ファッション業界の仕事とキャリア いいかげんな旅をするな - OFFLINE レポート

2018年8月8日(水)に開催された20卒向け就活イベント『READY TO FASHION OFF LINE 003』。本イベント内で行われた、業界で活躍する様々な職種の登壇者によるパネルディスカッションの様子をレポートしていく。

最初のパネルディスカッションは、就職を控えるファッションに興味のある若者に向けて、仕事の内容とそれに伴う、キャリアについて考えを深めるテーマ。様々な職種や、その人々のキャリアを知る、人事担当者を招いて、「企業の職種紹介」「各社のキャリアプラン」「学生時代にやっていた方が良いこと、考えるべきこと」についてお話していただいた。登壇者は以下のお二人。

株式会社ドゥクラッセ CEO秘書/ HRマネージャー對馬 加名子 様
株式会社トゥモローランド 人事部/採用課 雫田 葵 様

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各社の仕事について

各社、実際にどんな仕事があるのでしょうか?

雫田(トゥモローランド):ざっくり専門職・総合職で分けられ、専門職はデザイナー・パタンナー、それ以外の職種は、総合職となります。販売職という採用の仕方はしていないので、入社していただくと、まずは店頭スタッフからキャリアをスタートしていただき、そこからMD/バイヤー/プレス/営業といったキャリアに進んでいただくことになります。

モノを作ってお店に並べるまでに携わる職種として、例えばオリジナルブランドを企画する際にはマーチャンタイザー(ブランドリーダー)中心にデザイナー・パタンナー・生産管理といったメンバーが加わり、次のシーズンのコンセプトを決めます。企画は1年から1年半前から始め、4大コレクションと同じ周期でモノづくりをしています。トレンドを追いかけるというより、今のトゥモローランドらしいもの、本当に自分たちがいいなと思えるものを作っています。

バイヤーチームはオリジナル商品を引き立てるようなものや、オリジナルではではなかなか作れない品質や価格帯のもののバイイングを、オリジナルの企画と並行して行います。

デザイナーが絵を描き、パタンナーが型を起こして、サンプルという商品の第一弾が出来上がります。このタイミングでショップ店員にサンプルを見てもらう機会を設け、ショップ店員の声もデザインの修正に反映させるようにしています。日々お客様、マーケットに触れているメンバーの声に耳を傾け、商品チームと店舗チームがフラットな関係で話しながら最終のデザインを決定し、工場に生産を依頼します。商品はそのまま店舗に入るのではなく、一度商品センターに納品され、そこからCR(コントローラー)と呼ばれる、商品分配・在庫管理をする職種チームが、「どの店舗に、どの商品を、どれだけ納品するか」を過去のデータを元に決定し、そこから届いた商品を店員が売るという流れになってます。

また「店舗設計」という店内の内装・デザインを担当するチームもあります。店舗に置く棚などの什器に関しても、このチームがオリジナルからデザインすることもあります。他にショップに関わるという形では「SD(ショップディレクター)」という、店長とは別に、業態ごとに統括をしているメンバーがいます。また、店長、プレス(販売促進)、製作など、お客様に商品をよりよく見ていただくためのツール作成部隊がいるので、そういったチームと共にお店を作り上げています。そしてこの流れの最前線が販売スタッフ。トゥモローランドでは販売員も販売だけではなく、実際に店のレイアウトを考えたり、展示会に行き商品を選定をしたり、お店一つ一つが会社のように機能しています。

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對馬(ドゥクラッセ):ほとんどトゥモローランドさんと同じなのですが、一つだけ大きく違うとすれば当社は紙のカタログで通信販売事業をしているということです。カタログ制作に携わる者は、どうすれば人の心を動かすことができるか?ということにこだわっており、この紙のカタログに関わる仕事が当社の一番の特徴だと思います。

私の場合、新卒でこの業界に入るときは、バイヤーやデザイナー以外の職種を全然知らなかったです。ファッション業界で働いている人ですら把握できていない部分もありますよね。学生の方の中で、職種に関して何か質問はありますか?

学生:バイヤーは自分のセンスとブランドイメージ、どうバランスをとっていますか?

雫田:まずはブランドイメージを守るように買い付けをします。ただそれだけでは誰でもできるので、さらにそこに感性をプラスして、新しいブランド開拓をするのがバイヤーの仕事だと思っています。
服のセレクトの仕方についてですが、私たちは人の縁を大事にしている会社なので、ブランドの大小はあまり関係なく、ネームバリューのないブランドと組んでオリジナル商品をデザインすることもあります。

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学生:對馬さんに質問なのですが、通販カタログのコピーライターは外部委託か自社の方、どちらが担当するのでしょうか?

對馬:当社は全業務の内製化に拘っており、コールセンターでお客様にご提案を差し上げることから、お客様に製品をお届するところまで、一連の流れは全て自社の従業員が担当します。ここには私たちの思いや哲学が詰まっており、こだわりを持っています。特にコピーライターや写真を編集する人は女性誌やファッション雑誌業界に行きたいなと思っている人にぴったりです。月に1回、通年で13回カタログを発行するのですが、各月150ページほどの規模で、非常にやりがいのある仕事だと思います。

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キャリアプランについて

両社とも数あるアパレル企業の中でも特徴的なキャリアプランを用意していらっしゃいます。詳しく説明していただけますか?

雫田:弊社には決められた年数でのキャリアステップはありません。どのように仕事・キャリアアップしたいかをヒアリングする機会が多く、例えば勤務先の店長と面談したり、1年に2回、評価制度という形で、どういう仕事がしたいのか、どういった店舗で働きたいかを用紙に記入していただき、内容を確認してこちらから声をかけることもあります。
またバイヤーになりたい場合はバイヤーに直接訴えることができますし、「これをやりたい」などと自ら声を出す人は目に止まりやすく、こちらも声をかけやすいです。とにかくアピールしてもらうことがキャリアアップをするには一番近道かと思います。実際に4年目でバイヤーをやっている人、2年目でプレスをしている人もいて、全体として熱い希望を持っている若いメンバーが多いです。弊社は本社と店舗がしっかり繋がっているので、店舗とバイヤーを兼務している場合も働きやすいんです。

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對馬:当社の場合も、キャリアアップのプランがいくつか用意されておりますが、まず入社時は、お商売の基礎を学ぶため店頭に配属されます。お客様がなにを求めているか、何に困っているかを感じ、どういう形でお答えできるか、を実際に感じてもらうためにここでヒト・モノ・お金の流れを学んでいただきます。

その後、販売を極めたい方は店長のサブ、店長、VMDになる人や、「SS(スーパーセールス)」という、お客様にスタイリングも含めてご提案差し上げる職などのラインでプロになって行く方法があります。

マネジメントを極めたい、お店全体を自分で運営したいという場合は、店長、スーパーバイザー、と進んで行くプランがあります。

「私は何がやりたいんだろう、何が向いているんだろう、会社の中に何種類の職種があるのだろう」と迷っている方は、ドゥクラッセという文化の中でまずは学んでもらいながら、これがやりたい、というものが見つかった人から個別にプランを立てて行きます。

最後に、当社への採用入社の時に「アントプレナー枠」というものがあり、ずばり「経営者になりたい人枠」です。当社社長に夢を伝え、心を動かすことができれば、社長が決めた投資金額があなたへの初任給になります。数年内に独立したい人向けのコースですね。準備が出来次第巣立ち、もっと大きい世界で活躍しなさい、というのがこのプランの意味合いです。

大きく分けると以上の4つですが、逐次個別対応も設け、どうなりたいか、何がしたいか、どれだけ報酬を得たいか?いつまでに?を聞いた後に、それを叶え得る環境を社内で提供し続けます。DoCLASSEを卒業(退職)した後でも、どのような環境でも結果を残すことのできる人材を育てたい、というのが、新卒採用に対する私たちの考え方です。

「アントプレナー枠」の内容はどのようなものでもいいのでしょうか?

對馬:どのような内容でも大丈夫です。とにかく、お商売をしてみるということにチャレンジしてほしいです。

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学生時代にやっておくべきことはありますでしょうか?

雫田:学生時代は楽しくてずっとバイトをしていました。しかし今になって海外に行っておけばよかったと強く後悔します。ニューヨークやパリに出張で行くことはありましたが、観光をする時間がないんです。時間があるうちに行ったことのないところでやったことのないことをやってほしいと思います。将来的に話のネタも増えますし。

對馬:感動を届けるのが私たちの仕事なので、私たち自身が心動く経験をしないと、いいものは作れません。世界を広げて思いっきり遊んでください。旅をしながらそこに仕事を乗せる、仕事に縛られず、自分が仕事の主導権を握る人生にしてほしいです。

この手の質問は学生からよく質問され、みなさん遊べ、旅をしろとはおっしゃるのですが、お二人は遊んだり旅することの先にある、何かを感じる時間だったり、体験、そういう真意があっての旅をしろ、という言葉だと思うので、みなさん時間があるうちにしか体験できないこと、会えない人にぜひ触れてみて、充実した学生時代を送ってください。

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質疑応答

学生:離職率はどれくらいでしょうか?

雫田:おおよそ10パーセント強といったところです。ファッション業界で仕事をするにあたって、服を会社のイメージ・コンセプトに合わせなければならないこともあります。華やかな世界ですが、あくまで商売なので、利益を生むということもとても大切。自分が着たいものを着ることができない、販売をするのに苦労する、など感性だけでうまく行かず、そこが肌に合わずに離れてしまう人がいる一方、様々なことにチャレンジをしてくださいと会社が言っているだけあって、違うことに興味が湧いて離れる人もいます。

對馬:離職率は出していないですし、低ければいいとも思いません。夢を見つけ、それが社内では実現できない場合は卒業すべきですし、同時に、いつまでも優秀な方が働き続けたいと思える会社を創るのが、私の使命です。その結果、離職率が高くなることは決してマイナスだとは思っていません。夢を抱いて卒業していく方に対しては、どんな思いで当社を卒業するか?が大事で、そこに迷いを抱いている方には退職そのものを止めています。一方、迷いなく晴れ晴れと出て行く卒業する方は、思いっきり背中を押してあげたいですね。

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確かに、離職率はあまり当てにならないですね。海外に視点を移してみると、離職率が高いと 流動性が高く、ビジネスがうまく回っているということで、いい会社とも言われるんですよ。離職率よりかは、自分の目で感じたものを判断軸にしてほしいですね。

学生:對馬さんに質問なのですが、会社から、新しいビジネスを始める人に対してお金を支援するというスタイルは珍しいですが、何をきっかけにこのスタイルを採用したのでしょうか?

對馬:夢がありチカラのある方は、DoCLASSEで学んだことを活かして日本を、世界を、もっと元気にすることに励んでいただきたいからです。チャレンジしてみないと分からないことがたくさんあり、企業の中で守られていると、いつの間にか守りの体制に入りがちになるのです。このままいくとこれくらい年収があがるかな?、何年経てばあのポジションに上がれるかな?というカウントをしていると、残念ながら人の成長は止まってしまうと思っています。そんなちっぽけな枠を超えて自由に飛び出してほしい。失敗してしまったら戻ってこればいいんです。失敗って失敗じゃないですからね。そんな優秀な方が社内に増えると、「魅力的な会社を創らないと、優秀な方がどんどん卒業してしまう!」というプレッシャーが会社側にも生まれるので、良い意味の相乗効果が働き、企業は成長し続けられると思っています。 つまり、DoCLASSEが成長し続けるための「アントレプレナー枠」採用です。

会社紹介

株式会社トゥモローランド
メーカーとしてスタートして40年間、ものづくりを大事にするオリジナルブランドを運営しつつ、そのテイストに合わせた海外ブランドもあわせて13ブランドを展開。カスタマー一人一人がライフスタイルに合わせた選択ができるようになっている。会長自らが未だにバイイングをするように、会社全体でグローバルな視点を持ちながら日本文化を大事にし、「東京を代表するブランド」を目指す。

株式会社ドゥクラッセ
「アジアで最も注目すべき10人の女性」にも選ばれた林 恵子が代表取締役社長をつとめ、 エレガントかつリーズナブルな、エイジング世代向けのブランドを展開する。代表の自宅ガレージに4席のコールセンターを創ったところからはじまり、現在は社員数1200名、アパレル業界が衰退しつつある中でも、 着々と著しい成長結果を見せている。

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