アパレル業界のリアルを本音で話すトークイベント「本音会議」が2019年12月12日(木)に原宿のTokyo Fashion technology Labにて開催された。本イベントは、業界内外のゲストを呼び多様な視点からアパレル業界を考察したほか、聴衆のリアルタイム匿名質問システムも導入され、活気あふれる一夜となった。

本記事では、イベントの第一部「趣味を仕事にすること」について掲載する。
第一部では現在EDIFICE TOKYO店の販売員として現場で活躍されている内田捺史さん(以下:内田)、教育関係や商社など他業界でありながら服にまつわる活動を展開している遠藤大輝さん(以下:遠藤)古江優生さん(以下:古江)の計3人をゲストにお招きし、アパレル業界についてのあれこれを本音で語って頂いた。

イベント詳細及びゲストプロフィールはこちら↓


はじめに

福田:本日はイベント「本音会議」にお越し頂きありがとうございます。READY TO FASHIONで学生部門を担当している福田琉弥です。現在は明治大学に通う2年生で、READY TO FASHIONで働きながら学生団体の運営などファッションに関わる活動をしています。
今回は私が、学生ならではの視点でイベントを企画しました。服が好きな学生は就活を迎えるにあたり、ファッションを仕事にするかしないかで悩むのではないでしょうか。このイベントの第一部では、実際にファッションを仕事にされた内田さん、そして他業界に進まれた遠藤さん、古江さんにご登壇いただき、業界の内と外から「趣味を仕事にすること」についてご意見を伺いたいと思います。
それでは皆様、どうぞよろしくお願い致します。

就活について

それではまず、お三方の学生時代の就活事情について伺いたいと思います。内田さんからお聞きします。どのような過程でファッション業界への就職を決められたのでしょうか。

内田: 内田です。96年生まれ、23歳で現在EDIFICE TOKYOというお店で販売員として働いています。私が本格的に就活を始めたのは大学三年の夏からです。当初はアパレルと広告系の仕事で探しており、途中からはアパレル1本に絞りました。最終的に拾ってくれたのがベイクルーズという形になります。

アパレル1本に絞ったきっかけとは?

内田:就活生って、髪の毛を短くしてヒゲを剃ってスーツを着て….という定められた正装がありますよね。それに違和感を感じて、この長髪やヒゲのような個性を受け入れてくれる、個性を活かせる仕事をしようと考えた結果がアパレル業界だったんです。

なるほど、普通の就活に違和感を感じ、アパレル業界にたどり着いたのですね。遠藤さんはいかがでしたか?

遠藤:遠藤です。現在はフリーランスとして教師やコンサルタントなど様々な仕事をしています。僕の場合、就活のタイミングでアパレル業界に行くという選択肢はそもそもありませんでした。業界選択の基準は色々ありますが、外から教育に関わりたいと思いながら就活をしていました。 今でも実際に教育の現場で働いています。

ありがとうございます。古江さんはいかがですか?

古江:古江と申します。新卒で一般企業、電気デバイス系の商社です。 アパレルの企業も迷っていましたが、服は着るのが好きで売りたいわけではないので一般企業に就職しました。 途中でものづくりに興味を持っていく中で、 会社を退職し、現在は「#僕らの纏うモノ」というモノづくりに焦点を当てた活動をしています。

活動の詳細を教えていただけますか?

古江:産地を巡るツアーを企画したり、イベントでものづくりを伝えたりしています。11月にはスナックをオープンして、物を作る人たちと関わる機会を創出しています。

なるほど、ありがとうございます。就活の話に戻りますが、皆さんお仕事は何で探しましたか?

内田:一個上の仲が良い先輩とか、人づたいで探しました。学生時代にアパレルでアルバイトをしていたので、その繋がりから探すのがメインだったように思います。

なるほど。お二人はいかがですか?

遠藤:僕は学生時代から教育の分野で働きたいと思っており、色々な活動を通して業界にアプローチをしていく中で自然と企業を知るようになりました。就活らしい就活はしませんでしたね。

古江:僕はいたって普通で、就活サイトやイベントに参加した中で選びました。ですが、出会う人から聞く情報とネットから得る情報って全然質が違うし、思い返せばそういう選び方をすればよかったかなと強く思います。

給与に関して

アパレルのお給料に関して、たくさん質問がきています。

内田:具体的な数字を出すと怒られてしまいそうですが、お給料は他のアパレルと比べるとすごく良いと思いますし、他業種と比較してももらっている方かもしれません。実家暮らしということもあり、好きな洋服を買い続けてもなんとか生活を成立させていけますね。特段心配はしなくていいと思います。

他業界を選ばれたことに、給料面での懸念はあったのでしょうか。

古江:就職の際にアパレルを選ばなかったのは、給料を懸念したわけではなく服を売る職業にあまり関心がなかったからですね。僕の場合そこまで重要視しませんでした。

もう一度学生に戻って就活をするとしたらどうしますか?

古江:実際その企業で働いている方と仲良くなって本音のところを聞いてから就職したいですね。いろんな話を聞ける機会を作るのがベストだと思うので、こういうイベントに赴いたりするのも大切なことだなと思います。

趣味を仕事にすることについて

アパレルに就職して、イメージが変わった部分ってのはありますか?

内田:そうですね、ずっと消費者の立場で服を楽しんでいましたけど、買い手から抜け出して売り手として良さを伝えていかなきゃいけない。働くとなると責任が生じてくるので勉強もしなくてはならないですし、服装もしっかりしなきゃいけないです。ファッションって本来は自由なものですが、働いている側は全部自己満足ではダメですからね。その会社で働くということは、ブランドのイメージを表現するということであると改めて知りました。

遠藤大輝さん

自分と趣味が全く違う人と働くというのはいかがでしょうか。趣味の話とかは必然的にできなくなりますよね。

遠藤:その仕事が好きでやっているので、趣味を共有する必要はなかったです。最近はありがたいことに、仕事に関係なく服の話を出来る知人が増えています。それこそ、最初の2年間は仕事ばかりで土日もないようなものでしたが。

古江:僕も前に勤めていた会社でファッションについて喋れる人がいたわけではないけれど、会社にファッションの話をしに行くわけではないので全く問題なかったですね。休日だけ私服を着ることを楽しんでいました。

お仕事は好きじゃないと続けられないと思いますか?

内田:ある程度好きなことしているようで、実はルールがあります。それは会社からお金をもらっているので当然ですが。でもその上で、僕自身はいますごく楽しんで仕事をしています。上下関係とかもありますが、これから続けるのも苦にならないと思います。「好き」だけじゃやっていけないところもあると思うんですけど、服に対してどれだけ情熱を注げるか、命を削れるか。それくらいの覚悟を持って仕事に臨むことが必要だと思います。

古江さんはもう一度就職するとしたらアパレルに行きますか?

古江:自分のやりたいことを深く考慮して、その答えがそれだったのならやりたいなと思います。退職はしましたが、アパレルではない他業界に一度就職したことをマイナスだとは全く思っていないです。

最後に、内田さんの描く販売員からのキャリアについて、お聞かせ願えますか?

内田:服を売るだけなら誰でもできると思われがちです。ですが、接客が本当に上手くて、店頭にいても本社の人よりも全然給与をもらっていて、中には1,000万稼ぐ人もいます。弊社にはプロの販売員制度というものもあります。この時代だからこそ、接客っていうものの尊さをきちんと理解しなくてはいけないと感じます。バイヤー志望ですが、現状でバイヤーになったところで仕事はできないと思いますし、修行と勉強に励みたいと思います。

内田さん、古江さん、遠藤さん、貴重なお話をありがとうございました!


色々な視点からアパレル業界、就活のご意見を伺った第一部のトークイベント。
次に行われた第二部では、「では実際にアパレルに就職するとしたらどのようなキャリアを描くべきか」ということをテーマに専門家のお二人からお話しして頂いた。第二部の様子は下記リンクよりご覧いただけます。


READY TO FASHION MAG 編集部

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