲストが参加するワークショップを開催した。3人でチームを組み「自社の課題を共有し、課題解決のための施策を考える」というテーマで行い、時間の許す限りの議論が繰り広げられた。イベントシリーズ 「SHIBUYA FASHION VALLEY meet up vol.2」 は、”新興ブランドから学ぶこれからの服の売り方つくり方”というテーマで、6月21日の開催を予定している。再開発が進む渋谷で、イノベーターたちのコミュニティができつつある。

「SHIBUYA FASHION VALLEY meet up vol.2」:https://www.facebook.com/events/818771245162131/

WRITTEN BY SHIORI OGAWARA, TAKAHIRO SUMITA
PHOTO BY SHUNSUKE IMAI

READY TO FASHION MAG 編集部

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